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鵬、天を駈る  作者: 吉野
5章、『○○○○○○○』
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第85話 NEET、勘十郎



タイトルについて、


個人的な琴線(きんせん)に触れた方には


謝罪をいたします。


申し訳ない。


現在、勘十郎さんはブラブラしています。


そんな話です。







「……………で?


何でここに居るのです?」




ジト目で目の前の相手を(にら)む。


――――本当にね?



どうしてここにいるの?


この人。





「ははは。


あなたが私の未来を(あきら)めさせたのですよ。



キッチリとその責任を取ってもらわないと。」





全てを投げ出したことで、心まで身軽になったか。


『今までの優等生っぷりは何処へ行った?!』



とでも言いたくなる様なだらけきった姿で


すっかり開き直って、


悠々(ゆうゆう)と縁側でのんびりとする勘十郎さん。





…………こいつ、やっぱり弾正忠家の血筋だわ。


一皮剥(ひとかわむ)いたらこの有り様かね?





…………………とはいえ、


これまでが張り詰めすぎていたのだろう。



張り裂けるよりはナンボかマシ………と見ようか。




いざとなったら、シバいて動かせばいい。







「―――――――――正直なところ、


今の私には


何もするべき事が見つからないのですよ。」



ボンヤリとした姿のまま空を仰ぎ、


勘十郎さんが所在なさげな声でポツリと(つぶや)く。



以前に訪れた時よりも、小さく見えた。







………それもそうか。




林の爺(弟)に(そそのか)されるままに


弾正忠家の棟梁を目指していた。



その目的という梯子(ハシゴ)を、


一息ついた所で


蹴飛(けと)ばされて外されてしまった。



中途半端な高みに立たされたせいで、


次に何をすればよいか解らなくなったのだろう。






良いのではないですか?



……………どうせ、棟梁になった後にも


多分同じ問いかけをしていたと思いますよ?





――――――なら今で良かったのでは?


国中を巻き込んだ心中(しんじゅう)をするよりは。





「―――――――はは、


ずいぶんと(ひど)いことを言うな。」




からからと笑う。



―――――ずいぶんと(けん)(かど)のとれたことで。




………今のあなたなら、


着いてくる者も居たかのも知れませんね。





―――――――――――――ま、今更ですが。







それで、やりたい事が見つからない……ですか?




――――別に、そんなモノは


何でもいいのではないですか?



「…………………何でも?


そんな大雑把(おおざっぱ)に言われても。」





元より、人生なんてその様なもの。


決まった生き方なんて在りません。




世の中に実際にあるのは、


それが決まっていると


………そう思い込んでしまった者達だけです。


自身の未来を縛ってしまっているだけなのですよ。




本当にやろうと思えば三郎さまだって、


"弾正忠家の趨勢(すうせい)"という未来を完全に無視して


逃げ出すことだって出来るのですよ?






………………ああ、うん。



 無 い か 。






―――――――あの人、


大将でないと人生をやっていけないので



………まあ無理ですね。







「…………なんて言い(ぐさ)だ。」




それならひとつ、想像を。



…………目を閉じて考えてみてください。




思い浮かべる事ができますか?



人の下でペコペコと頭を下げる、


『下っ()の三郎さま』を。




「無理。」




ふふ。


――――――あなたの方が大概ですよ?



………ふふふ。








話を戻しましょうか。




何をしたらいいかわからないときは、


とりあえず何でも出来る準備をすることです。




人生とは、やりたい事・やるべき事が


ある日突然に


目の前に"パッ"と開かれます。



………それこそ"(それ)"が運命であるかのように。




その時に"それが出来ない"事ほど、


人生において後悔・絶望することはありません。





ですから()ずは、様々な事が出来るように


『素養』を身に付けておきましょうか。





私ならある程度は政治と経済は教えられます。


軍事については他の人へ。





――――そう、


謹慎をしているあなたの傅役(もりやく)


林の爺(弟)にでも頼むと良いでしょうね?




あの方も()く先を失い、腐っています。


謹慎とはいっても、


傅役までは()かれていませんよね?




あの方にもう一度、火をつけてあげて下さいな。






それが出来るのは彼の兄ではなく、


親代わりに付き合っていたあなただけですよ。









「…………そうですね。


ではひとつ、爺の尻を叩いて来ます。




――――――それから、あなたにも色々と


教えてもらうことにしましょうか。



(よろ)しくお願いしますよ?



――――――――――――先生?」








――――――――………………・・・先生…ねえ?








優等生をやっている人間が、


突然にその存在意義(レゾンデートル)を無くすと


高確率でNEETになる恐れがあります。





皆様も、特に子供を持つ親はお気をつけください。


折れてしまった後のケアこそが大切です。




無論、ベストは折れない事なのですが。


………世の中、そんなに甘くは無いので。





カッツさん、気軽に話の出来る友人(?)を得る。


ついでに教師でもあるのだが。



何気に救われていたりする。






マメ知識




『NEET』



ブリティッシュイングリッシュで、


"Not in Education,


Employment or Training"の略。



学校へ行くわけでもなく働いている訳でも、


また職業訓練を受けている訳でもない者をさす。


つまり"特に何もしていない"者。



日本では"若年無業者"と呼んでいる。



これ自体にそこまで悪い意味は無いが、


マスコミが"悪いモノ"として報道したために


日本ではネガティブイメージが付随(ふずい)する。


日本人の"無勤労は悪"という


ちょっと古い観念に引っ掛かったのだろう。



なお、カッツさんの場合は


本人に財産がある御曹司であり、


どちらかと言うと"所得があるため働いていない"


という"ネオニート"に近い。





『シバく(シバいて)』




関西系の独特な表現。



"叩く・(なぐ)る"などの意味で使われるが、


あくまで本気ではなく


基本的にはジョークとして使われる。



別の意味として、"茶ぁしばく"などと、


"飲む・食べる"という表現としても用いる。






『梯子を外す』




"逃げるに()かず"で有名な、"兵法三十六計"。


そのうちの28番目である、


"上屋抽梯じょうおくちゅうてい"に由来する。




"屋根に上らせ、梯子を(はず)す"。


相手をそれとなく誘導して、


後退できない危機的状況に追い込むことを指す。



戦略的に"梯子を上らせる"必要のある、


結構に高等な策。




三国志において


劉表の死後、その子の劉琦が


荊州への助力を願って諸葛孔明に対して


"物理的に"梯子を外した事でも有名。





『趨勢』



漢字の"趨"は、走るという意味がある。


元の意味は、"走る勢い"。



そこから物事が進む様子や成り行き、


社会の流れなどを指す。






『林 通具の謹慎』



一応、明確な謀反の行動を起こしていないため、


謹慎で済んでいる。



兄の必死の説得が(こう)(そう)した模様。




とは言うものの、現在は野望が砕け散り


いわゆる"燃え尽き"状態にある。






存在意義(レゾンデートル)




カタカナの方はフランス語、"raison d'etre"。


哲学用語のひとつである。



他者の評価とか関係の無い、


あくまで自分が認める


"自分が存在するだけの価値や理由"のこと。




自分の評価であるために、


自己否定をしてしまうと簡単に崩壊する。



また、挫折(ざせつ)が天敵。





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