これくらいが、丁度よい加減なのかも知れません。
なんだかんだと色々ありました・・・・。
お陰で午前中の練習は精神的に色々と不安定でしたが、プレー自体は好調なのでした。
そして、お昼休みになりました。
いつも通りにアカデミーの食堂で昼食を取ります。
モグモグと食しながら、僕は午前中の練習をイメージしていました。
心のどこかに、引っかかるものがあります。
でもそれは意外とすぐに取れるものだったのです・・・・。
そんなことは露知らず、僕はいつも通りに昼食を終え練習のコートの方に向かったのでした。
例によって僕はコート付近のベンチに腰を掛けていました。
このポジションが自分に取って、もっとも落ち着くようなのです。
もうすでに午後の練習にスタンバイできている・・・・。
この状態に自分は安心感を得ているのでしょうか・・・。
でもこの安心感は、すぐに失われるのでした。
==== ワイワイ ガヤガヤ ====
(ん?)
何やら騒がしい様子なのです。
それほど自分とは距離は離れていません。
「あっ!」
振り向くと、異変に気が付きました。
何とそこには、進入禁止と思われるロープが張られていたのでした。
そこでは弥次馬が群がっていたのでした。
その中には見た顔が・・・。
サニー、ヒートもいるのです。
・・・・そこでは一体何が行われているのでしょうか。
そこでボクはベンチを立って、そお群衆の中に入り込んでいったのでした。
そして後ろからヒョイと、覗き込んだのでした。
果たして、そこにある光景とは・・・・。
(なんと!)
僕は驚愕しました。
何故なら、そこでは自分の予想の遥か上を行く行為があったからなのです。
そこには一人の男と一人の男(?)が、向き合っているのでした。
二人(?)の周りにはカメラマン等、何かのスタッフらしき人たちがいるのです。
あの指示を出している人は監督なのでしょうか。
「ハイ!」
監督らしき人の一声と共に、動き出したのでした。
闘っています。
この二人(?)は闘っているのです。
それは誰かと答えたら・・・・。
==== うーーーー! ====
世界のアクションスター ジャッカー・チン!!
と、くると・・・、その相手は・・・・。
あの日みた、あのカンガルー格闘王・・・・!
二人(?)は拳と脚を、激しく交えています。
==== クッ! ハバッシッ! ====
互いの肉体が打ち合う音が、辺りに響き渡ります。
それを邪魔するものは誰もいません。
彼らに干渉してはいけない事は、みんな分かっているようでした。
ジャッカー・チンの10インチがパンチ、カンガルー格闘王のジャンピングキック・・・!
各々の持てる力を駆使して、技を出していきます。
その彼らの技は、とても美しい・・・。
これは本当に相手に攻撃するための手段なのでしょうか・・・。
まさに演舞・・・・。
僕だけでなく、周りの皆もそう思っていたのではないでしょうか・・・。
==== ガッ! クワッ! ====
それは激闘の均衡が崩れることを、物語っていたのでした。
そして・・・・。
==== ズトーン! ====
カンガルー格闘王は倒れたのでした。
その様は、まるで仁王像が崩れ落ちるかの如くでした。
(カ、カンガルー格闘王・・・。)
もう彼(?)は眼を瞑っており、ピクリとも動きませんでした。
そしてジャッカー・チンは、倒れているカンガルー格闘王に歩み寄りました。
ジャッカー・チンの右手には、自分自身の上着が持たれていました。
そして彼は、しゃがみ込む動作をしました。
(まさか、それを・・・。)
僕はゴクッと唾を飲み込みました。
==== パサッ ====
(や、やはり・・・・!)
倒れたカンガルー格闘王に、自分の上着をかけるジャッカー、チン。
闘った相手に対して礼を尽くすのは、彼の主義らしいのです。
そんな彼を見て、僕は感動を覚えました。
でも・・・・、カンガルー格闘王は・・・・。
そこで状況は急展開なのでした。
==== カーット!! ====
パンパンと脚本で手を叩く、監督。
その瞬間・・・・。
==== ピョコッ ====
カンガルー格闘王は、飛び起きました。
これは映画の撮影だったのでした・・・。
そして速やかに、この場はスタッフにより撤収され、全く何事も無かったかのように元通りになったのでした。
本当に台風が過ぎ去った後の様なのです。
僕は納得がいきました。
どうやらジャッカー・チンは昨日、カンガルー格闘王と撮影前の打ち合わせ(?)的なスパーリングをしていたのです。
そうゆう訳で自分としては合点がいったところで、お昼休みは終わり再び練習が始まったのでした。
今まで頭の片隅に、疑問が残っていたのかもしれません・・・。
そしてその疑問が、解けたからかも知れません・・・。
午前中以上に、自分の身体のキレが増した、と思われるのです。
それは今の自分は正にジャッカー・チンの生まれ変わり(※本人はまだ生きています)ではないか、と思ってしまう程なのでした。
「ハッ!」
ますますボクは調子にのって来ます。
でも調子が良い、と言うのは考えモノなのです。
もはやその動きに対して、自分の身体能力の限界に迫ってきているのでは、と感じたそのときなのでした。
~~~ 無理をしないで。 ~~~
(はっ)、久々の声がしました。
その瞬間、僕の加速し続けた身体は滑らかに減速しました。
これくらいが、丁度よい加減なのかも知れません。
そして僕は、気が付いたのでした。
自分のプレーに身体的にも、精神的にも余裕が出てきた、という事を。
(有り難う。桜さん。)




