表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鵬、天を駈る  作者: 吉野
5章、『○○○○○○○』
87/248

第◯話 邪説、『焚書坑儒』(超口語訳版)




これは主人公と勘十郎さんとの会話。


二人の"授業"風景になります。



………内容はブッ飛んでいますが。







「……………うーん。


では最初は『物事の側面』から始めようか?」




「物事の側面………ですか?」




「そう、そういうこと。


―――――では、題材として『焚書坑儒(ふんしょこうじゅ)』を


用いてみようか。



………………そもそも、『焚書坑儒』とは何か?」




「大昔の大陸で、"秦の始皇帝"が行った


政治的弾圧ですね。


"書を焼き、儒者を生き埋めに"


したとされていますね。」




「わかりやすい弾圧ではあるよな。


………実は大陸ではこの(たぐい)の弾圧は、


国が滅び新しい国が出来る(たび)に横行している。」




「………………なんで、ですか?」




「ドン引きするな。


古い政権の文化を消すためだ。



『今よりも、昔のあの◯◯の国が良かった』


なんて比較対象を消すためだよ。


(かげ)で大陸の文化は定期的に破壊されるため、


ほとんどの民は貧しいままだ。


…………その度に、国家が築いた技術体系が


粉砕されるからだよ。」




「イヤな慣例ですね。」




「"焚書坑儒は、これの最初の例である"


とも言われている。




……………では、少し見方を変えようか。」




「……………どのように?」




「先ずは当時の時代から。


秦が大陸を統一するまで、


"戦乱の世が500年以上"という


ちょっと頭のおかしい年月が()っている。」




(なが)ぁっ!?」




「そんな異常な時代だ。


―――当時の世相はどうであったか。


………ちょっと今の世で比較してみようか。」




「はい?


…………今の世?」




「ひとつ、ナワバリが云々(うんぬん)と殺し合う。


 ひとつ、コケにされたと殺し合う。


 ひとつ、スキが有ると殺しにかかる。


 ひとつ、ヤツが(うらや)ましいと殺しにかかる。


 ひとつ、やれ腹が減ったと、のどが渇いたと


…………その程度で殺し合う。」




「――――――はは。」




「挙げ句の果てには……取り分が少ないと言って


兄を、父を殺してしまう。」




「…………………えーっと。」




「よく『畜生にも劣る』などと言いますが、


……………どの口で言っているのでしょうかねぇ?」




「―――――返す言葉もないです。」




「応仁の乱より100年と少しでこれです。


その4倍から5倍近い当時は、


どれほどの修羅の世であったやら。」




「―――――――うわー………」




「当時の秦の役人も、


『こんなのを統治とか、どんな罰ゲーム?』


……………とか思ったのでは?」




「何ともいえませんねえ。」




「ところで秦の国は大陸の統一後、


どのような統治体制を(こころ)みましたか?」




「確か…………


厳格な法律と厳罰をもってあたったと。」




「考えようによっては、


これは『話せばわかる』を諦めたともとれます。


事実上の『問答無用』ですね。」




「(絶句)」




「『もうルールを造って、


(なぐ)って(しつけ)した方が早い』なんて


判断をした可能性があります。」




「……………………………はあ。」




「実際、このガチガチの締め付けで世情が安定し、


次の"漢"の治世は(スゴ)く落ち着きます。」




「なんと…………まあ。」




「こういう体制を『法家思想』と言うのですが、


コレは儒学・儒教思想と滅法に相性が悪い。」




「――――――ふむ?」




「当然、彼等は秦国に抗議・批判をしたでしょう。


……………で、『少し黙れ』と釘を刺される。」




「あー………」




「さて、ここでまた側面を見てみよう。


"儒教"という集団は、気の狂った超長期にわたる


戦乱の時代を生き抜いた猛者(もさ)だ。



言ってみれば、今の叡山や本願寺みたいなもの。


…………そんな連中が、


『黙れ』といって果たして黙るかな?」




「無理でしょうね。


むしろ反抗しかねません。」




「………………即答かね。


―――まあいいや。


"資料が一切ない"のでわからないのだが、


実際のところ、最悪の場合


『加賀の一揆』のような"やらかし"


をやっている可能性もあるわけだ。」




大事(おおごと)ですねぇ。」




「さて、少し仮定の話をしてみようか。


この"やらかし"が有ったとすると。



その場合、『焚書坑儒』の目的が変わってくるな。」




「―――――――あっ!!」




「この条件では、『焚書坑儒』は


思想や文化の弾圧ではない。


これは反乱組織の討伐・処刑だ。」




「…………………………」




「まあ、あくまで仮定の話だ。


有ったかどうかなどわからんよ。」




「ええ…………………


ここまで言ってそんなことを言いますか?」




「そもそもな、


残されている資料が


()()()()()()()()()()()()()だ。


……………これはな、


どこまでも()()()()()なんだよ。」




「真実を書いてない恐れがある…………と?」




「知らん。


所詮(しょせん)妄言(もうげん)だよ」




「知らん…………って。


言い捨てましたねえ。」




「…………まあ、こんな感じだ。


こういうものが『物事の側面』だよ。



全てが正しいとは限らない。


かといって、


それが間違っているとも言いきれない。



―――――歴史なんて、あくまで結果だ。


結果の積み重ねでしかない。


その結果から善悪が決まるのだよ。



…………国家と個人の都合で。」




「……………深いですねえ。


ただ歴史を事実としてしか見ていませんでした。


こうして論じてみると、なかなか面白い。」




「その感想をあらわす言葉がある。


『学而時習之。不亦説乎。』



―――――学びて、時にこれを習う。


……………また(よろこ)ばしからずや。」




「っ!?」




「『先生は、かく(おっしゃ)った!!』なんて


ドヤ顔をする弟子の姿が見えるようだろう?」




「――――はは、確かに。」




(もと)を正せば、儒学というのは。


弟子達が『論語』を自費出版した頃までは、


孔先生とユカイな弟子達の


学術者集団でしかなかったそうだよ。



……………まあ、その頃から国家をパトロンに


していたようなのだがね。




…………学問そのものに、罪など無い。



罪はそれを悪用するものにこそ在るのだよ。」









"邪説"は造語。


字を見ての通り、異説ですらない妄言です。


世の中の学説に一石を投じるつもりもありません。



この一話自体を、


一種のジョークとして(とら)えてく下さい。



読んでのとおり、大して"重み"はありませんから。






この話は、別名を


『妙見丸と勘十郎の暴走授業』といいます。



不定期でゲリラ的に挿入されるシリーズ物です。




閑話の一種とお思いください。



実はこの話のプロット、


結構に前からありました。



つまり勘十郎さんの今の環境も『予定どおり』。






マメ知識




『大陸の文化粛清』



最も新しいのは、"文化大◯命"。


こういうことばかりやるから国家が保護する


超高度な伝統技術が消失ばかりする。





『話せばわかる⇒問答無用』




知っている人は知っている、


5・15事件の有名なセリフ。


当時の首相、"犬養 毅"暗殺時の逸話である。



どうこうと言われるが、この事件は


実際にはただの軍部の暴走でしかない。





『法家思想』



完全にモラルハザード状態の当時の世相では、


既に徳で国家を治めるのは限りなく不可能だった。


そのために新しく生まれたのが法家思想。



禽獣も同然の人心なぞ、


法の厳罰で縛った方が早いという考え方。




当時としては"最適解のひとつ"ではあったが、


秦はこれを過剰にやりすぎたために歪みが出来る。



とは言うものの、


犯罪発生率を激減させたことも事実である。



当時の儒家はインテリの集まり。


それゆえに極めてモラルの高い彼等には


モラルが崩壊した世相の現実を知らず、


また理解もできなかったのではないかと思う。




理想を追う儒家と現実を見る法家は、相性が悪い。


それはもう、徹底的なまでに。



焚書坑儒がそのために起こった可能性もあり。





『加賀の一揆』




一向衆の武力蜂起。


加賀の守護を追い出して独立した。




………までは良かったのだが、


政治の素人が集まって迷走の果てに悪政を敷いた


典型的失敗例となる。



冗談抜きで重税と略奪の横行する地獄と化した。





『学而時習之。不亦説乎。』




"論語"の最初の一文。


現代風に訳すると、


"学んで何となく知っていた事でも、後になって


研究や議論をすると新しい発見があるものだよ。


……学問ってヤツは、ホントに面白いだろう?"


なんて意味になる。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ