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「破壊」

ちょーサボってました〜

34話「破壊」



3人が森の中で顔を合わせる少し前、ソフィーが熊を退治していた頃、クトル村の外れに、2人の男が転移をして来た。1人は、金色の小鳥達の飼い主、フェネクスだった。

村の中にいても違和感の無い庶民が着ていそうなラフな格好のフェネクスとは対照的な、カッチリした黒スーツの青髪男が隣にいた。


「それで、私は、何をすればいいんだ?」


「特に言われてねーよっ。あいつ(ダンタリオン)曰く、半魔とかやらを、痛めつけて、こっち側に来させるか、殺せれば良いってさ。」


「やり方は好きにして良いということか?」


「んーダンタリオンの野郎は、特に何も言ってないけど。」


「では、いつも通り行かせてもらう。」


「いつも通りって…うへ…ぶっちゃけあれ見たくないんだけど…あー後でガキ達も連れてくるようにダンタリオンに言われてるから、把握よろ。」

フェネクスは、何かを吐くかの様な動きをして不快感を表した。


「お前が嫌がろうと私には全く関係ない事だ。あと吐くなら私の目に入らぬ所でやれ、服に跳ねたら最悪だ。それに、あれは私なりの美学だ。それを否定はさせんよ。それよりだ、正直あの酔狂野郎(ダンタリオン)は好かんな、媚び売りまくって順位が上の私達をまとめる立ち位置にまで着いているのは…。バエル兄様には素直に従えるのだが、あいつはな…」

そう言って男はあからさまに嫌そうな顔をした。


「おぉー!珍しく意見が合ったじゃないか!キマリス君!」

考えが一致したことが嬉しかったのか、フェネクスは、にこやかにキマリスの肩に腕を回した。


「ちっ、気安くに触るな。服が汚れるだろ。」

そう言ってフェネクスにキマリスと呼ばれた男は、肩に載せられた腕を無理矢理振り払った。


「へっ、そのくらい気にするなって、潔癖野郎。そんじゃ、そろそろ俺はお暇するよ、もしかしたら、もう一組送り迎えが要るしね。」


その言葉を最後にフェネクスは髪の毛の小鳥を1本残して、転移でその場を後にした。




「さぁ、我が美学の深淵を魅せる時だ。」


そう言ってキマリスは両手を広げて村の中で魔法を起動した。





━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━





「久し…ぶり…」

3人は、初対面にも近い気まずそうな雰囲気の中で約半年ぶりの邂逅の挨拶を交わした。


(落ち着け、私…)

一度深呼吸をして、再び口を開いた。


「それで、はるばるこんなド田舎まで何の用?」

ソフィーは、わざとあからさまに素っ気ない態度で臨んだ。


「えっ…用って…来ちゃダメなの?」

アイシャはソフィーの冷たさと威圧にたじろいだが、話を続けた。

「お別れもせずに、姿を消して、皆心配したのよ!」


「はぁ…」


(そんなことのために…)


「そんな呑気にお別れなんて言える状況だったと思う?あの日、こっちは死にかけたの…」

本人が意図したことではなかったが、段々とソフィーの言葉に怒りや悲しみにに近い感情が混じって強い口調になっていた。


「それは…」

ソフィーの言葉に対する返事が思いつかずアイシャは困って俯いてしまった。


「もう…私たちの所に戻る気は無い…の?」

アイシャは消え入りそうな声で、自身の望んでいることを口にした。


「そんな、簡単に元に戻れると思ってここに来たの?あのころの生活に?もしかして、ふざけてる?」


「えっ、いやそんなつもりは…ただ、ソフィーのために…」


「あははっ…そっかぁ〜私のためか〜そっかぁ〜」


喜びとはまた違った意味の笑い声を上げて…


「ひっ?!」

アイシャは短く悲鳴をあげていた。

人差し指程の、細い黒い氷の棘が、アイシャの目の前に銃口を突きつけるかのように、空中に浮いて向けられていたからだ。


分かりやすい魔力の変化や、手のひらを向ける等の予備動作が全く無かったので、恐怖と共に驚きの感情がアイシャと2人の様子を見守っていたアリアの心の中に溢れた。

アリアは思わずアイシャの肩を掴んで、彼女を守ろうとした。


「ちょっとソフィー、これはどういうつもりよ?」

アリアのその口調は師事したいた頃、何かしらの理由でやらかしてしまい、叱ってきた時のとそっくりであった。


「2人とも分かってないよ…全く分かってない…」

ぽつりぽつりとソフィーの口から水が滴る様にこぼれ始めた。


「どういうことかしら?」

アイシャに代わって、アリアがソフィーに対して質問を続けた。


「わ…私がしたくて…ふ、2人の元から居なくなったと思ってるの?私がこの状況を望んだと?なりたくてこうなったと?」


「えっ、いや…そういうわけじゃ…」

珍しくアリアが少し慌てていた。


「どこに…」


「え…?」


「元に戻りたいなんて、私が1番願ってるの!でも、もう、そんなの叶わない所にまで来ちゃったの!この眼を手にした私はもう引き下がれないの!少しでもその現実から逃避しようとして、ここで過ごしてたの!それを邪魔しないでよ!」

思わずソフィーが声を荒らげた事で、ほんの少し2人はビクッと驚いた。


「どれだけ願った所で…とーさまとかーさまは戻らない…」


「ねぇ…お願いだから…もう私に希望を与えようとしないで…」

今にも消え入りそうな、悲痛の込められた声で、2人に訴えた。


「もう分かるでしょ…?あの頃には戻れないの…あの日々はもう手に入らない。」

ソフィーの脳裏には、かつての、王都での生活の思い出が蘇っていた。

実力はあるにもかかわらず、生活習慣は今のソフィー以上に雑で、よく研究室で居眠りをしてアリアに叱られたアイシャ。数少ない同年代の、魔法の修練において、切磋琢磨できるそんざいだった。

いつまで経っても片付けをする習慣が身につかないアリアだが、それでもソフィーの魔法が少しずつでも成長する度に褒め、次に繋がるアドバイスを与えてくれた。

無断で王宮を抜け出して来たのがバレてコルトに無理矢理連れ戻されてたジーク…


大好きだった…最初は恥ずかしかったけど、一緒にいて心地よかった。



でも…


「もう、帰って…これ以上話したところで無駄よ…」

ソフィー自身がわざとした訳では無かったが、2人には、彼女の眼から氷の矢が出るのかと思うくらい冷たい、冷酷な眼をしていた。


「無駄って、なんでよ!もう大事な人を失いたくない!」

アイシャの顔は今にも泣きそうな程悲痛に満ちていた。


「もう、わがまま言わない…で?!?!」

ソフィーは、声を発した瞬間、異常な魔力の発生を感じ取り、思わず後ろを振り返った。その方向は、クトル村が存在している。

視界には木々しかなく、状況は全く分からない。

この2つの存在だけで、ソフィーは胸騒ぎがしてしまった。


(何よこれ、タイミング悪すぎよ!)


「最後よ。本当に帰って。じゃあね。」

そう2人に言い残して、返事を聞こうともせず、村に転移して姿を消した。


「ちょっ師匠!今のって…」

初めて見る転移魔法に驚きを隠せていなかった。

それと同時にソフィーが消えた事で氷の棘も消滅したので一気に気が抜けてしまった。


「転移魔法の類いかしら…私も文献以上の事は知らないわ…」

アイシャと違ってアリアは初見の魔法に対して驚きより興味が上回っていた。


「そんなことより、あの子どっか行っちゃいましたよ!」


「大丈夫、多分村よ。その方角見てたから。」

そう言ってソフィーが振り返って見た方向と同じ所を見つめた。


「そうですか…」


(本当に氷みたいに冷たい眼だった…それに悲しそう…)




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



場所は無駄に考えれる余裕が無かったので、普段住処から転移してくる時と同じ村外れの茂みだ。


“主よ、命令に反してしまうのを謝罪する。だが、この魔力の正体を我は知っている…”

転移後、村に走るソフィーの脳内で突然アガレスが話しかけてきた。


(それってもしかして、つまり…?)

数百年幽閉されていたアガレスの記憶にすら残っている魔力の正体。


数分走ってすぐに村の入口についた。

そこには…


「そんな…嘘でしょ…」


村の中には、正気を失い、争う村人達が居た。武器を持つ者も持たない者も、戦闘経験が無い者も、大人も子どもも、男女も関係なく争っていた。

中には先程、肉屋で会話したアラースさんも、酒場の店員の女性も、以前話した事のある冒険者も含め、何人も顔見知りが居た。そして、彼らも理性の無い魔物かのように争っていた。

傷を受けても倒れることなく、足を切られていても腕で這って移動していた。

村の中心部では、火属性魔法を放った者が居るのか、幾つも火の手が上がっていた。


そして……


“やはりな…”



村の中心部の、上空。ビル4〜5階程の高さの所に、青髪の1人の男が宙に浮いて下を見下ろしていた。


(悪魔…)

ソフィーの脳内にあった予想通りだった。


“キマリスだ。精神支配の類いのスペシャリストだ。対象操って戦わせ、自身は手を汚すのを嫌い、傍観するのがやつのやり方だ。。”


(そう…)


出来れば、もう二度と見たくない、会いたくない種族だった。

それがソフィーの本心であり願望だった。

対峙したくないから、身を隠した。ここで半年生きてきた。

だが、それは…ここでの生活は、この日終わりを告げたのをソフィーは理解した。


(もしかして、2人の後を…?)




「きゃああああぁぁぁぁあ!!!!ママァァァァァ!!!!」

どうやって解決するか考え始めた瞬間、聞き覚えのある少女の声がした。


躊躇う暇は無かった。ソフィーは争っている村人の間を縫い、時折来る攻撃を全て回避して走った。


その声の方向に行くと、そこには目を向けるのも辛い悲劇的な状況が待っていた。

細い道に、4人の獣人が居た。ソフィーの手前にはマナとルナが居た。その奥には、先程、こっそり治療した2人の父親が、正気を失ったのを証明しているかの様な充血した白目を剥いた凶暴な顔で、右手に血まみれのナイフを握って立っていた。

その足元には、腹部の傷を負ったたマナとルナの母親の姿があった。純白の綺麗な白い毛に鮮血が飛び散っていた。


人目見て、ソフィーは全ての状況を理解してすぐさま行動に移った。


「2人とも来て!私の手を!」

そう叫んでソフィーはマナとルナに両手を伸ばした。

その声に反応して、2人の父親がナイフをこちらに向けて足を進めてきた。


「お姉ちゃん!!」

2人は、ソフィーの言葉を信じて、素早く手を掴んだ。

それを確認して、ソフィーは転移魔法で姿を消した。



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━



転移先はソフィーの住処の中だった。


「アズラエル!」

転移魔法と、初めて見るソフィーの住処に戸惑う2人には構わずに、すぐに実力を含めて信用出来る者の名前を呼んだ。


「はい!ソフィー様!」


「2人の保護を。住処の中に私以外入れないで。入ってきたら無力化を。それと…」

そう言って、マナとルナを彼に預けた。

そして、アズラエルを見ていた顔をレイに向けた。


「レイ…」


「はい…お嬢様。」


「荷造りを…時間が無いから最低限ね。」

その言葉に、察したレイは無言でこくりと頷いた。


(アガレス。村に戻るよ。)


“了解だ。”

足元に転移の魔法陣が現れる。



「あと、レイ…」


(私のせいだもんな…)


「はい?」


「…ごめん…」

涙が出そうなのを堪えながら、代わりに3文字の言葉を絞り出して、その場から転移した。




━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




ソフィーの転移先のクトル村は、狂気に満ちていた。全員が自我を失っていた。


“キマリスの精神支配のやり方は、自我を破壊し、命令だけを聞く人形にさせるものだ。”


(治し方は?)


“━━━”


「ちっ…どうにかしなさいよ!」


“あぁ、とりあえず、村人よりも先に…”


唯一自我が残っていると予想したマナとルナの母親の所に向かった。

ソフィーの推測では、彼女の種族が要因と見ていた。太古から存在する神獣と呼ばれるフェンリルの血を引く白狼族の強力な魔力がキマリスの精神支配を免れたということだ。マナとルナが無事だったのも同様だ。


2人の家に行くと、先程と変わらずに、母親はそこに倒れていた。幸いなことに父親はその場から離れていた。


警戒しながら駆け寄り。抱き抱えて首に指を当てると…


「はぁ…まだ脈あった…」


すぐ様回復魔法をかけようとしたが、左手首を掴んでそれを止められた。


「えっ?!」

掴んだのは回復魔法をかけようとした本人、真っ白な髪と耳を持つマナとルナの母親であった。


「もう…はぁ…良いわ…もう、か、回復魔法でも助からない。自分の方がこういうのは分かるから…はぁ…そ、それよりもその魔力は大事なことに使いなさい…」


「でも!!」


「いいから…はぁ…そ、それより約束して…あ、あの子たちの事を…守り抜くって…はぁ…いいわね…?」

その問いかけにソフィーは無言でこくりと一度頷いて返事をした。


「よろしく…ね…」

最後にそう言って、彼女は息を引き取った。安心した様な優しい穏やかな表情だった。


「ごめん…なさい…」


その場で彼女の体を優しく置いてゆっくり立ち上がった。


そして…




「あいつね…」

そう言って、視界に入るキマリスを睨みつけた。


(ここから行く)


“なっ?!”

アガレスが驚くのを気にすることも無く、ソフィーは足に魔力を集中させて強化し、思いっきりジャンプした。


そして、空中で両手に氷の剣を生成し、そのまま一回転してキマリスに斬りかかった。


「ちっ、邪魔だ!!汚れるであろう。」

その攻撃に、キマリスは魔法で反撃することなく両手で掴み、そのまま地上に投げつけた。


「わっ!」

投げられて最初は焦ったものの、すぐ様体勢を建て直し、そのまま村の中心部に土埃を上げながら着地した。

見上げると、先程と同じ場所にキマリスは居た。


「私は、直接戦う事などしないのだよ!そんな行為は下等種族だけでしているが良い。それは半端者の貴様とて同じことだ。既に我が眷属と化した者共の手によって死ね!!!」

その言葉と共に、両手を広げた。そして、それを合図に既に傀儡と化した村人達がアンデッドに似た唸り声を上げながら、ソフィーに襲いかかった。


「くっ!」

数え切れない多方面からの様々な攻撃をかわし、顔面に飛んできた拳を受け流したが、脇腹に蹴りが1発入ってしまった。


「うっ…いった…」

視界に入らない不意打ちによる痛みに、思わず顔をしかめた。


“主よ、反撃だ。”


(それは、だめ、出来ない。私に敵意が無い人は……他の方法を探す!)


“だが…さっきも言ったであろう…”


(不可能なんて無い!どうにかやり方を見つけてよ!)

ソフィーとアガレスが脳内で議論を繰り広げていた。

その最中も、村人達の攻撃が収まることは無く、回避と氷の板による防御で必死に耐えていた。


“だが…このまま防御に徹し続けるつもりか?いずれ、ジリ貧になるのは目に見えていると思うが?”


(だからって…)

心臓を鎖で締め付けられるような感覚を覚えながら、辺りを見回した。変わらずそこには自我の無い村人達がいた。


(出来ないよ…人殺しなんて…無理だよ…)

数え切れない攻撃を回避したことで、疲労と焦りが徐々に蓄積され、息も上がってきていた。

唯一の救いは、キマリス本人が攻撃して来ない事だった。


(ほんっとに、酷いやり方…)


“あぁ。彼一人で何個か国も滅んだ。”

内政に関われる人物を操ってしまえば破滅への道は一瞬だ。


(そう…それで、本当に方法はそれしかないの?この人たちを殺すしか…ないの…?ねぇ…アガレス…アガレス!ねぇ!)


“残念だが…彼らは既に心を破壊されている…済まないが主。覚悟を決めてくれ…このままでは主自身の身も安全とは言い難い。”


「でも…」


“主は今ここで倒れるべきではない存在なのだ。話したであろう。主と我の共通の敵の存在を…倒すべき悪を。今は何よりキマリスの排除が重要だ。”

アガレスが正論だった。殺したくないというのは、ソフィー自身のわがままが混じった


「くっ…」

悔しい気持ちが込み上げ、無意識に歯ぎしりをしていた。


(ここで、私が死んだらマナとルナを守る約束が守れない…レイも悲しむよね…この人達を放置して、もし他の集落が襲われたら?)

その時、ソフィーには、この場の解決策が1つしかない事を悟った。



(アガレス、全員の足場を凍らせて拘束。)


“了解だ。”

すぐにアガレスは注文通り、まるで泥濘に足を取られた時のように村人全員の足首までを凍りつかせて、身動きを取れなくさせた。


そして…


ソフィーの中の良心が頭の中で囁いて来た。

これをしたらもう本当に善人に戻ることは出来なくなるよ?と。

悪者になっちゃうよ?と


だが、ソフィー自身はちゃんと分かっていた。




もう、そんなの今更だと。




(アガレス…)

「す、全ての村人を…ロ、ロックオン…」

その言葉を言い終えた瞬間、100を超える数の氷の矢が空中に顕現し、村人に狙いを定めた。


「み、皆さんのおかげで、楽しい生活を送れました。私の呪いを、辛さを忘れていることが出来ました…私のせいで最期に辛い思いをさせてごめんなさい…今までありがとうございました…」

力が抜けて膝を着いたソフィーには、もう村人達を直視する事は出来なかった。


「さようなら…」



「撃って…」


アガレスの返事は無く、その声と共に、全ての氷が村人の頭、胸に突き刺さった。村に来て何度も話したことのある人も、買ったことのある店の主人も、酒場で見かけた事のある冒険者も…その瞬間全員が息を引き取った。


近くに居た村人の体から、まるで果物から果汁が溢れ出すかのように広がり、ソフィーの膝の所まで届き、衣服に赤い染みを作った。


「あああぁぁあぁあぁぁぁあぁぁぁあぁぁあぁぁぁあぁぁあぁ!!!」

喉が枯れるまで叫んだ。

攻撃を実行した瞬間、罪悪感が、半年ここで過ごした時の思い出と共にソフィーの心に津波のように押し寄せた。


皮肉にも、裏切られ、一度人を恐れ、凍り付かせた心を溶かしてくれた環境を今度は自身が破壊してしまったのだ。



(忘れていた。ここでの生活が本当に居心地が良くて…忘れてしまっていた。目を背けてしまっていた。

あの日から、私がどれだけ、まるで呪いかのように、幸せに忌み嫌われてしまっているのかを…)


「私がこの村の人達と関わりすぎたからだ。ずっと住処に引きこもっていれば良かったんだ…なんでそんな簡単なことが出来なかったのよ…ソフィーの馬鹿…」

した所でどうしようも無いことはわかっていたが、それでも自分の事を罵った。



そして、気づいた。



「あぁ…悪魔だ…私…」



気づけば、いつの間にか降り出していた雨が、村に放たれていた火を消火し、彼女の髪と頬を濡らし、何故かどうしても流れないソフィーの涙の代弁を務めていた。





この日を境に、ソフィー・ベネットの今までの優しい笑顔が消え去る事になった。

そして、この日の出来事が、これから先の人生において、トラウマとなり、後悔となり、呪いとなって縛り、苦しめ続ける事になるのを、彼女はまだ知らない。



To Be Continued

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