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ちょっと年上の女の子  作者: らすく
第4章 遠征
258/326

これくらいが、丁度よい加減なのかも知れません。

 なんだかんだと色々ありました・・・・。

 お陰で午前中の練習は精神的に色々と不安定でしたが、プレー自体は好調なのでした。

 そして、お昼休みになりました。

 いつも通りにアカデミーの食堂で昼食を取ります。

 モグモグと食しながら、僕は午前中の練習をイメージしていました。

 心のどこかに、引っかかるものがあります。

 でもそれは意外とすぐに取れるものだったのです・・・・。

 そんなことは露知らず、僕はいつも通りに昼食を終え練習のコートの方に向かったのでした。


 例によって僕はコート付近のベンチに腰を掛けていました。

 このポジションが自分に取って、もっとも落ち着くようなのです。

 もうすでに午後の練習にスタンバイできている・・・・。

 この状態に自分は安心感を得ているのでしょうか・・・。

 でもこの安心感は、すぐに失われるのでした。

 ==== ワイワイ ガヤガヤ ====

 (ん?)

 何やら騒がしい様子なのです。

 それほど自分とは距離は離れていません。

 「あっ!」

 振り向くと、異変に気が付きました。

 何とそこには、進入禁止と思われるロープが張られていたのでした。

 そこでは弥次馬が群がっていたのでした。

 その中には見た顔が・・・。

 サニー、ヒートもいるのです。

 ・・・・そこでは一体何が行われているのでしょうか。

 そこでボクはベンチを立って、そお群衆の中に入り込んでいったのでした。

 そして後ろからヒョイと、覗き込んだのでした。

 果たして、そこにある光景とは・・・・。


 (なんと!)

 僕は驚愕しました。

 何故なら、そこでは自分の予想の遥か上を行く行為があったからなのです。

 そこには一人の男と一人の男(?)が、向き合っているのでした。

 二人(?)の周りにはカメラマン等、何かのスタッフらしき人たちがいるのです。

 あの指示を出している人は監督なのでしょうか。

 「ハイ!」

 監督らしき人の一声と共に、動き出したのでした。

 闘っています。

 この二人(?)は闘っているのです。

 それは誰かと答えたら・・・・。

 ==== うーーーー! ====

 世界のアクションスター ジャッカー・チン!!

 と、くると・・・、その相手は・・・・。

 あの日みた、あのカンガルー格闘王・・・・!

 二人(?)は拳と脚を、激しく交えています。

 ==== クッ! ハバッシッ! ====

 互いの肉体が打ち合う音が、辺りに響き渡ります。

 それを邪魔するものは誰もいません。

 彼らに干渉してはいけない事は、みんな分かっているようでした。

 ジャッカー・チンの10インチがパンチ、カンガルー格闘王のジャンピングキック・・・!

 各々の持てる力を駆使して、技を出していきます。

 その彼らの技は、とても美しい・・・。

 これは本当に相手に攻撃するための手段なのでしょうか・・・。

 まさに演舞・・・・。

 僕だけでなく、周りの皆もそう思っていたのではないでしょうか・・・。


 ==== ガッ! クワッ! ====

 それは激闘の均衡が崩れることを、物語っていたのでした。

 そして・・・・。

 ==== ズトーン! ====

 カンガルー格闘王は倒れたのでした。

 その様は、まるで仁王像が崩れ落ちるかの如くでした。

 (カ、カンガルー格闘王・・・。)

 もう彼(?)は眼を瞑っており、ピクリとも動きませんでした。

 そしてジャッカー・チンは、倒れているカンガルー格闘王に歩み寄りました。

 ジャッカー・チンの右手には、自分自身の上着が持たれていました。

 そして彼は、しゃがみ込む動作をしました。

 (まさか、それを・・・。)

 僕はゴクッと唾を飲み込みました。

 ==== パサッ ====

 (や、やはり・・・・!)

 倒れたカンガルー格闘王に、自分の上着をかけるジャッカー、チン。

 闘った相手に対して礼を尽くすのは、彼の主義らしいのです。

 そんな彼を見て、僕は感動を覚えました。

 でも・・・・、カンガルー格闘王は・・・・。

 そこで状況は急展開なのでした。

 ==== カーット!! ====

 パンパンと脚本で手を叩く、監督。

 その瞬間・・・・。

 ==== ピョコッ ====

 カンガルー格闘王は、飛び起きました。

 これは映画の撮影だったのでした・・・。

 そして速やかに、この場はスタッフにより撤収され、全く何事も無かったかのように元通りになったのでした。

 本当に台風が過ぎ去った後の様なのです。


 僕は納得がいきました。

 どうやらジャッカー・チンは昨日、カンガルー格闘王と撮影前の打ち合わせ(?)的なスパーリングをしていたのです。

 そうゆう訳で自分としては合点がいったところで、お昼休みは終わり再び練習が始まったのでした。

 今まで頭の片隅に、疑問が残っていたのかもしれません・・・。

 そしてその疑問が、解けたからかも知れません・・・。

 午前中以上に、自分の身体のキレが増した、と思われるのです。

 それは今の自分は正にジャッカー・チンの生まれ変わり(※本人はまだ生きています)ではないか、と思ってしまう程なのでした。

 「ハッ!」

 ますますボクは調子にのって来ます。

 でも調子が良い、と言うのは考えモノなのです。

 もはやその動きに対して、自分の身体能力の限界に迫ってきているのでは、と感じたそのときなのでした。

 ~~~ 無理をしないで。 ~~~

 (はっ)、久々の声がしました。

 その瞬間、僕の加速し続けた身体は滑らかに減速しました。

 これくらいが、丁度よい加減なのかも知れません。

 そして僕は、気が付いたのでした。

 自分のプレーに身体的にも、精神的にも余裕が出てきた、という事を。

 (有り難う。桜さん。)

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