「更なる飛躍と決着」
16話「更なる飛躍と決着」
(えーっと…つまり?あの人は私の祖先?)
唐突なカミングアウトにソフィーは少々混乱してしまった。
「あぁ、すまないな…困らせてしまったな。
数千年前は君のような人間を大事に思っているギルゼ・レディア・ベネットという青年だったのだよ。
君が知らなくて当然だ。一族はその大きな汚点を今日まで隠してきたのだから。
そして、弟によって血筋は現代まで残り、ガイロニア王国に仕え続け、今の立ち位置を手にした様だがな。正直愚かとしか思えん。」
「それで?私にこれを教えて何がしたいの?」
「お前は、それを知ってしまった今、これまで通りの生活に戻れると思うのか?」
「あっ…」
(昔の日本も、血筋で差別とかされてきたし、敵の子どもとかに対して風当たりがあれだったりしたよな…同じことが私に?)
「だが、1つだけ方法がある。先程も言ったように私の仲間となれば良いのだ。」
(そういう事か…)
少しの間、ソフィーは考え込んだ。
その様子に、隣のジークは、若干困り気味だ。
そして、ソフィーは1つの答えを導き出した。
「じゃあ、もう1つの方法」
「ん?なんだと?」
「あなたを倒すわ。その実績でプラマイゼロね。」
「くはははっ、そういう事か!来いよ。やれるものならな!」
そう言って、ギルガゼイヤは再び魔剣を構えた。
「ジーク、今度は私がやるわ。」
(これは、私が頼まれたこと。背負わなきゃいけないこと。)
「いいや、俺も一緒だ。」
隣のジークも。格上相手に覚悟を決める。
ソフィーの心は、ギルガゼイヤの強大な力に対する恐怖が渦巻いていた。
だが、それ以上に、彼女には、彼を倒すという覚悟が存在していた。
最初、師匠やアイシャに援軍に行くと名乗りを上げた時は、女神に頼まれたからという理由だけだったのかもしれない。
だが、ソフィーは今の人間関係を守りたい、イヴァン、リーシャ、アイシャ、アリア、レイモンドや王国軍の人達、そして、ジークフリート。
異世界に来てから出会った素敵な人達と、たわいもない事で笑い、魔法の研究をし、買い物をし、ご飯を食べる。
そんな日常をソフィーは失いたくなかった。
(前世の数え切れない程の作品で、魔王に立ち向かってきた数多の勇者達もこんな気持ちだったのかな…まぁとにかく…)
ソフィーは、覚悟を決めて、腰に下げていたアイテムボックスから、刀身が付いていない剣の柄を取り出した。
刀身の代わりに、数センチのミスリルの細い棒が柄から伸びていた。
根元には赤い魔石が取り付けてあった。
「ソフィー、この前言ってたやつ完成してたんだね…」
「うん、今日はこの子の初陣。出し惜しみは絶対しない。」
『氷柱剣』
普段ならば、ソフィーの周りに何本もの剣が現れる所だが、今回は違っていた。
右手に持っていた柄から、細長い棒を芯にして1メートル程の長さの氷の剣が完成した。
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【数ヶ月前】
アリアの研究室にて
「師匠」
「なに?ソフィー。」
「私が一番好きな魔法ってあれじゃないですかー?全距離対応出来るようになって超便利なんですよ。でも1つだけ不満があって…」
あれというのはもちろん『氷柱剣』のことだ。
「不満って?」
「直接手で持っていると冷たいんですよね…暑い時期とかなら別だけど、後々、冬とか、寒い地方に行った時不便としか思えないんですよね。
魔法操作でいつも通り浮かすのでも良いんですけど、直接持っている方が近距離は絶対やりやすいんですよ。」
「そうよねぇ…長時間持ってたらソフィーの手が冷えて、体にも良くないわね。」
「何か解決策とかってありませんか?」
「うーん…」
2人が考え込んで静かになった空間を数分後アイシャが打ち破った。
「ふぁああ…そんなの何か金属とかで持ち手とかでも作ったらどうですかぁ〜あぁ、ねんむた。」
あくびしながら適当に発言をする。
「「それよ!!!」」
2人が唐突に叫んだのでアイシャは慌てて椅子から落ちかけてしまった。
「あっぶな、え?!どうしたのソフィー、それに師匠まで。そんなに悩むことですか?ミスリルの塊でも用意して錬金術でパパっと作ればいいじゃないですが。」
「そうね。錬金術なら工房とかに頼む必要も無いし、楽ね。それにどうせなら柄に魔石も付けておきましょ。」
「私、まだ錬金術は学んでる最中なので、錬成するのは師匠お願いします。今回は見て学びます。」
そうして、3人のアイデアと技術がひとつに集まり、ソフィーの愛武器が完成した。
武器の名前はアイシャが作ってる最中に適当に言った言葉が採用された。
“銀氷”
銀色の柄から現れる氷。
シンプルかつわかりやすい言葉だった。
そして、この言葉が後の世で彼女の二つ名の一部となるが、それはいずれ…
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その様な経緯で生まれたこの世に1つしか無いオーダーメイドのソフィーの武器。
“銀氷”
折れても自身の魔法で何度も生えてくる剣だ。
ソフィーはそれを構え、ギルガゼイヤに向かっていった。
ジークにも見た事が無いほどの速さで斬り掛かる。
ギルガゼイヤはそれを魔剣で受け流す。
が、すぐ様ジークの放った『火焔弾』が顔面に迫る。
「ちっ、うぜーな」
だが、瞬時に顔の目の前に赤黒い魔法陣が現れ、ジークの攻撃はあっさり防がれてしまった。
ソフィーは、再度“銀氷”で斬り掛かる。
それをギルガゼイヤはかわすが、彼の移動先にはソフィーが左手から放った『氷柱剣』がミサイルの様な速さで迫る。
それをギルガゼイヤは魔剣で斬り捨てる。
(攻撃は出来てるけど、決め手が無いな…)
次の攻撃を考えていた最中に相手から視線を外してしまった。
「ソフィー!!」
ジークがソフィーの名前を叫ぶ
「え?!」
一瞬考えていた隙にギルガゼイヤが目の前に迫っていた。
「もう終わりか?では、私の番だ。」
そう言って、今度はギルガゼイヤが近距離攻撃をしかけてきた。
魔剣で斬り掛かり、ソフィーが見たことも無いような格闘技を仕掛けてくる。
数千年生きていれば、攻撃手段の手札が多くてもおかしくは無い。
(やばい、防ぎきれない!)
ギルガゼイヤの蹴りがソフィーの左脇腹に入る。
「ぐっ…」
痛みに堪え、“銀氷”で反撃をするが、あっさりかわされてしまった。
ジークもカバーしようと、焔を纏った剣で斬り掛かるが、魔剣で受け止められ、みぞおちに蹴りを入れられてしまった。
ソフィーから10メートル程離れた場所に倒れてしまっている。
「じ、ジーク…」
ソフィーは弱々しく名前を呼んだ。
「見どころはあるが、まだまだ発展途上だな。」
そう言いながらギルガゼイヤは、魔剣を赤黒い瘴気に包ませ、消滅させた。
(アイテムボックス系の闇魔法?)
「だが、お前の氷魔法の扱い方は素晴らしいな。」
そう言って、ギルガゼイヤは両手を広げた。
すると、彼の周囲に黒い氷の剣が大量に現れた。
「えっ…それって私の…『氷柱剣』…」
「ほぉ、この魔法、そんな名前なのか、ただ尖った氷をいっぱい浮かべるのをイメージしただけなんだがな。相手の強みは吸収しないとな。」
(初見の魔法を名前も知らずに真似するなんて…チートでしょ…普通異世界って転生者がチート能力持つべきでしょ!)
「さて、全部かわせるかな?」
そう言うと、ギルガゼイヤはソフィーの真似をして大量の尖った氷を、ミサイルの様に、様々向きから、ジークと、ソフィーに向かって発射した。
それに対して2人は回避行動を取る。
「くっ、普段私のって、こんなに速かったの?」
「あぁ、そうだよ!練習相手をするこっちの身も分かっただろ?」
「えぇ、そうね。でも今は目の前の氷の対処に集中しましょ。」
そう言いながらジークとソフィーは、それぞれ、自身の剣と“銀氷”で、ギルガゼイヤの氷を斬り捨て、後ろや、複数の方向からの氷は、自身に来たのもジークに来たのも、ソフィーが、『氷柱剣』をぶつけて防いだ。
「これじゃ、埒が明かない…」
どれだけ黒い氷を壊しても、ギルガゼイヤはどんどん追加で生成しているので、魔力が切れない限りこの攻撃は、終わらない。だが、彼の魔力の底が見えない時点で切れるのを期待は出来ない。
一方、ソフィーとジークは必死に防ぐのに必死で反撃の糸口は見えずにいた。更に防ぎ続ける事で疲労は溜まっていく一方だった。
「どうするんだこの状況!」
ジークがソフィーに向かって叫んだ。
(こうなったら…)
「防ぎながら前に出る!援護して!」
状況的には無理難題に近い。
だが…
「無茶ぶりかよ…まぁ、やるけども」
2人はお互い背中合わせで必死に防御しながら、作戦会議をした。
「氷は全部私が『氷柱剣』で対処する。だから、その間に距離を詰めて近距離攻撃を仕掛ける。剣に付与魔法するのを忘れないで。」
「それ以外無さそうだな…分かったよ。乗った!」
「行くよ!」
そう言って2人はギルガゼイヤに向かって走り出した。
「『付与魔法火焔』」
走りながら付与魔法をかけ、ジークの剣が燃え上がった。
「正面突破か?いい度胸だが、私に対しては無謀じゃないか?」
ギルガゼイヤは、更に氷を生成し、2人に向けて発射する。
それをソフィーは、魔法操作で自身の『氷柱剣』とぶつける事で破壊し、防ぐ。
「ちっ、止まんねぇか…」
ギルガゼイヤは、黒い氷によるソフィーの真似だけでは殺せないと判断し、再度瘴気から魔剣を取り出した。
2人の剣と斬り結び、ジークの剣とは火花がちり、ソフィーの“銀氷”と当たると、小さな氷の破片が飛び散った。
「何故ここまで人間の味方をする?お前はまだ人間という種族の恐ろしさを知らん!私と共に来い!」
つばぜり合いになったソフィーに再度ギルガゼイヤは話しかける。
「何回言わせるの?私の気持ちは全く変わらないから!」
「ちっ、」
「それにね、私は人間が好きなの。同じエルフだからって価値観が同じと思わないで!」
「そうか…残念だ。」
話しても意味が無いと思ったのか、ギルガゼイヤの剣の動きが更に速くなった。
ソフィーとジークもそれに対応しようとするが、段々と押されてしまう。
「くっ…何だよこいつ!まだ本気じゃ無いのかよ!」
「みたいね。」
「2人とも楽しかったぞ、そろそろ終わりにしても良いか?」
「「えっ?!」」
そう言ってギルガゼイヤは翼を広げ、空高く飛び上がった。
両手にまだまだ有り余っていた全身の魔力をかき集める。
そして、その魔力を熱へと変換し、高温の漆黒の炎で出来たサッカーボール程の大きさの熱球へと変化した。
「さらばだ、ソフィー、ジーク、短い間だったが、ありがとう!」
別れの挨拶をして、ギルガゼイヤは両手を地上に居る2人に向けて唱えた。
「『悪魔爆炎覇』」
「総員退避!!」
ジークが少し離れたところに居た兵士達に向かって叫んだ。
漆黒の炎の球体がギルガゼイヤの手を離れ、地上の2人の元へと落とされた。
『氷結壁』
「『聖光防御』!!」
ソフィーとジークはそれぞれ、防御魔法を展開した。
そして、高熱の球体が防御魔法と接触した。
すると、鼓膜を破壊しそうな程の凄まじい爆音と共に、周囲の森林の木々をなぎ倒す程の、衝撃波が広がった。
退避していた兵士達も爆風に巻き込まれ、吹き飛ばされてしまった。
「ソフィー!!」
爆発の中で、かき消されそうになりながら、ジークはソフィーの名前を叫んだ。
「大丈夫!」
このまま防御魔法を重ねがけすれば耐えれる。2人ともそう思っていた。
だが、ギルガゼイヤの切り札はそんなヤワなものでは無かった。
「えっ…」
ソフィーは、自身の魔法で作った氷の壁にどんどんヒビが走っていくのを見て、表情が引きつった。
その時だった、遂にソフィーの『氷結壁』甲高い音を立てて砕け散り、ジークの『聖光防御』もパリンと音を立てて割れてしまった。
2人を防いでいた爆風や熱、爆発によって吹き飛んだ瓦礫が一気に襲いかかって来た。
ドライヤーの数百倍の熱と風速が2人を襲う。
ジークは、数少ない素肌が出ている顔を片手で覆い、もう片方の手で、必死に近くにあった岩にしがみついた。
「ソフィー!どこだ!」
ジークは必死に彼女の名前を叫んだ。
ソフィーは防御魔法が破壊された瞬間、再度展開しようとした。
が、直ぐに熱風が吹き付けてしまい、魔法を出せなかった。
代わりに、『身体強化・改』を三重に重ねがけして、高熱による火傷は防ぐ事が出来た。
更にジークの様に、何かに掴まる事も出来ず、爆風に吹き飛ばされてしまった。
右手に持っていた“銀氷”も手から離れてどこかに飛んでいってしまった。
(まずい、まずい、超まずい)
ソフィーは、必死に1番ダメージが少なく済む方法を考えていた。
その時だった、ソフィーの体は、元からあった、巨大な岩に強く打ち付けてしまった。
「ぐはっ…」
既に、『身体強化・改』で防ぎきれなかった打撲、火傷等で全身が悲鳴を上げていた。
そして、後頭部を強打してしまい、頭部から流血してしまった。
口の中は砂のジャリジャリした食感と、血の味がしていた。
「こ、このままじゃ、まずい…」
それらの不快な感覚に包まれながら、ソフィーの目の前は真っ暗になった。
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ソフィーは非常に不思議な世界に居た。
思考だけがそこにあり、肉体も五感も無かった。
手足も動かない。いや、手足すら無い様だった。
それはまるで、意識だけが、そこに居るかのような感覚だった。
“大丈夫〜?”
突如頭の中でテレパシーの様な感覚で声がした。
それは、十数年ぶりに聞く声だった。
(えっ、女神?)
“久しぶりね、莉果さん。”
(それで、また私死んだの?)
“いいえ、まだ生きてますわよ。でも、このままじゃいずれ殺されちゃうわね。”
(じゃあ、ここで呑気に話してる暇は無いと思うんですけど。)
“そんな事言わないでよ。そっけないわね。それで、ここからが本題なんだけど、頼んだのはこちらだし、今回は特別に力を貸してあげるけど、どうする?”
(どうするとは?)
“今のままじゃじゃ勝ち目無いわよ。だから特別に協力するわよ。”
“良いの?”
“えぇ、良いわよ。本来は、人間界に干渉し過ぎるのもあれなんだけどね。今回は本当に特別よ。次は無いと思った方が良いわ。まぁ、そのうち今の何倍も強くなれるから。だから頑張って。じゃあね!”
(ちょっ!待って!)
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「はっ!」
プールで呼吸を潜水をした時に一気に、水面から顔を出し、息を吸った時の様な感覚で、ソフィーは、一気に目を覚ました。
「ぐっ…」
目を覚ましたと同時に全身の針を刺す様な痛みを感じた。
『高位回復』
直ぐに自身に回復を施し、起き上がる。
全身を緑色の光が包み、痛みが和らぎ、傷が塞がった。
そして、ソフィーは、自身の体内魔力の状況を確認した。
体の巡りを調べていたが…
(やっぱり、意識失う前とは比べ物にならない…)
ソフィーの体内の魔力の流れは、比べ物にならない程増加していた。
前が水道の蛇口から流れる水だとしたら、現在は、川の流れの様であった。
(流石、女神様ね。)
そして、直ぐ様ギルガゼイヤを探した。
爆風に吹き飛ばされてしまったが、それでも200メートル程離れた場所に居た。
そして、そこではジークがたった1人で魔王に立ち向かっていた。
「なんで、逃げてないのよ、バカジーク。」
「はぁ…さてと…」
ソフィーは立ち上がり、大きく伸びをした。
「女神様、力借りるわね。」
そう言って、地面を一気に蹴って走り出したが…
「えぇっ?」
予想以上に力が入ってしまった。
最初に踏み出した地面は、ヒビが入って凹んでいた。
そして、走る速度も以前とは比べ物にならない速さだった。
10秒もかからずにジークとギルガゼイヤの所に着いてしまった。
ソフィーはそこでブレーキをかけるのがめんどくさくなり、そのままギルガゼイヤの腹に拳を一発思いっきりぶち込んだ。
「ぐはっ!」
魔王は予想外のダメージに呻く。
「当たった…?」
「ジーク大丈夫?」
ジークは、着ていた鎧も既にボロボロで、頬にも切り傷があった。
「まぁ、何とかな…」
「はぁ…1人でやるなんて…無茶し過ぎよ…」
「お前だってどっか吹き飛ばさて心配したん…」
「何だ!その速さは!」
2人の会話をギルガゼイヤが遮って叫んだ。
「えっとー、ちょっとある人から借りた。」
ぶっきらぼうにソフィーは答えた。
(これ事実だし)
「何を言ってるんだ!」
「んーもういいや、とりあえず仕返しするね?覚悟して?」
そう言ってソフィーは大量の『氷柱剣』を生成し、発射した。
その量も速度も、剣自体の鋭さと硬さも、完全に以前の上位互換であった。
「ぐっ!」
1本の剣がギルガゼイヤの肩に刺さる。
直ぐにそれを引き抜いて、黒い血で汚れたのを棄てた。
傷口は直ぐに塞がった。
(流石の生命力ね。あのくらいの傷は一瞬ね。)
「まぁ、再生するなら何度でも刺すわ。」
勝ち筋が見えそうになって、ソフィーはニヤリと笑った。
「ちょ、調子に乗るなぁあ!」
半ギレ状態のギルガゼイヤは魔剣でソフィーに斬り掛かる。
ソフィーはそれを一度だけ『氷柱剣』で受けると、瞬時に後ろに下がった。
そして、右手をギルガゼイヤに向けて、『死之氷結』を放つ。
ギルガゼイヤはそれをかわし、再び。魔剣で斬り掛かる。
意識を失う前なら、防御するのに必死だったが、今は、反撃する余裕が出来た。
だが…
「ぐっ…」
突如体内から何かが一気に込み上げるような感覚と、体をあちこち殴られているかのような痛みに襲われた…。
立っているのも辛くなり、膝を着いてしまった。
(何これ…力の反動?こんなの聞いてないんですけど!)
「ソフィー?!」
「大丈夫、すぐ収まるから…」
「いやいやどう見ても大丈夫じゃないでしょ!」
「良いから!」
「2人で呑気に話してて良いのか?」
「?!」
チャンスだと思ったのか、ギルガゼイヤが斬り掛かってきた。
それをすんでのところでジークが剣で止める。
「とにかく!お前はその体を何とかしろ!」
「う、うん…」
そして、ソフィーは再び自身の体の魔力に意識を向けた。
変わらず、魔力は台風の時に荒れ狂った川のように大暴れしている。
(まるで、これって王都に来た時にやっちゃった魔力暴走…)
「ってこれってもしかして…また魔力が増えて…」
(だとしたら、抑え込まないと…)
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「師匠、また魔力暴走しそうになってしまったらどうしたら良いですか?」
「そうね…1番は理性を失わないようにする事かな…理性が保てれば、もし目の前に敵が居るなら、そいつだけを攻撃して、体内の魔力を放出出来るでしょ?」
「ただ、体内の魔力を容器に突っ込んで押さえ込もうとはしないで。それが1番危険よ。魔力は自然に流れさせるの。だけど、理性は失わないで。理性を失った時ソフィーの大事な人を殺めるなんて嫌でしょ?」
「なるほど…」
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ソフィーはゆっくりと目を閉じて、体内の膨大な魔力の流れに身を委ねた。
何も舵を取らずにボートに乗って川の流れに任せて進む様に。
(理性…理性…)
すると、自然と体の痛みが減って行った。
だが、体内の魔力は変わらず高いままだ。
(これなら行ける。)
「ジーク!!」
攻撃を必死に防いでいたジークが一瞬振り返り、直ぐにギルガゼイヤと距離を取った。
急に距離を取ったと思ったので、ギルガゼイヤは疑問に思ったが、直ぐにその理由が分かった。
何故なら、彼の左肩にソフィーが『氷柱剣』を刺していたからだ。
その速さにギルガゼイヤは反応出来なかった。
「ぐっ…」
ボタボタと黒い血が滴り落ちる。
直ぐ様その傷口に、右手向ける。
「『白氷吐息』」
右手から、真っ白な気体が放たれ、傷口が凍りつく。
その周りも真っ白になっていた。
「ちっ、治らねぇ!」
(思った通り。凍らせれば再生しない。出血も止まるけど。あまり使わないブレス系上手く出来て良かった。)
「くそがぁー!」
まだ健在の右手で魔剣を握り斬り掛かる。
だが、その動きは最初よりも遅くなっていた。
(まるで、雑魚敵が吐く愚痴みたい…まぁ、この人は雑魚くないけど。)
別の事を考えながら、ギルガゼイヤの攻撃をあっさりとかわし、反撃に出る。
その剣筋も魔法を放つのもやはり、以前よりも速かった。
今のソフィーは『身体強化』を10回重ねがけしている。
女神の力で既に身体能力が高まっていた所を更に強化している。
そのおかげで魔王と互角と言える速度を出せている
ただ、そんな事をしていたら、肉体も魔力も持たない。
今のソフィーは魔力に関しては問題は無い。
だが、肉体は、ほとんど人間と同じだ。
そのため、ソフィーは肉体が壊れる度に瞬時に回復をさせる事にした。
常人なら出来ないし、考えつかないやり方だ。
こんな芸当が出来るのは無論、女神が貸してくれた力だ。
思考速度も以前の10倍近くになったため、激しい戦闘中にも関わらず、同時並行で回復魔法が使えている。
ギルガゼイヤが放つ黒い氷の剣を全て見切ってかわし、手に持っていた『氷柱剣』で斬り掛かり、直ぐ様離脱し、『死之氷結』を放つ。
その一撃離脱戦法を何度も繰り返し、魔王を苦しめた。
「ソフィー…すげぇな…」
「王子!」
レイモンドとアイシャだった。
「え?!あれがソフィー?」
当然アイシャも初めて見るソフィーの姿だった。
後から来た2人はジーク以上に唖然としていた。
最初は、魔法操作すらままならなかった少女がここまで成長していた事に驚いていた。
ジークは、ソフィーの動きの速さ、剣技、魔法、全てのレベルの高さに見とれていた。
そして、女の子があんなに頑張っているのに、俺はこんなで良いのかとも感じていた。
「俺もこのまんまじゃダメだよな。」
そう自分に言い聞かせて、ジークもギルガゼイヤに向かって行った。
「ソフィー援護する!」
「待って!ダメ!」
「なん…?!」
「ふっ、わざわざ死にに来たか。」
さっきまで20メートル程離れていたギルガゼイヤがジークの目の前に立っていた。
ソフィーには勝てないと判断し、彼女よりも弱いジークだけでも殺そうと判断したのだ!
ジークの脳が警報を鳴らし、直ぐ様距離を取るが、ギルガゼイヤは『氷柱剣』よりも小さな尖った氷を大量に生成し、それを散弾銃の様にジークに発射した。
「くっ、」
ジークは剣で必死にそれを防いだ。
が、防ぐのに必死で自身の腹部に迫るギルガゼイヤの魔剣を防ぐのは間に合わなかった。
「やば…終わった…」
ジークは恐怖で目を瞑ってしまう。
「終わってないよ...バカジーク…」
思っていた痛みは襲ってこなかった。
代わりに目の前には、魔剣が左脇腹に貫通したまま立っているソフィーが居た。
「お前…」
「なっ?!」
そして、ソフィーは痛みに堪え魔剣を握った右手を掴んで逃げられないようにし
「さっさと死ね!」
と叫んで『氷柱剣』でこれまで人生で1番魔力と力を込めた一撃をギルガゼイヤの首に当てた。
そして、その一撃は、ギルガゼイヤの首の肉と、骨を断ち切った。
地面にゴトンと音を立てて首が転がる。
「はぁ…はぁ…」
(お腹めっちゃ痛いんですけど、女の子の日の200倍くらい。)
倒れそうになるソフィーの体をジークは支えてゆっくりと横にさせようとする。
「「ソフィー?!」」
アイシャとレイモンドも慌ててソフィーに走り寄る。
ジークが、涙と鼻水を垂らしながらソフィーを膝枕させて、見下ろす。
ソフィーからは、ジークの顔が逆さまで見えていた。
背中から、血が楕円形に広がっていく。
「ジーク…か、勝ったよ私たち…ぐっ...」
彼女の口から細く血が垂れる。
「勝ったよじゃねぇよ!バカ!何庇って死にかかってんだよ!くっ、この傷回復魔法が効かない!」
(ジーク、あんた回復魔法苦手って前言ってたよね…まぁこの傷は私の回復魔法も効かないけど…)
「はぁ…多分…はぁ…魔剣の呪いだと思う…はぁ…ごめん、ジーク…や、約束…守れ…」
ソフィーの息がどんどん荒くなる。
(また、この感じか…久しぶりだな…)
3人に見守られながら、ソフィーの目の前は再び真っ暗になった。
To Be Continued
どんな感じで決着をつけさせようか悩みましたが、自分の中ではこれが1番マシかなと思いました。
この戦いで終わりでは無いです。まだ続ける予定です(大学の授業始まるけど…)




