第43話 彼らの傍らで
ニューヨーク沖から東に100km地点
大西洋上空 C-17機内
マイク アレックス視点
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アフガニスタンの米軍基地での救出作業が行われたのが20時間前。俺達は今、謎に包まれたネバタ州の空軍基地へと向かっている。
C-17内には俺と額に汗の跡が残っているロイドと多数の兵士が乗っている。
ルーカスは負傷したコナーの付き添いを申し出たため彼らはこの航空機には乗っていない。聞いた話によれば彼らは同期で特に仲が良かったらしい。
そしてこのC-17には人間以外の物も乗っている。無論それは無機物ではない。
それことサソリは手術される人間のようだ。街灯のような白い灯りに照らされ、その黄土色の体が明らかになる。その体には砂があちこちに付着してあり、弾丸が当たったあとが見受けられる。
そしてサソリの体からは青色の体液が顔から溢れていた。口の中から溢れているわけではない。
「相当硬い外骨格を持っているようだな。メスも通らない」
このサソリを解剖している兵士がアレックスに向かって言う。
「その分奴の弱点の部分は脆い。それにM2重機関銃はこいつの殻を貫通する…それにしてもこいつはなんなんだ?」
サソリの体にメスを入れ、続けてピンセットを入れる。そこから取り出した皮膚片は青色で覆われた肉塊だ。これには思わず顔をしかめてしまう。
「こんなの見たことない。再生力といいこのデカさといい」
「ニューヨークでもこんなのが現れたんだろ?俺達が知ったのは2時間前だが」
「もっと大きい」
メスを持った兵士はそう言うと腹部にメスを入れていった。
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アメリカ合衆国 ニューヨーク州
マンハッタン島 5thアベニュー(エンパイアステートビル前)
この作戦が行われたのはニューヨークにあった株券交換所がフィラデルフィアに移されたことを聞いたあとだ。
『これよりM1戦車を向かわせる。車間距離を一定に保て』
先頭の車両のハンヴィーに誘導されながらM1A2 エイブラムス戦車が走る。
ガラガラガラとコンクリートの道路を走る戦車群は8台続いており、30kmの速度を維持しながらウォール街、ニューヨーク市庁舎へと向かっている。
『距離はおよそ1.5km』
『現在火災は確認できない。完全に鎮火したと見ていい』
鳴り止むことのない無線を聞きながら兵士達は向かう。
上空をCH-47 チヌークの編隊が通り過ぎていく。
目的地についたころには既に多くの隊員が輸送ヘリから降りた後だった。
戦車群は到着すると同時にあるビルの残骸を囲むかのように展開する。
そして事は唐突に始まる。1人の兵士がその事を無線で知らせ、多くの兵士が向かう。
そこにはニューヨークを壊滅にいたらしめた化け物の首がおぞましい形相をして横たわっていた。
兵士達はその姿を見て、改めてこの惨状を目にするのだった。
ニューヨーク事件
死者1785人 行方不明者260人 負傷者3000人以上
被害総額 10兆円以上
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タジキスタン パミール山脈 高度2000m地点
空気を裂くような音と共に[彼女]の方に何者かがこちらへと近づいてくる。
それは目の前で止まると、[彼女]の後ろに空気がぶわっと流れ、そ緑色の髪が後ろへとたなびく。
「あら?随分と早いことね?」
[彼女]は目の前にいる男、エルターぜへと話しかける。
「貴様こそ、よくもまぁ人間の体でここまで
登れたものだ」
「私は魔王の幹部になる時に人間をやめたはずよ。この体は疲れないし、ちょっとの怪我もすぐ治る。とっても便利だわ」
「それは大層なことだ。それと魔王様と言うようにしろ」
全くこの堕天使はいろいろと細かすぎる。鋭そさを感じさせるその声は、心底響き渡っていい気分はしない。
「それで何の用かしら?お出迎え?残念だけど既に可愛いお人形をたくさん殺しておいたわ」
「ふん。まぁお出迎えで合っている。貴様はこの先どうするつもりだったんだ?」
「それより他の連中は?」
「他?知らんな。辺境の国にいた[極悪人]は俺の運ぶ速度と高度に耐えきれんからな。耐えきれるのは貴様と[堅物]だけだ。もっとも[堅物]のやつは気配を完全に消してやがるから探すのに苦労する」
[極悪人][堅物]はそれぞれ人間共が勝手につけた魔王軍幹部の名称だ。無論それぞれ
名前があるのだが。
「別に私はいいわよ。連れて行っても。ただこのまま魔王のもとに帰っても何もないのでしょ?それならもっと面白いことをしたいの」
「ほう、何だ?」
「遊ぶのよ。魔法が使えて強いお人形達と。ヘンテコな鉄の塊を使う人形には飽きちゃって」
「魔王様はお前達を連れて来いと言っていた」
「でも連れて行ったの?さっき言った感じだと誰も連れて行ってないんじゃないかしら?なら私だって寄り道してもいいでしょ?」
「けっ。[悪女]が…まぁいいだろう。だが貴様、分かっているとは思うが…既にザッヴァーがやられている。[竜]の代償、魔王様の幹部が1人いなくなる損害はかなり大きいぞ」
「はいはい[雷]さん。気をつければいいんでしょ?」
「その名前で呼ぶな。人間共がつけた名前など虫唾が走る」
「さっき私のことをその人間がつけた名前で言ったじゃない」
その時、ダダダダという音と共に[悪女]の背中に強い衝撃が走る。後ろには叫びながらサブマシンガンを撃つ男の姿があった。その男は頭から血を流しており、服はあちこちが破れている。
「痛ったぁ。もう!まだ生きてるだなんて」
[悪女]はそう言うとサブマシンガンを撃ってきた男の頭上に巨大な岩を出現させ押し潰す。
[悪女]の後ろには炎で真っ赤に燃えている基地が広がっていた。
ワールドウォーZという映画でのテーマソングが好きです。日常が崩れていく感じで。
作品としても日常が非日常に変わっていくような感じでいきたいです。




