金曜日の夜
バサバサと、音が聞こえる青空をエルダが見ると、巨大なブルードラゴンと、それに乗った小さな可愛い少女の姿が見えた。
エルダ「え?あんな小さな女の子がドラゴン・ライダー?可愛い。」
村の広場で顎を地面に着けて、うつ伏せのままレッドドラゴン・ヴィクトリーが、テレパシーでエルダに話しかけた。
ヴィクトリー『エルダ、かつてはお前もあんな時期があったんだよ。あの純粋な瞳、毎晩、男を求めてbarに入り浸っているお前には、あの子の瞳をまともに見ることは出来まい。』
エルダ『うるさいわね!!さあ、役者は揃ったわ!!ヴィクトリー!!あのブルードラゴンをあなたの炎で燃やしてやりなさい!!あの女の子には燃えないように!!』
ヴィクトリー『無理!!そんな器用なことは、俺は出来ない、それに腹が減って、そんな体力はない!!』
エルダ『なに甘えたこと言ってるの!!ドラゴンといえば、街を襲って暴れたりするもんでしょ!!』
言い争いをしているエルダとヴィクトリーに、ユナが恐る恐る上空から、テレパシーで話しかけた。
ユナ『あの~、そのドラゴンさん、お腹が減ってるみたいなので、これから一緒に星海草原に星草を食べに行きませんか?』
ヴィクトリー『うむ、そうしよう。』
エルダ『ちょっと、何勝手に決めてるのよ!!』
ユナ『じゃあ、ついて来て下さい。』
ヴィクトリー『行くぞ、エルダ。』
エルダ『うわっちょっと!!』
ヴィクトリーは、エルダの体を右手で掴み、背中にヒョイと乗せた。そして、ブルードラゴン・ギズモの後について、飛び始めた。
エルダとヴィクトリーがいなくなり、キサラギは一人になって、なんか気まずい雰囲気になった。
キサラギ「うぅ・・・・なんか、居づらいわ。早くミヤモト、来いってえの!!」
キサラギは、広場の腰掛けベンチに移動して、20分ほど座って待っていると、何人かの村の男達と共に、ミヤモトがゆっくり雑談をしながら現れた。
キサラギ「やっと来たか。遅いぞ!!ミヤモト!!」
ミヤモト「ん?お前は、一刀流のキサラギか?」
キサラギ「そうだ、狂犬・ミヤモト、お前を斬りに来た!!」
ミヤモト「なぜ、お前は俺を斬ろうとするんだ?理由は?」
キサラギ「遠征軍のジャッカル団長に、お前を斬るように頼まれた。金ももらったし、お前を斬れば、俺の名が売れる!!」
ミヤモト「なるほど。調子に乗ってるな、キサラギ。お前の剣士としてのランクは、水曜日ぐらいだ。剣士最強ランク・金曜日の夜の俺には敵わない。」
キサラギ「ほざけ!!俺が金曜日の夜で、お前は月曜日の朝だ!!」
キサラギは、長剣・菊一文字宗則を腰から抜いた。ミヤモトは、名もないただの刀を2本腰から抜いて、両手に持って構えた。
キサラギ「ハハハハッなんだ、その刀は!!もう、この時点で勝負ありだろ。」
ミヤモト「弱い奴ほど、いい武器を装備するものよ。武器に頼らないと、攻撃力が上がらないからな。喰らえ!!十文字斬り!!」
ミヤモトは、素早くキサラギに駆け寄り、2本の刀で十字に斬りつけた。
キサラギ「クッいきなりかよ!!」
なんとか、菊一文字でキンキーンと弾いた。
ミヤモト「まだまだ!!2段斬り!!」
キサラギ「クッ連続攻撃か!!」
腹と右足を狙った2段斬りも、なんとかキサラギは、菊一文字でガードした。
キサラギ「ふう、興醒めだな。こんなショボい下級の技しか使えないとは。お前は剣士失格だ!!口だけ野郎だ!!」
ミヤモト「なんだと!!」
キサラギ「見せてやるよ、口だけ野郎!!お前程度に見せるのはもったいないが、冥土の土産に持って行け!!乱れ雪月花!!」
キサラギが菊一文字を上段に構えると、雪が散らつき始めた。
村人達「なんだ?今日はもう、クリスマスか?」
「おいおい、こたつを出すべきか?」
「年末ジャンボを買いに行かないと。」
ミヤモト「おいおい、この村に四季はないだろ。それにこの技は、超有名だ。見たことがある。」
ミヤモトは、余裕の表情で、両手に剣を構えた。




