「初の王都」
遂にソフィーが人間達の住む環境へと足を踏み入れます!初めてばかりの世界、どんな生活が待っているか…
4話「初の王都」
王都へと向かう馬車の中
「ねーお尻痛い!」
(いくら舗装されてないとは言っても、これはやばいでしょ。)
初めて乗る慣れていない馬車の揺れでお尻が限界だった。
「ちょっとは我慢しなさい。何度も乗ってればある程度は慣れるものよ。」
「私はまだ慣れて無いの!」
(髪がボサボサになるのいやだったけど、もう耐えられない!)
『周辺探知』
「なっ!ソフィーまさか。」
(最近この魔法使ってなかったけど、前よりスキャンの範囲が広がってる。これなら王都の位置も。)
スキャンがどんどん広がって行き、ソフィーの脳内に白黒のイメージが伝わってくる。
(やっぱり、周りが城壁に囲まれてる。絵本で読んだイメージ通りね。てことは、どこかに門が…)
更にスキャンを続ける。
強固な城壁に1箇所、大きな門があり、衛兵が居る。
(おっけ!場所は分かった!!)
「じゃ、場所は分かったからお先に!」
そう言うと、馬車の扉を蹴り飛ばして無理矢理開けた。
「ひゃっ、ソフィー様!」
急に開けたので王都からの迎えの御者も大慌てだ。
「ちょっと、ソフィー!」
「まぁまぁ、良いじゃねーか、昔と違って制御出来るようになってるんだし。」
「イヴァン!あなたが、そんなだからよ!」
そう言って夫を軽く引っぱたく。
「す、すまん…」
(うわ、痛そう。)
「じゃ、行ってきまーす!」
「ソフィー!待ちなさい!」
『身体強化・改』
全身に白いオーラが全身を包む。
ソフィーがエルフの里で魔法の訓練をしていた最中に独自に編み出した『身体強化』の改造版だ。本来は体の内側から魔力で働きかけ、身体能力を向上させるものだが、ソフィーはそこにさらに体の外側に魔力の膜に近いものを発生させ、それにより空気抵抗を減らし、速度を上げる。また、多少の物理攻撃に対する防御も出来る。実際の所は走ってて転んでも平気なようにするための保険だが…。
ただ、今回の場合は、不規則に木が生えている森の中とは違い、馬車が通れるくらいの道に切り開かれているため楽だ。何かにぶつかるのを気にすることなく真っ直ぐ走る事が出来る。
そして、遂に森を抜けて、草原に出た。そして、草原の中に城壁に囲まれた大きな都市があった。
(はぁ、はぁ、あれが王都。)
ソフィーが前世で読んだ本の中にあったイメージに合致する要素がいくつもあった。
(やっぱり素敵ね。あんなお城のお姫様になって暮らしてみたいな。もちろん相手はイケメンじゃないとね〜。)
そんなロマンチックな事を考えながら原っぱを全力疾走していたら、あっという間に王都の入り口に辿り着いた。
「はぁ、着いたーー!」
(やっぱり、このファンタジー小説に出てくる雰囲気最高!まさか紙の世界じゃなくて目の前で見れるなんて!!)
「おい、お前何者だ!もの凄い速度で走ってきたが…ってお前エルフか?」
「あ、ごめんなさーい。本当は両親と馬車で来たんだけど、乗ったのが初めでお尻が凄い痛くてー、それで自分に『身体強化』を付与して走って来たんです。」
「おっ、おう。なるほどな。それでエルフの嬢ちゃん、名前は?」
「あ、私、ソフィー・ベネットでーす!今日から王都で魔法を学ぶことになってます!」
「あぁ、ベネット家のお嬢さんだったのか。既にベネット家の御家族が王都にいらっしゃると連絡を受けているぞ。」
「あ、そうだったのねー」
「で、中に入るか?」
「ううん、ここでとーさまとかーさまを待つわ。」
「そうか、分かった。ここで待つといい。」
「ねぇ、城壁の上登っていい?」
「別にいいが気をつけろよ、梯子は右に…」
「ううん、そんなの要らないよ。」
『風』
両手から風が吹き出し、体を浮かし、そのまま上昇し、城壁にふわっと着地した。
「ほらね?要らなかったでしょ。」
ドヤ顔で下にいる衛兵にピースをしてみせる。
「お、おう。すごいな。」
(さてと、やっぱり、今のおじさん、やっぱり私がエルフだったの見て驚いてたな…。かーさまの言ってた通りだ。)
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【王都に行く数日前】
「いいですか?ソフィー、ガイロニア王国は、公には、全ての人種を受け入れ、差別をしないようにと言っています。その対象は、獣人や魔族、そして私達エルフも含みます。ですが、全ての人が同じ考えとは思ってはいけません。私とイヴァンだって違うでしょ?みんな考え方は違うんです。ベネット家は先祖が王家を救った事で待遇としては良い方です。しかし良い見方をする人ばかりじゃないんです。少なからず偏見の眼差しで見てくる人は居ます。それを絶対忘れちゃいけません!」
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(きっと、エルフか人間か、どちらかしか命が助からない時、人間を選ぶ人が多いんだろうな。まぁ、だからこそ、私は自分と周りを守れる様に、魔法で強くならなきゃよね。)
(それにしても…)
「綺麗な景色…」
王都の外を見ると、一面緑の草原が広がっている。奥には、エルフの里がある森林が広がっている。そして、振り返るとそこには、多くの建物が建ち並び、奥には立派な城がそびえ立っていた。石造りの建物が多く、前世では見たことの無い建築物ばかりだ。見ただけで豊かな国だと実感出来る。
(初めて見る物ばっかりだ、なんか、美味しい物ないかな。)
「おーい、エルフの嬢ちゃん!」
城壁の内側から私?を呼ぶ声がした。
「それって私の事ですか?」
「そうそう、あんただよ。てか、俺の事覚えてない?」
そこには、王国軍の装備を付けた40歳くらいの見た目の男性が立っていた。大きめの剣を腰に下げている。
(うーん、どこかで会ったっけ…?)
「ちょっと降りてきてくれねーか?」
(まぁ、まだとーさま達の馬車は来なそうだし、いっか)
「はーい!」
そして、数メートルはある城壁を軽く軽くぴょんと飛び降りた。
「おいおい、大丈夫かよ…」
「こんなのへっちゃらよ。もっと高い所から降りた事もあるわ。それに危なかったら風魔法で何とかなるし。」
「そーか、やるじゃん。てか、俺の事覚えてないわけ?まぁ初対面だったし、全然話さなかったけどさー」
ソフィーは目の前のその顔をじーっと見つめる。
相手の方は女子に見つめられて恥ずかしそうだ。
(あれ、この人確かどこかで…てか、人と会ったことなんて数回しかないし…って、あっ!)
「あーーっ!あのクマの時の!王子様の隣に居た口悪かった人!」
(7年経ってたら老けてて分かんなくて当然よね…)
「おいこら、口悪かったとはなんだ。それに俺の名前はレイモンドだ!」
「実際口悪かったじゃん…。」
「しゃーねだろ、元冒険者なんだから、10年以上やってたから癖が抜けねーんだよ。まぁその時経験と腕を買われて、今は王国軍で安定した仕事やれてるけどよ。」
「あ、元冒険者だったんだ。なら強いの納得だわ。」
「おぅ、サンキューな。てか、嬢ちゃん今日は何しに来たんだ?」
「えっとー、宮廷魔術師になるためのお勉強だって。」
「あーなるほどな。だとしたら場所は軍務局だな。よし、じゃあ案内するよ。」
「えっ、ほんと?あっ、でも馬車が…」
「馬車?」
「えぇ、本当はとーさまとかーさまと馬車で来てたんだけど、乗り心地が最悪で『身体強化』を付与して先に走って来ちゃったんだ。」
「なるほどな…どう考えても未成年の女子がやることじゃねーけどな…。」
「ちょっとそれどういう意味〜?」
「すまんすまん、それより、ここで待ってても埒が明かないだろ。ご両親はここ来るの初めてじゃないだろうし、先に行ってようぜ。」
(ここで待ってても良いけど、どーせなら…)
「じゃあ、お言葉に甘えようかな。」
「おぅ、ちゃんと案内してやるぜ!よし、じゃあ、行こう!」
そうして、軍務局へと向かって歩き出した。
「そーいや、嬢ちゃん名前なんだっけ。」
「ちょっと、そんなのも忘れたの?私はソフィーよ」
「あぁ、そうだソフィーだ。これからよろしくな。」
「うん、よろしくね。それにしても色んな建物があるのね。あれは何を売ってるの?エルフの里から出たこと無いから、全然何も知らないのよ。」
「そういえば、そうだったな。あれは、果物を売ってる露店だな。お前と会った門とは反対側の門から少し行くとここより小さめの集落があってな。そこで色んな果物や野菜を育ててるんだ。」
「そうなんだ。そのうち行ってみたいな。」
初めての事ばかりで興味津々だ。
「え、なんかいい匂い!」
どこかの露店から、とても香ばしい匂いがしてきた。
「おっ、嬢ちゃん、お目が高いな、あれはここらで有名なイノシシの肉串だぜ。秘伝のタレがもう絶品なんだ。おっちゃん!2本くれ!」
「はいよー」
「ほらよ、初の王都のお祝いだ。」
「あ、ありがとうございます…」
ソフィーはちょっと困った顔をしていた。
「どうした?腹減ってないのか?」
「いえ、来る時魔力も消費したし、お腹は空いてるはずなんだけど、こういうのを歩きながら食べるなんて事が初めてで…」
(あと、イノシシとか食べたこと無くて不安なんだよぉ)
「あぁ、なるほどな。でもな?1口食べてみ。止まらなくなるぞ」
「じゃ、じゃあ頂きます。」
小さめに1口かじってみる。
その瞬間、ソフィーの目が大きく見開いた。
「何これ!噛めば噛むほど口の中に美味しい汁が広がってくる。イノシシだから固そうな気がしたけど、超柔らかい!」
(え?イノシシってこんなに美味しかったんだ。)
「だろ〜?この店の肉串はガイロニア1番なんだよ!覚えおくと良いぜ!」
「うん、分かった!」
「おっ、のんびり歩いてが、軍務局が見えてきたぞ、ほら正面の兵士が外に何人か居るとこの」
そう言ってレイモンドはレンガ造りの大きめの建物を指さした。
「ほら、ようこそ、我らの城へ」
そう言ってレイモンドはふざけてソフィーの前でお辞儀をしてみせる。
「なんだ?レイモンド、お前子ども好みだったのか?」
建物の入り口近くに居た兵士がレイモンドへ野次を飛ばす。
「バカちげーよ、この子は魔法使い見習いで今日からここで習うから、案内して来たんだよ。」
「ソフィー・ベネットです。これからお世話になります。よろしくお願いします。」
丁寧にお辞儀をする。
「おう、よろしくな!」
兵士の1人が、片手を挙げて挨拶する
「随分礼儀正しい子じゃねーか、レイモンドとは大違いだ。」
「だーまーれ!」
そう言って兵士の1人の頭にげんこつをぶつける。
「痛ってぇ〜!なんだよ!事実じゃんか!」
「わざわざ言う必要ねーだろ。」
兵士が大笑いする。
それにソフィーもつられて笑っていた。
(良いな、こんな雰囲気。学校の同級生とか会社の同僚達が休み時間にバカ騒ぎしてるみたいで。)
「よし、じゃあ中に案内するな。今は休憩か、自主練の時間だから、中庭で誰か居るかもしれないから、見学するか。」
「はい、お願いします!」
そうして、軍務局の中へと入っていく。中を歩いているのは、ほとんどがレイモンドと同じ鎧を着た兵士たちだが、時々役人の様な服装の人や、魔法使いっぽいローブを来た人ともすれ違った。見慣れないからか、すれ違う度に、チラチラとソフィーの方を見てくる。
(やっぱり、みんな私の耳を見てくるな…あと、エルフ自体も見慣れない種族なのかもね。)
「ほら、ここが中庭だ。周囲は結界を張ってるから安心して良いぞ。」
「わぁ…」
そこでは、まさに今戦闘訓練をしていた。
すぐ近くでは、剣と剣がぶつかり合い、火花が散っていた。そこから少し離れた所では、魔法使い同士が戦闘しており、様々な属性の魔法が飛び交っていた。
(直ぐにでも混じって戦いたい!)
そんな事を考えてる時だった。
「おーい、そこの君!こっちにおいでよ!一緒にやらないか?」
と、全身鎧をきて、顔を兜に覆われている人がこちらを呼んでいる。
「えぇ…良いんですか?」
一応レイモンドに確認を取る。
「多分平気だと思うぞ。あっ、誰も殺しちゃダメだぞ?」
(それは当然でしょ…)
「もちろんです!じゃっ、行きますね。」
「おぅ、お前の実力見せてやれ!」
「はい!」
そうして、ソフィーは結界の中へと入った。
一応礼儀正しくお辞儀をしておく。
「よろしくお願いします。初めてですので、お手柔らかにお願い致します。」
そして、直ぐに相手に対して杖を構える。
「お手柔らかに?それは無理な相談だな〜」
(えっ…)
焦るソフィー
少し離れた所を見るとレイモンドが顔に手を当てて呆れていた。
(え?待って待ってどういう事?まさか何かのテストとか?)
「いえ、私自身そんな力量ありませんので。」
「そうなのか?俺は君の実力、多少知っていると思っていたけどな。」
(えっ?私を知っている?)
「なんだよ。もう忘れちまったのか?」
そう言って兜を脱ぐ。
そこには、初めて会って以来、一度も忘れたことの無い顔があった。
「やぁ、ソフィー久しぶりだな!」
「えぇ?!ジークフリート様?」
To Be Continued
期待していた様に、ジークフリートと再開出来ましたね。小説の書き方だと、昨日会ったくらいの感覚になってしまいますが、実際は7年近く空いてるんですよね。次回は初の対人戦闘を書く事になるけど、上手くかけるのか怪しいな。文字だけで表現って大変だな。あと、毎回更新するのが日付変わるくらいで、バカ眠い。次の日特に何も無いから良いけど。今のところ、毎回昼間から内容を他のことしながらも頭の中で練って、夜に書くんですよね。