「成長」
やっぱり、書く時間帯すぐ眠くなっちゃうや。
あなたを好きにならなきゃ良かった〜エルフに生まれ変わったお医者さんの波瀾万丈記〜
8話「成長」
【アリアの弟子になって2年くらいが経った頃】
ゴーン ゴーン
朝の王都の鐘の音で、ソフィーは目を覚ます。
宿舎の共用の洗面所で顔を洗う。
寝巻きから着替え、鏡の前で、髪を整える。
同室者のアイシャはまだ爆睡しているので、放っておいて1人で軍務局の食堂で朝ごはんを済ます。それから部屋に戻り、アリアの授業があるため、アイシャを起こす。
これがソフィーの朝のルーティンだ。
「姉さん、起きて、起きて、師匠の授業遅れちゃう〜」
ソフィーは、まだ寝ているアイシャを起こそうと苦戦していた。肩や尻を叩いたり。体を揺らしたり。
「うーん…もうちょっとだけ…」
すごい眠そうな声で返事があった。
「もうちょっとじゃないですよ、遅れたら、師匠に課題増やされちゃいますよ?」
「あっ!そうだった!!」
アイシャは慌てた様子で、一気にばっと、起き上がる。
そして、ダルそうに寝巻きを脱ぎ始める。
「はぁ…姉さんやっと起きた…」
同室となって一年。気づいたらソフィーは自分より年上のアイシャを姉さんと呼んでいた。つまり、それだけ親しい間柄になっていたのだ。そして、アイシャはとても朝が弱いため、毎日起こすのがソフィーの役目と化していた。
「ソフィー、今日何やるんだっけ?」
「えっと、今日は座学で…魔法の属性についてですね。」
授業のカリキュラムに近い事が書かれた紙を見ながらソフィーは答える。
「座学かぁ〜すぐ眠くなるんだよなぁ、どうせなら魔法でドンパチしたいよな。ふぁあ〜」
アイシャがあくびをしながら愚痴を吐く。
「だけど、そのドンパチをするためにはやっぱり座学が必要ですよね。」
「はぁ…相変わらずソフィーは真面目ちゃんだな。」
「そんな事より!姉さんパンツで居ないで。さっさと着替えて!」
「なんだ〜?私のスタイルに見とれてんのか?」
「そんな事無いでしょ!」
(でも、確かに姉さんの方が私よりスタイル良いんだよな。スラリとしてるし。背も胸も私より大きいし…)
そんな事を考えていたら無意識に胸に手を置いてしまっていた。
それを見たアイシャはニヤリとして…
「ソフィーちゃん、まだまだこれからよっ!」
と小馬鹿にした感じで言ってきた。
その言葉にソフィーは顔を赤らめて
「お姉ちゃんのバカっ!」
と言って軽くアイシャの事をシバいた。
「いった、ソフィーに叩かれたぁ〜遂に反抗期だぁ〜もう泣きそう…」
「はぁ…」
ソフィーは顔に手を当てて呆れてしまった。
(もうこんなの時間の無駄よね…これで遅れて私まで叱られるのなんてごめんよ。)
「もう、私、先に研究室行ってますね…」
そう言ってドアを当てて廊下に出て行こうとするが
「待って!待ってソフィー、からかってごめんね?許して?ね?」
(このやり取りもう何回目だ?)
「じゃあ行ってきます、姉さんも遅れないでくだいね。」
「待っでよぉ〜」
「はぁ…」
こんな、姉と妹の立場が逆に見えてしまいそうな関係だが、アイシャの方が王都での生活が長く、ソフィーの知らない常識を多く知っていた。最初なんかは、ソフィー1人で出歩く事も出来なかった。買い物の仕方や、お金の価値、様々な事をアイシャはソフィーに教えてあげた。その結果、年上なので当然かもしれないが、ソフィーはアイシャを慕って、いつしか「姉さん」と呼ぶ様になっていた。
少し早歩き気味に、宿舎から、軍務局へと入っていった。
「こんにちはー!」
「おぅ、ソフィーちゃん!元気か?」
軍務局の入口に居た兵士が話しかけてきた。
「はい!おかげさまで!」
「今日も頑張れよ〜」
「ありがとうございます!」
一年前と比べてソフィーは、比べ物にならないくらい成長した。身長等はさほど変わっていないものの、彼女の心は少しずつ大人になっている。周囲の視線を恐れ、話しかけることなんて出来なかった頃と比べ、目覚しい成長だった。
そんなソフィーは、すれ違う人に挨拶をしながら、早歩きで研究室に向かって行った。
階段を急ぎ気味に駆け上り、そして、アリアの研究室にたどり着いた。
「はぁ…はぁ…宿舎の部屋から…はぁ…ここ遠い…」
急いで来たので、息が上がってしまっていた。呼吸を整えて、コンコンとノックをして、研究室に入っていく。
「師匠、失礼します。」
「ん?ソフィーか…アイシャは?」
「えっと…いつも通りです…」
「はぁ…次遅れたら課題増やすって脅したのに…」
「私も同じこと言ったら、慌ててたので多分来るとは思いますよ。」
「そう…どうせあの子ろくに話聞かないし、先に初めちゃおっか?」
(アイシャ可哀想…自業自得だけどね。)
「はい、師匠」
「じゃあ、はい、これまで、五つの属性の魔法について説明しました。そして、今回六つ目の一番強力な魔法について説明します。ソフィー、何か分かるかしら?」
「えっと…闇?」
「はい正解。今からそれについて説明しようと思うんだけど、ソフィーは闇魔法についてどこまで知ってる?」
「そんなに知りません…両親からは危ないから使っちゃいけない魔法とだけ言われました。」
「なるほど…確かにガイロニアでは禁忌とされている魔法です。他の国では、使用は禁じていない所もありますが、使用者の風当たりはあまり良くは無いのよ。」
「師匠、強力なのに何故使ってはいけないんですか?」
「良い質問ね。これからそれについても説明しようと思っていたところなんd…」
ガラッ
走ってきて息の上がったアイシャがやっとやって来た。
「はぁ…はぁ…遅れて…すみません…はぁ」
「はぁ…あなたは…以前言っていた様に課題増やしますね。」
「えぇ〜!!」
アイシャは、雷を受けたかのような絶望の表情を浮かべている。
「遅れるあなたが悪いです。」
「はぁーい…気をつけます。」
正論をぶつけられてしまい、だいぶ凹んでいる様子だ。
まぁ、仕方ない。
「はい、じゃあ説明の続きをしますね。闇魔法というのは、使い続けていたら精神を蝕んでいってしまうんです。一度や二度使う程度なら問題は無いです。しかし、何度も何度も使用していると、その強大な魔力に酔いしれてしまい、後には引けなくなってしまうんです。闇属性は、他と比べて強力です。しかし、その強さの代償として、使用者の心を差し出さないと行けないんです。」
「師匠、闇属性の魔法はどのようなものがあるんですか?」
珍しくアイシャが質問をしている。遅れを挽回しようとしているのだろう。
「私も詳しいところは分かりません。闇魔法に関しての記述も他と比べて圧倒的に少ないです。しかし、わかっているのは、闇の力を『火球』の様に集束させて敵に向かって放つやり方が存在しています。また、闇魔法を用いて他属性魔法を強化するやり方もあります。このやり方は、その魔法の威力は使用者のスキルに左右されますが、オリジナルの魔法とは比べ物にならない強さを秘めているそうです。」
「闇魔法…」
話を聞いててソフィーがボソッと呟く。
「たーだーし!あなた達は絶対に使ってはいけません!いいですね?」
「「はーい、師匠!」」
ドンドンドン
急にドアをノックして、茶色いマントのフードを被った人が入ってきた。
「やぁ、皆さん。」
そう言ってフードを脱ぐ。そこには、ソフィーやアイシャと、同じくらいの年齢の美男子の顔があった。
ジークフリート王子だ。
「ごきげんよう。」
「殿下、またですか?」
「うん、まただ。だってさ!王宮の家庭教師めっちゃ厳しいんだよ!間違えたらしばかれるし。だからあのババァがトイレ行ってる間に抜け出して来たんだ。アリア先生の話の方が面白いし。」
そして、ジークフリートは、ソフィーの方を向いて、
「やぁ、ソフィー」
と言って手を振る。
「えっ…」
(ジークだ…)
「殿下…帰って下さい…ここに居るのバレたら私が怒られてしまいます…」
アリアは困り顔だ。
「ちょっと、師匠〜1人だけ嬉しそうな子居ますよ〜笑」
ニヤニヤしながらアイシャは、ソフィーの方を指さす。
「ん?なに、って、あら…可愛いじゃない。」
アイシャが指さした方向には、頬を赤くさせて俯いているソフィーが居た。
(なんで、こんなにドキドキするんだろ…なんで…)
「ソフィー?」
「何、姉さん…」
アイシャの方を振り向くと、アリアと2人でニヤニヤしながらソフィーをじっと見つめていた。ソフィーは数秒経ってからその意味に気づき、両手で顔を覆ってしまった。
「やだ、見ないで…」
「何だ?何してんだ?」
ジークフリートは王子というのもあり、鈍感だった。
【その日の夜】
外では酔っ払いが、騒いでいる声が聞こえる。
宿舎の部屋では、ソフィーとアイシャは、それぞれのベッドの上に寝転んで、おしゃべりをしていた。
「ねぇソフィー、こっち来てから、どんな魔法覚えた?」
「んー無属性が多いかも…回復は『高位回復』とか『周辺回復』くらいは出来るようになったかな。後は、光系の防御とか?それにね、師匠に直接頼んで錬金術も教えてもらったよ。これは、本に載ってて気になったんだ。」
「ソフィーすごいじゃん!私より頑張ってるよ。」
「えー絶対姉さんの方が強いよ。」
「まぁ、この話はこの辺にしておいて…本題に入りましょうか。」
「本題?」
(なんか嫌な予感がする…)
「ずばり!ジークフリート王子の事どう思ってるの?」
(うわぁああ、的中したぁーここはポーカーフェイスで頑張るしかない!)
ソフィーは、真顔をキープして、
「ん?特に?」
(信じてくれ。)
「嘘つけ!昼間顔めっちゃ赤くしてたでしょ!」
(やっぱりバレてたぁ〜)
「え…そんな事無いって!」
「お姉ちゃんに嘘はいけないよ?」
「うぅ…」
(なんて答えよう…)
「ジークの事、す…」
「す?」
「好き…」
顔の温度がどんどん熱くなっていくのが分かった。
「キャー!」
「ねぇ、ちょっ、」
(やばい、めっちゃ恥ずかしいよ…)
「いやぁ、私のこんなに可愛い妹が恋をしているの嬉しいに決まってるじゃん!」
「でもさ、身分の違いを考えると、絶対叶わないよね。きっと、どこかの貴族とかと結婚するよね。」
「そうだよねぇ…結構難しいかもね。でもね、向こうもソフィーの事を嫌いなわけじゃないし、仲良くする分には問題無いと思うよ。」
「そう…まぁ、私は今の環境で文句は無いよ、姉さんと師匠との生活も楽しいし。」
「ソフィーかーわーいー」
そう言って無理やり抱きついてきて、頬擦りしてきた。
「ちょっ、姉さん。もう寝ようよ!」
「ちぇー、もっとソフィーと色々話したかったな〜それにしても…私にもイケメンの白馬の王子様現れないかなぁ〜ねぇ、ソフィー」
ソフィーの返事が無い
「ソフィー?」
気づいたら、既に寝てしまっていた。
肩が出てしまっていたので、アイシャは彼女の毛布をかけ直してあげた。
「おやすみ、ソフィー。」
アイシャも寝ようとしたが…
「寝れないし、本でも読もうかなぁ。」
魔法に関する本を読んでいると…
「うーん…ママ…さびしい…」
突然ソフィーが寝言を言って寝返りをうった。
アイシャは読もうとした本を置いてソフィーのすぐ近くにやって来た。
そして、ソフィーの手を取って
「本当にあんたは…まだ子どもなのに両親と離れて暮らして寂しいよね。お姉ちゃんなんだから少しは頼って欲しいよな…まぁ私もまだ、子どもだけど…」
アイシャはソフィーの手を握って、そのまま彼女のベッドの縁に突っ伏して眠ってしまった。次の日、先に目が覚めたソフィーはめちゃくちゃ慌てたのは言わずもがな。
【次の日、王宮の会議室】
「つまり、東部の森の魔物が以前よりも増加したと…」
「えぇ、実際に見た冒険者の見解ですが、魔物の数、それぞれの個体の強さも以前よりも増しているとの事です陛下。」
陛下と呼ばれた男は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
この陛下がジークフリートの父親だ。
「それで、原因は何だと思うんだ?」
「その事に関してなんですが陛下、何年も前に、ジークフリート王子がエルフの里の近くの森で遭遇したクマの魔物と、同種と思われる魔物の目撃情報も寄せられています。ちなみにこの種類は通常では東部には生息していません。」
王の質問に、以前よりも、昇進し、今では王国軍を指揮する立場となったコルトが答える。
「何だと?!では何故そんな所に居たんだ?」
「陛下、これはあくまで推測の段階なのですが、ご意見よろしいでしょうか…」
「何だ、ロイド。答えよ。」
ロイドと言われた男が答える。
「推測でしかありませんが陛下。この魔物の大量発生の原因。人為的な物では無いでしょうか?」
「なっ…」
部屋の中に衝撃が広がる。
「それで誰がそんな事を…」
「あくまで可能性ですが、あまり関係が良くない国が、我が国を魔物を用いて国力を削ろうとしているか、或いは…」
「或いは?」
「ま、魔王の侵略…」
先程以上の衝撃が広がる。
「そんなただの推測でしかない事を並べるな!」
他の幹部が罵声を飛ばす。
「確かに、まだ現段階では推測です。ただ強い魔物が何匹も現れた。それで済むなら良いです。しかし、その様な楽観的な見方をするのあまり、よろしくないと私は思います。」
「た、確かにそうだな…軍で討伐隊を編成するのは出来そうか?コルト。」
「えぇ、数日いただければ準備も問題無いと思います。」
「直ぐに始めろ。」
「はっ!」
「すみません、父上1つ良いですか?」
「なんだ、アレクサンダー。」
「その討伐、私も行かせていただけませんか?」
「何だと?」
「今日までずっと剣や魔法の鍛錬を積んで来ました。それをこの国の民の為に用いたいんです。」
「しかし、殿下の身に何かあれば…」
「そうだぞ、アレクサンダー、お前はいずれ、この国を私から引き継がねばならないのだぞ。」
王にアレクサンダーと呼ばれるこの青年こそが、ガイロニア王国の未来の国王、アレクサンダー第一王子だ。つまり、ジークフリートの兄だ。
「遠くない未来、国王になるでしょう…そのためにも、王宮で座っているだけになる前に外の世界に触れたいのです!」
「はぁ…お前も大人になったな…良いだろう好きにするが良い。」
「父上…」
「だが、決して無茶はするな。実戦の経験は、コルトやここには居ないが、レイモンドが上だ。彼らの意見をちゃんと聞くんだ。軍で行くんだ。勝手に自分勝手な行動を取るでないぞ。」
「はい、父上、その言葉、心に刻んでおきます。」
「ならいい、では、この話はここまでにしよう。コルト、細かい事はお前を信じて一任する。頼んだぞ。」
「はっ!このコルト、精一杯やらさせていただきます。」
コルトはそう言って王の前に跪く。
「準備もあるだろう。もう行っていいぞ。」
「陛下、失礼します。」
「父上、私もコルトと同行します。失礼します。」
王子や、他の幹部も部屋を出ていき、会議室には、王1人となった。
そして、椅子の背もたれに背中を預けて、溜息をつきながら呟いた。
「ふぅ…最悪な方向に行かなければ良いがの…」
To Be Continued
今更ながら、ソフィーには王国軍の宿舎ではなく、王都の学園とかにでも入るのもありだったかなとか思っておます。そこにジークフリートも入っていて、そこで恋愛が…とかwww




