「再会と約束」
17話「再開と約束」
ソフィーは、ゆっくりと目を開けた。
目の前にはさっきまでの青空も、戦闘で破壊された森も無く、ただ、真っ白な空間が広がっていた。
「ここって…」
ポリポリと後頭部をかいた時に違和感を覚え、ペタペタと顔を触り、耳を掴んだ時に察した。
「?!体が…」
ソフィーの体は、エルフのソフィー・ベネットの体ではなく、前世の東雲莉果の体だった。
「やっぱりまた死んだのか…」
「いいえ、『死にかかっている』が正解ですわ」
背後で声がして振り向く。
そこには、莉果の人生を変えた女神が立っていた。
「さっきぶりね。」
「えぇ、ちゃんと勝てて良かったですわ。」
「いや、もう大変だったよ!あんなのとはもう戦いたく無いよ」
そこから、莉果は飽きるまで、大量に愚痴を吐き続けた。
「そういえば、私はこれからどうしたらいいの?」
「そうでした、その事で話したかったんです!」
「ん?」
「今の莉果さんには、2つの選択肢があります。どちらかを選んで欲しいんです。」
「選択肢というのは?」
「1つ目は、転生前、つまり前世の東雲莉果の生活に戻るという事です。」
「え?!出来るの?」
「えぇ、出来ますわ。あなたが病院で倒れ、そこから目を覚ますといった感じで元の生活に戻れます。もちろん、持病は全て完治させます。」
「なるほど…で、2つ目は?」
「先程までと変わらず、ソフィー・ベネットというエルフの少女として生きていく事です。」
「やっぱりそうか…」
(どっちも捨て難いんだよなぁ…持病が無くなれば医師生活だってマシになるだろうし…やっぱり、前世の方が良いのかな…)
しばらく悩んでいたソフィーの頭の中で1つの言葉が突然フラッシュバックした。
“そっか、じゃあ約束だな。帰ったら2人で食事に行こう。”
「約束…」
「ん?」
「帰ってからの約束があるんです。このままソフィーが死ぬのは彼の心にも傷を負わせてしまう。そんなのは嫌です。」
「優しいですわね。あ、じゃあこうしましょ。」
「ん?」
「エルフっていうのは長寿の種族です。健康であれば大体1000歳は軽く超えるわ。だけど、いつか、ソフィーに寿命が来て死んだ時、前世の病院で倒れた時に戻るというのはどうかしら?」
「そんなの出来るんですか?」
「えぇ、出来るわよ。」
「じゃあ、それで、1000年後覚えてる自信は無いけど。」
「まぁ、その時にまた私と会いましょ。それじゃあ、そろそろソフィーに戻りましょうか。安心して下さい。刺された体は私が癒しておくわ。」
「ありがとうございます。では…」
「あっ、待って!」
「え?!」
「これからの事を、忠告させて。」
「何ですか?」
「今に始まった事じゃ無いと思うけど、あの世界を甘く見ないでちょうだい。幸せな事ばかりじゃないの。前世と同じで差別だってあるの。忘れないでね。」
「はい、覚えておきます。」
「お願いね。じゃあソフィーの体に戻すわね。」
そして、莉果の目の前は白い光に包まれ始め、その奥では転生した時と同じ様に女神が手を振っていた。
そうして、女神の前から莉果は消え、ソフィーの体に意識だけ戻っていった。
彼女が消えた後に女神はボソッと呟いた。
「あの子…私が言った忠告ちゃんと分かってるのかしら…これからが1番大変なのに…でも、きっとあの娘ならどうにかして...……」
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(なんか、焦げ臭い…後、血のせいでお金くさい…)
「ソフィー!ソフィー!」
(誰か私の事呼んでる…)
「えぇ…もう朝…?」
ソフィーはゆっくりと目を開けた。
目の前には逆さまのジークの顔と、ソフィーの横になっている体の左右には、アイシャとレイモンドがしゃがんでいた。
「ぞ、ゾブィー…うっ…もう死んじゃっだと思っだぁ…」
アイシャが涙と鼻水でぐちゃぐちゃの顔でソフィーに泣きつく。
「姉さん…ごめんね、心配かけちゃった。」
「ソフィー…苦労させちまって済まんな…」
レイモンドの目にも水滴が溜まっていた。
「レイモンドさん…」
「おい、ソフィー、」
逆さまのジークが話しかけてくる。
「何?ジーク?」
すると、
「本当に、ごめん!!」
急に大声を出したので、3人はビックリしてしまった。
「俺を庇って刺されたんだろ。本当に済まなかった。」
「良いわ、結果的にこうして生きてるんだし。」
「だけど…」
「もう終わったことをぐちぐち言わないの。勝ったんだから喜びましょ。」
「それに…」
「ん?」
「約束あるのに死ねないよ…」
恥ずかしそうにジークから目を逸らして呟いた。
その様子を見てジークはニカッと笑った。
「ははは、そうだったな。あのまま死んだら墓を蹴っ飛ばしてたな。」
「ちょっ!」
「冗談冗談!」
「それより、私のお腹、どんな感じで治ったの?」
「あぁ、それがな、ソフィーの意識が飛んだ後、少ししたら急に金色の光にお前が包まれて、その光が刺さったままだった魔剣も消して、傷口も塞いだんだ。本当に何だったんだあれ…」
「そう…」
(やっぱり女神様すごいや…)
「ねぇねぇ、約束ってなぁに?」
突如アイシャが2人の会話に突っ込んできた。
「「あっ…」」
(姉さんは知らないんだった…)
「え、えっと…また一緒に戦闘訓練しようって約束よ!ね?ジーク?」
「お、おうそうだ!訓練の約束だ。ははは!」
「ふーん…」
アイシャはやや怪訝な顔だったが、一応納得した様だ。
「じゃあ、俺とアイシャは生き残りの兵士を探してくる。ジークとソフィーは帰るまでそこで休んでいていいぞ。」
レイモンドはある程度2人の雰囲気を察していたのか、アイシャを連れて離れてくれた。
「了解です。」
そうして、2人が走り去り、再び静けさが訪れた。
匂いは変わらず悲惨なものだが、もう先程の様な爆発音等は無く、鳥の鳴き声や、遠くで兵士が叫んでいる声だけだった。
「なぁ、ソフィー…」
「なぁに?」
「なんであそこで庇ったんだ?」
「なんでって…なんか、心より先に体が勝手に動いてたの、それに、ジークに死んで欲しくないのは私も一緒よ。」
「そ、そうか…」
「ねぇ、ジーク…」
ソフィーは、弱々しく右腕を上げてその手で薄汚れたジークの頬を撫でる。
「本当に無茶ばっかよね…」
「それはお前もだろ…」
その返答にソフィーはクスッと笑った。
「ねぇジーク、昨日の流れ星覚えてる?」
「あぁ、綺麗だったな…」
「ごめん、あの時私、1つ嘘ついちゃった。」
「何がだ?」
「本当のお願い事を言わなかった…」
「そっか…」
「本当はね…“ジークといつまでも一緒に居られますように”って願ったんだ…」
「えっ…それはどういう意味だ?」
「ん?そのまんまよ。」
若干慌て気味のジークがソフィーには可愛らしく見えた。
「ねぇ、ジーク、さっきの戦闘もそうだけど、本当に無茶ばっかで危なかっかしくて私心配。だからね。これから先はずっと一緒に居させて?3つ目の約束…」
数秒の沈黙が過ぎた後
「はぁ…良いぞ、俺もお前が心配だ。お互い様だ。約束しよう、これからはずっと一緒だ、ソフィー。」
そう言ってジークは、ソフィーの額に優しくキスをした。
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ソフィーとジークがギルガゼイヤと戦った場所よりも、ガイロニア王国よりも離れたどこかの国の一室に2人の男が居た。
1人は漆黒の高級そうな椅子に座り、もう1人はその男の前で跪いていた。
灯りは数本の蝋燭のみで、窓も無いため暗く、2人とも黒いマントのフードを被っていたため、お互いの顔や表情は全く読めない。
「つまり…ガイロニアの兵士に殺されたと?」
「その通りでございます。厳密には、もうすぐ成人を迎える位の年齢の男女です。男の方はガイロニアの第2王子という情報を得ております。女の方はエルフとの事です。また、援軍の部隊を指揮していた者に、16位のゼパルが霊体諸共殺されました。ベレトも肉体が破壊され、現在は霊体のままです。」
「そうか…遂に我らが主、そして、父上は死んだか…やっと、その呪われた体の苦しみから解放されたのだな…父上…あなたを殺した者への復讐、必ずや我が成し遂げます。ですからどうか、安らかにお眠り下さい…。」
「それで、兄上…これからどうしますか…?」
「フェネクス、お前はこれまで通り、諜報活動を続けよ。特に父上を殺した2人と、その周辺の情報があれば欲しい。後、剣と眼の回収もお前に任せる。どうにかして持ってこい。」
「御意…」
フェネクスと呼ばれた男は椅子に座っている男の前から下がろうとするが、それを椅子の男が引き止めた。
「待て、フェネクス。」
「なんでしょうか兄上?」
「生き残っている兄弟達に伝えろ。遂に長男が動くとな。」
フードの中で赤黒い目が不敵にキラリと光った。
To Be Continued
とりあえず、一区切りです。




