第2章 譲らないテノール
おっさん4「な、なんだ?タコ墨みたいなのが、コイツの手から!!」
おっさん5「前が見えない!!」
太ったおっさん「見えないだけじゃない、体が重くて、手と足を動かすのがやっとだ!!」
6人のおっさん達は、墨汁を頭からぶっかけられたように、真っ黒に染まり、超スローな動きになった。ルーファスとキャサリンは、スルリと太ったおっさんとおっさん1の間をすり抜けて、振り返った。
魔王・ルーファス「お前らは約5分間、超スローな動きだ。5分経てば、動きと体の色は元に戻る。」
太ったおっさん「まさか、お前が魔法使いだったとは。油断したぜ。」
おっさん1「まさかお前は、女と手を繋いだまま戦えるというのか!!」
魔王・ルーファス「まあな。これが俺のファイトスタイルだ。」
おっさん2「なんて羨ましい戦い方なんだ!!俺達はおっさんどうしで吊るんで戦っているというのに!!」
太ったおっさん「金の分け前は半分ずつなのか?」
キャサリン「ルーファスは、お金なんかに興味がないの。ルーファスが欲しいのは、この世界だけ。」
太ったおっさん「なに!!世界だと!!そんなの欲しいなんて、想像もしたことなかったぜ。」
おっさん4「こいつは、とんでもない大きな男だ!!俺達みたいに、毎週ロトを買っている人種じゃねえ!!」
魔王・ルーファス「お前らは、そうやって話をして、5分経つのを待っているな。お前らの作戦はお見通しだ!!キャサリン!!」
キャサリン「ルーファス、ダークネス・スカイよ。」
太ったおっさん「待て!!待ってくれ!!俺達はあんたの完璧な強さに屈服したんだ。あんたみたいな、世界が欲しい男と話がしたくて。」
魔王・ルーファス「黙れ!!俺はそんなに甘い男じゃない!!ダークネス・スカイ!!」
6人のおっさんの頭上に、どす黒い雨雲が現れ、黒い雨が降り始めた。動きが超スローなおっさん達は、黒い雨にうたれ、ずぶ濡れになった。
太ったおっさん「黒墨の次は雨かよ。」
6人のおっさん達は、次々と仰向けに倒れて寝そべった。
おっさん2「ハアッハアッハアッハアッ苦しい、胸が苦しい。」
おっさん3「俺もだ。ハアッハアッハアッハアッ。」
ルーファスは、倒れている太ったおっさんの側により、屈んで質問をした。
魔王・ルーファス「質問に答えたら、お前だけ助けてやる。オカモトって奴はどこにいる?」
太ったおっさん「ハアッハアッハアッハアッ。オカモトさんは、ここからまっすぐ行って、右側にあるアパート、ダイアモンド・トューベにいる。ハアッハアッハアッハアッ。部屋番号は、104だ。ハアッハアッハアッハアッ。」
魔王・ルーファス「そうか、ありがとな。」
ルーファスは立ち上がり、太ったおっさんに背を向けて、キャサリンと仲良く手を繋いで歩き始めた。
太ったおっさん「おい!!おい!!助けてくれるんじゃなかったのか!!おい!!おい!!」
他の5人のおっさん達は、すでに死んでおり、身体中に黒い苔のような物が生えて、腐り始めていた。
太ったおっさん「うわああああ!!」
太ったおっさんの両手両足にも黒い苔のような物が生え、右手がポロリと腐って外れた。
太ったおっさん「うわああああ!!右手が!!ハアッハアッハアッハアッ。うわああああ!!」
キャサリン「ルーファス、ちゃんと約束は守らないと。」
魔王・ルーファス「約束を守る魔王なんていないだろ。」
キャサリン「フフフッあの太った男の叫び声、テノールってとこかしら。」
魔王・ルーファス「キャサリン、少し違うな。あの男の音程はバリトンだ。テノールよりもうワンランク下だ。」
キャサリン「違うわよ、あの男の音程はテノールよ。」
魔王・ルーファス「バリトンだ!!」
キャサリン「テノール!!」
魔王・ルーファス「ったく、分かった分かった。テノールな、テノール。」
キャサリン「そう。あの男の叫び声はテノール。」
ルーファスとキャサリンは仲良く手を繋いで、オカモトのいるアパートへと向かった。




