「私はね。」
「はっ!」
気がつけば支配人と共に、別の男性が立っていました。
しかもこの男性を、僕達は知っています。
しかし、なんでこの人がここに・・・・。
「あ、このお方は御高名なアクションスターの・・・・・。」
そんな僕達の視線を察知してか、少々慌てた感じで支配人は隣の男性の紹介を始めました。
もっとも紹介されるまでもなく、この男性は誰もが知っている有名人なのですが・・・。
「とうさん・・・。」
呟く声が聞こえました。
それが誰なのかは、僕達は分かっていました。
そこにいるトロピとは別のもう一人の女性、サイ・九龍・・・・。
==== とうさん ====
僕の耳が確かに機能していれば間違いなく、そのように聞こえていたのです。
「サイ。」
その男性はサイに親しく、彼女の名前を呼びかけました。
という事は・・・・、二人は・・・・。
==== 親子 ====
そうなんですか、親子だったのですか・・・・・。
今までのモヤモヤが晴れ、僕の心の中は様々な意識で盛り上がっていました。
以前にニューヨーク行の旅客機に中で、隣にいた二人。
そしてこのメルボルンに到着直後に、二人でいるのを僕は目撃しました。
二人の間に、この様な強固な関係あったとは・・・。
アクションスターは素っ気なく、クルッと僕達に背を向け歩き出しました。
自分達一般人に対しては、必要以上に接触をしないのかも知れません。
「では、皆さん。」
支配人は僕達の方に向いて、軽く右手を挙げていました。
支配人は慌てて、このアクションスターの後を、ついて行ったのでした。
・・・・残された僕達は、それぞれに思うと所はあるのでしょう。
少しの間、沈黙が流れました。
それはボクにとっては、少しだけ心苦しいモノなのでした。
だからそれを打破しようと、自分としては考えたのでした。
「凄いなサイ。サイも凄いけど、まさか親がジャッカー・チンだったなんて。」
僕はサイに対して、率直な発言をしたのです。
でも・・・。
「凄くないよ・・・。」
そこで彼女は、何故か素っ気ない態度を取りました。
そしてサイは僕達の元から去って行ったのでした。
何か僕は、何かサイの気に障ることを言ったのでしょうか。
その様な事は、今の自分には分かるはずもありません。
解散したあと、僕たちは各々に夕食を取りました。
食事中、僕は本当にスッキリしない気持ちでした。
食後、僕はアカデミー内をフラフラと歩いていました。
それは正に何を求めているのか分からずに、何かを求めている状態なのでした。
ところがそれは、それほど時間がかからずに求めているモノは見つかったのです。
「おっ。」
そこに彼女はベンチに座り、1人で佇んでいたのでした。
彼女は僕の事を気が付いているのか、いないのか・・・・。
でもこれは自分に取っては、神様から与えらえた機会なのかも知れないのです。
見る前に飛べ、なのです。
僕は彼女の側に行きました。
「隣いいかな。」
「別にいいよ。」
その表情通りに、彼女の返事は素っ気ないモノなのでした。
それでも僕は、彼女の側に座りました。
「さっきはごめんよ。」
「なんで?」
「いや、気にさわることを言ったかな、って。」
「ああ、別にきにしてないよ。」
そう言って彼女は、一呼吸を起きました。
「本当の親子じゃないんだ。」
「え?」
それは自分に取って、思いもよらない彼女の発言なのです。
本当に今の彼女に、僕は話しかけても良かったのでしょうか・・・・。
でももう時すでに遅しなのです・・・。
「私はね。」
それからサイは、語り始めたのでした。
その内容に対して、僕は覚悟を決めていたのです。
「私は養女だよ。とうさんは、孤児だった私を引き取って育ててくれたんだ。」
「そうなんだ。」
そのサイの言いかたからして、彼女は養女である事をジャッカー、チンに対して引け目の様なものを感じているのかも、と自分としては伺えました。
でもだからと言って、そんなことをサイに直接聞くことなどはできるはずもありません。
それは触れるべきでは、ないと思うのです。
そう考えていると。
「じゃ。」
「ああ。」
素っ気なく彼女は、行ってしまったのです。
それでもわだかまりが解けたようで、自分としては満足でした。
何故かというと、サイは僕に背を向けつつも手を振ってくれていたからなのです。
そして自分のサイに対する見方は、変わったのでした。
少なくともサイは、その実力を持って女子テニスのトッププロに君臨しているのです。
そんな事を、今まで自分は忘れていたのでは、と思ったのでした。
そんな彼女の様にテニスの試合で身をたてる人に早くなりたい、と自分の心の中で誓うのでした。
今日の休日を終え、僕は寝床に就いていました。
それは楽しかったし、為になった、と思います。
だから明日からの練習には、身が入りそうです。
「グー。」
「ん?」
(なんだサニーか。)
サニーはイビキをかいているようすでしたが、それほど激しいものでもなかったので、すんなり僕は眠りに入ることができたのでした。




