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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第4章 遠征
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その後ろ姿は、少しだけ寂しげなのでした。

 (はあ。)

 ベンチに腰を掛けている僕は、ちょっと溜め息をついているのでした。

 でもそれは、悪い意味での溜め息ではないのです。

 今日の練習は、もう終わりました。

 そして現在の僕は、全身に充実感が一杯溢れているのでした。

 だから何の問題もない、と言えるのですが思考することは止められないのです。

 そこで僕は思いました。

 やはり昨日メルボルン動物園にいった事に関して、ヒートには狙いがったのではないでしょうか。

 ジャッカー・チンとカンガルー格闘王のスパーリングをみたのは、一つの狙いがあったのではないでしょうか。

 でも今となっては、その事をヒートに対して追求しても、自分に取って余り意味は無いのかも知れません。

 良いではないですか、実際良い状態にいるのですから・・・。

 周りから見て、恐らく惚けた顔をしているのではないでしょうか、今の自分は・・・。

 そんな事を考えながら、僕は明日以降も頑張ろうと心に誓うのでした。

 でも話はこれで終わるほど、単純なものでは無かったのです。


 ==== ドンとしんく ふぃーる ====

 (え!?)

 どこからともなく声が聞こえたのです。

 しかもそれは極めて、距離が近いと思われるのです。

 「うわっ!!」

 ボクが驚いたのは、無理もありません。

 何故なら僕が横を向くと、彼(?)が座っていたからなのでした。

 そうなんです。僕と同じベンチに座っているのです。

 「な、何故・・・。」

 僕の横にいるのは、まさかまさかのカンガルー格闘王なのでした。

 「何故、貴方がここに・・・?」

 僕は恐る恐る、彼(?)に語りかけたのです。

 ボクが得体の知れない不安を感じながらであることは、最早言うまでもありませんでした。

 そこで自分の思いもよらない言葉が返ってきたのです。

 「君のためだよ。君は昨日、私のスパーリングを見に来た青年だろう?」

 「え・・。」

 なんと、このカンガルー王は流暢にも、僕に語りかけてきたのでした。

 しかも、とても優しい口調なのでした。

 その為に自分が抱いていた得体のしれない不安は、和らいできたのです。

 もし彼(?)が人間だったとしても、それは立派な人格者なのではないでしょうか。

 しかも見るからに、まさに王と呼ぶに相応しい品格を備えたカンガルーなのです。

 僕は彼(?)に対して安心と共に、敬服という感情が芽生えてきたことを感じるのでした。


 それはそうと、自分には素朴な疑問が沸いてきました。

 何故に彼(?)は、自分のもとにやって来たのでしょうか。

 そしてハッキリ言って、このカンガルー格闘王は一体何者なのでしょうか・・・。

 「貴方は一体・・・?」

 その率直な気持ちを、僕は彼(?)にぶつけたのでした。

 「私は一介のカンガルーに過ぎないよ。

 「カンガルー?」

 「そうだよ。どこからみても、カンガルーじゃないか。」

 そんな事を言われたので、僕は彼(?)の顔をジッとみやりました。

 この時点で、もう僕は彼(?)に対しての警戒心は、全く無くなってしまっているのかも知れませんでした。

 僕はあんまりカンガルーの事に詳しくはないのですが、確かに彼(?)は一般的なカンガルーではないでしょうか。

 これがこの時点での、僕の彼(?)に対する見解でした。

 「私は只のカンガルーだが、必死に格闘技に打ち込んだんだ。」

 そこで僕は彼(?)が、何か大切な事を語る予感をしたのです。

 「それなりに皆にも、認められるようになった。」

 そのカンガルー王の言葉で、僕はハッ、と思い出したのでした。

 彼(?)のジャッカー、チンとのスパーリングを・・・。

 あの卓越した動きを・・・。

 まさに両者は自信に満ち溢れていました。

 それは間違いなく、今までの鍛練から来るものではないでしょうか。

 「君ならできる。」

 そう言いながらカンガルー格闘王は右手(?)で、僕の左肩をポンと叩いたのでした。

 「は、はい。」

 僕は彼(?)の顔を見て、素直に頷きました。

 「頑張るんだよ。」

 言葉と行動が一致していません。

 カンガルー格闘王の顔が僕の至近距離まで迫っていました。

 ただでさえ至近距離なのに、彼(?)はさらに迫ってきました。

 カンガルー王の顔が、どアップになった瞬間・・・。

 「うわああ!」

 その迫力に、僕は圧倒されてしまいました。

 そして僕は気を失ったのです。

 (はっ・・・。)

 どれほど時間が経過したのでしょうか、僕は目を覚ましました。

 「なんだあ・・・。」

 そして僕は、安堵の溜息をついたのです。

 どうやら自分はベンチに腰かけたまま、居眠りをしてしまっていた様なのです。

 今はオーストラリアは夏なので、風邪をひいたりはしないと思うのですが。

 「ふう、また夢だったのか。」

 落ち着きを取り戻した僕は、首を軽く左右に降りました。

 とても小さな音が、自身の脛椎から漏れ出ていました。

 そしてその解された首をもってして、周りを見回したのでした。

 「あっ!」

 その瞬間、僕は驚嘆の声をあげたのでした。

 日が落ちかけ薄暗い中、ヒタヒタと歩く背中が見えていたのです。

 その後ろ姿は、少しだけ寂しげなのでした。

 僕は、いや恐らくほとんどの人々は、見たことはないでしょう・・・。

 このようなシチュエーションで、有袋類が歩く後ろ姿を・・・。

 カンガルー格闘王・・・、一体彼(?)は何者なのでしょうか。

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