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大好きな妻が亡くなった  作者: ゆき


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64日目 納骨式と心境の変化


9月3日(木)

午前5時半頃

夢を一杯見たが全く覚えていない。

1階に降りいつも通りのルーティンを済ませソファーに落ち着く。


午前8時

顔洗い身だしなみを整え黒い服に手を通す。

今日は妻の納骨式だ。

きちんと送り出したい。

持参物のチェックは事前に済ませている。


今日と言う日が妻との本当の区切りとなる。

妻に直接関わる最後の日だ。

兄さん夫婦も来てくれる。

お坊さまも来てもらえる。

何の問題も無い。

珍しく今のところウルッとは来ていない。

普段ならこう言う行事前は気持ちが不安になるものだが今は落ち着いている。


午前9時

さて、時間は早いが妻の納骨式へ行こう。


午前9時半

霊園到着

時間は早いが霊園受付に行く。

担当者の方から用意した物を出す様言われる。

まずは納骨費用3万3千円を払う。

次に埋葬許可証(契約の際もらった物)を渡す。

納骨代の領収書をもらい墓に備える仏花を渡す。

その際に花筒に飾る花束と妻の名が書いてある石の前に置いてもらう花を指定した。

妻の大好きなチョコ菓子を渡す。

最後に白木牌と過去帳も名移しの為預ける。

霊園関係者が備えをする為に係の者にそれらを渡していた。


兄夫婦も到着し仏花の追加をもらう。

加えてチョコ菓子も頂いた。

程なくしてお坊さまが霊園に入って来る。

挨拶とお布施代5万円とお車代1万円を渡した。

時間は少し早いが皆集まったので納骨式を始める様だ。


皆で移動し妻の墓前に行くと一通り飾り付けは済んでいた。

墓の前にお教を読む場が設けられており残りのセッティングを霊園関係者が行う。

妻の写真はスマホの遺影原画画像を使った。

霊園関係者により妻の遺骨は墓石の下へ置かれ墓誌(ぼし)は閉められた。


納骨式が始まる。


お坊さまのお教が読み上げられる。

両手を合わせ、妻への思いと極楽での幸せな生活を心より願った。


ムッチぃ〜そちらの生活はどうだい?

楽しくやっていますか

私は相変わらずムッチが居ないと恋しくてとても寂しいです

ムッチには幸せになってもらいたい

どうか極楽でお母さんと一緒にいつまでも幸せにお過ごしください

甘える事もあると思うけど話しを聞いてもらえたら嬉しいです

ムッチぃ〜大好きだよ


とても清々しい気分でお教が読まれている。

と、思っていたが…何だろうこの騒音は?

今更遅いのだが長い長いお教の最中に草刈機の音がけたたましく聞こえだす。

霊園関係者に言えばよかったと後悔するも皆手を合わせて動けない。

失敗したと思ったがお坊さんの声が大きく澄み切っていたので聞こえない文言は無かった。

まぁ良しとしお教に集中しよう。


お教の最後辺りで戒名と俗名が読み上げられた。

坊さま「…佐々木家ほにゃらら…」

ん?、えっ?

佐々木家???佐々木家ってなんだ?

他の名も呼ばれた感じで最後に自分の家名が読まれる。

えっ?何?何?佐々木って誰よ?


他者の名が入りちょっと不安になる。

これってお教でありなものなの?

多分このお坊さま間違えていないか?


お教も終わりお坊さまが「この方達も親戚なんですよね」の一言?

はぁぁぁ!

えっちょっと待ってこの方達って妻の前にある墓石に彫られた人達の事?

見ると佐々木なにがしと書いてある。

マジか…坊さまあなた間違っている!

いやまて、気を落ち着かせよう…


直ぐに私が「いえコレは永代墓なので他人様ですよ」と言うと坊さまはキョトンとした顔になり「あっ、あぁ最近はこう言う形状なんですね」と何とも素っ頓狂な事言う。

そこは先に伝えるべきだったが坊さまも聞くべきだしこちらとしては知っているものと思っていた。

妻はてっぺんの座で苦笑いしてそう。

そもそも素人の私らより知っておく事だと思うがコレどうなの?

坊さま「まぁきちんと供養されましたので…」笑い事の様に話す坊さまに何も言えなかった。

こちらも恨みは全くありません。

有耶無耶にならないだけ良かった。


最後に片付けをしている最中に妻の写真の前で急に物悲しくなり泣いてしまった。

これで妻と直接関わる全ての行事が終わった。

妻の人生物語が終焉を迎える。


やはり来るものがある。

とても疲れた…


帰り道、姉さんが「実はむっちゃん(むつみ)のお墓の近くにウチの墓があるんだよ」と聞かされた。

それはとても都合の良い事だ。

見ると一区画先の割と妻の墓の近くにその墓はあった。

そう言えば兄夫婦の紹介でこの墓を建てる事ができたんだよな

なので姉さん家の墓があるのも知っていたけどまさかこんな近所だったとは

と言う訳で姉さん家もお参りをする。

線香が余っていたので使ってもらおう。

立ち上がり様に目眩が襲う。

まただ最近特に酷い。

カッコが悪いので何とか立つ。


準備が整い手を合わす。


初めましてむつみの夫で〇〇と申します

そちらに妻と母が逝きましたので

どうか会ってもらえませんか

これからはご近所付き合いが出来そうです

妻と母をよろしくお願いします


あぁいいなー妻の周りには知り合いばかりじゃないかとても羨ましい。

良かったねムッチぃ〜


兄さん夫婦へ渡す物があるので霊園の待合室で待ってもらう事になった。

まず私は糖尿病なのでむつみに買った甘い菓子類をごっそり姉さんへ渡し、次にむつみが生前使うはずだった髪染めや義母の書類を渡した。

兄さんも席に着き私が書いた遺言書を渡す。

あくまで仮のものだ。

その際、兄から注文を受ける。

承諾し次回公証人とやり取りする際は反映する事を約束する。


その後も色々話した。

話も終わりお昼を誘われたがまだあまり食べられないので失礼と思い丁重にお断りした。

程なくし別れ霊園を後にする。

そう言えば割れる際に姉さんから妻の仏前に飾る高そうな花を頂いた。

妻が好きそうな色合いでとても綺麗だ。

きっと妻も喜ぶだろう。

ありがとうございます。


妻が生前使ったキャッシュカードの払い込みがあるのでコンビニに寄る。


午後1時頃

家に到着。

仏前に歩み寄り妻に今日の出来事を話す。

まぁ先程も妻に話した内容なのだが…

頂いた花を飾り霊園の書類や郵便物を机に置きソファーに横になる。


これで妻に直接関わる行事が全て終わった。

物悲しくもやり遂げた感じもある。

複雑な心境だがむつみにはやれる事の全てを出し切ってあげたと思う。

人が亡くなる事は相当な悲しみと労力とお金をこれでもかと言うぐらい消費する。

正直なところお金がここまで無くなるとは思わなかった。

領収書の無いお坊さまのお金も大きかった。

必要経費だが懐がとても寂しくなった。

妻ならきっとそこまでしなくて良かったのに…と言ったに違いない。

でも手をぬけば残された者、つまり私が罪悪感に呑まれるだろう。

これでいいこれで満足だ。


心境の変化

納骨式を終え気持ちにも少し変化が現れた。

自身の妻に対する気持ちは変わらないがほんの少しだが前向きになった気がする。

今までは不安に孤独、寂しさ、辛さ、痛みと平常心を装うも何処かに隠れていた。

だが今はそれが無い。

これは今日だけなのかもしれない。

とは言え妻が亡くなってから初めて経験する。

当然生前の楽しい日々はもう手に入らない。

でも晴天は無理でも雲間から光が射すぐらいは許してほしい。


ほんの少しの進歩だが嬉しくなった。

妻を忘れた訳ではない。

むしろ別れて分かる妻への愛情の深さ。

こんなにも妻を愛おしく思っていた自分が居た事を妻の他界で知る事になる。

今の夢は変わらない。

死んだら妻へ会いに行き抱き合うこと

自殺は考えてはいない。

でも死ぬ事が楽しく思える様になった。

そう、行き先が決まっているから

納骨式は妻が現世を断ち切る卒業でもある。

決して繋がりが無くなった訳ではない、旅立ちなのだと考える。

そして現世に居る私にも旅立ちなのだ。


死は逃れる事が出来ぬ誰にでも起きる事象。

遅かれ早かれ伴侶、家族、親しい友人との別れはある。

日々の生活に埋もれ人は誰も気にも止めない。

死は身近な筈なのに今の幸せにどっぷり浸かり気が付かないだけなのだ。


敢えて言おう愛する者たちの写真を撮ろう。

動画を撮り音声も残そう。

愛を綴り手紙を書こう。

日々手を握り抱き合い温もりを感じよう。

喧嘩はしてもその日に解決しよう。

お互いを労い愛を語ろう。


これらはきっと自分の助けになるはず。

後悔は先には立たない。

どうか分かってほしい現世の幸せは永遠ではない、一瞬で消える事もあると言うことを


最後に

むつみへ

正直、今でも辛いです

あなたの事を話すだけで未だに涙が止まらず胸の奥が締め付けられては苦しむ日々を過ごしています

でもあなたもそんな私を見て辛いのではないでしょうか

お互い愛深き故の自傷行為は辛いものです

それを止められるのは私だけ

何とか以前よりは一歩前に進めた気がします

気の長い歩みではありますがどうか見守っては頂けませんか

もっと成長しあなたに相応しい夫として是非あなたに会いたいです

死んだ後、あなたに会って抱き合い一杯現世の話しを聞かせたい

そして一緒に旅に出ませんか

凡ゆる宇宙を旅してあなたと過ごしたい

どうかそれまでは気長に待っていてください

よろしくお願いします

愛おしく大好きなむつみへ


ゆきより


まだまだ泣き虫な私だけど宣言したからには頑張るよ

「大好きな妻が亡くなった」はほんの一歩ですが前を向けるまでを語りました。

この一歩までがとても辛いものだったとこの日記を見た方なら感じたと思います。

僅か三日で体重が10kgは減る程の衝撃です。

未だに信じられませんが事実です。

さて、一歩を踏み出したとはいえ妻を亡くした悲しみは癒えた訳ではありません。

涙脆いダメ夫の日常はまだまだ続きます。

妻の死にどう向き合いどの様に対処して行くのか、またダメ夫の日常はどう変わって行くのか興味のある方は「大好きな妻と歩む道」を覗いてみてください。


続編「大好きな妻と歩む道」


「大好きな妻が亡くなった」を見て頂きありがとうございました。

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