44日目 お盆の奇跡
8月14日(金)
午前5時頃
雨音が聞こえる。
とても気分が滅入る中目を覚ます。
足は攣るもののそれ程でもない。
ぼーっと暗い室内を手探りで進み1階に降りる。
午前6時
朝食にもならぬ少食を済ませ昨日届いた妻関係の書類に目を通す。
揃える物と記入する物があるが内容が分かり難く後で書類先のオペレーターに聞く事にする。
ここのところ書類の数は減ったものの平日は保険会社や預金先の銀行から電話が掛かる様になってきた。
そのどれもが相続関係の部署からだ。
とても優しい対応を受けるがやはりまだ優しい言葉には免疫がなく直ぐに泣いてしまう。
事務的な対応をされてもそれはそれで気分が沈み気持ちも滅入るが優しい言葉も結構辛い。
自分で複雑な感情とは分かるがこればかりはどうにもならない様だ。
午前9時
妻が入っていた保険会社の年金部署に電話を掛ける。
相続関係の部署に電話を回され書類で分からない箇所を質問した。
私「えーと、ハイ、それでお願いします。」
担当「では、こちらは解約でこの部分に関しては名義変更の手続きを致します。」
私「あと、この箇所は何を記入すればいいですか?」
など多岐に亘って質問と回答を繰り返した。
その間、妻の事を聞かれブワッと泣き出したのは言うまでも無い。
妻の入っていた年金だからなのか解約で一括でもらうか月々決まった額を振り込んで(名義変更をして契約継続で)貰うか決めるらしい。
但し妻本人ならば月々の振り込みで貰う内容で問題はないが、妻本人が亡くなり遺族が引き継ぐ場合は貰える総額が決まっており結果一括だろうが月々であろうが尻は決まっているので振り込みを選ぶ理由が分からなかった。
他に義父が住んでいる火災・地震保険の契約もこの会社が引き受けているらしくそちらは継続にしてもらった。
どれが一番の得策か聞いてはみるも難しい内容を並べられ今の私の頭では理解出来なかった。
妻であればスラスラ分かる事も私には理解できない。
本当に解約で良かったのかも謎のまま話しは終わる。
この年金と別会社の年金、投資、定期がありそれで何とかウチは生活が成り立っていたのに全て解約した。
そうせざる終えないが今後を考えると不安でしかない。
午後2時頃
先程まで雨だったが曇り空に変わった。
だが天気は安定していない。
辺りは物凄く暗い。
洗濯を終えたがこれでは干せない。
仕方なく室内干しに切り替えた。
2階から窓越しに外の風景を眺める。
妻が生前よく眺めていた景色だ。
先程の一件と天気の悪さもあり無性に不安が込み上げて来るのが分かった。
停めどなく涙が溢れ鼻も出る。
2階のリビングでウロウロし出す。
ムッチぃ寂しいよ会いたいよ〜
不安と孤独が心を沈ませる。
堪らなく妻が恋しいしほんと苦しい…
2階の化粧台やデスクを見渡す。
見る物全てが妻の面影を感じる思い出の塊。
堪えきれず1階に降りる。
1階にある仏前の前で項垂れながら涙を流す。
暫くしてソファーに移動しそこでも項垂れる。
ムッチぃ恋しいよ…死にたい…
殆ど朦朧とした状態で目を瞑りソファーの肘掛けに手を置き俯いたままじっとする。
…!?
手に暖かみを感じる。
心地良い誰かに触られている様な感覚がある。
静かに目を開けその手を見ると1階の窓から陽が差し込んでいて肘掛けの自分の手にだけ光が当たっていた。
えっ、ムッチ?
慌ててバタバタと2階に上がり窓を開けベランダの手摺りまで来た。
あれだけ厚い雲だったのに一箇所だけ切れ目が出来ており私の居る地域だけ陽の光が差していた。
ムッチ?…ムッチだよね
来てくれたの?
またぽろぽろと涙が溢れだす。
すると爽やかな風が私の頬を撫でる様に流れるのが分かった。
あぁぁムッチーだ
ムッチが来てくれたー!
また風が頬を撫でる。
暫くその場に立ったままお日様と風を堪能する。
ありがとうムッチ…
どれだけ立って居たかも覚えていないが随分と堪能出来たと思う。
私は1階に戻る事にした。
1階に戻って窓を見るとまた厚い雲に覆われ雲の切れ間の跡さえ消えていた。
妻が私を見兼ねて来てくれたんだ。
奇跡が起きた。
〇〇ち(私字名)頑張って生きるんだよ!
いつも見守っているからね
って妻の口調できっと言っていると思う。
頬に当たる風は爽やかな涼しい風だった。
この時期に爽やかな風が吹いた。
例え雨降り後とは言えあの爽やかな風は妻が私の頬に触れたのだと信じたい。
全てが奇跡だった。
妻が亡くなって初めて妻を感じる事が出来た。
今こうして日記を付ける事で私は絶対妻を忘れる事は無いだろう。
最後に改めて
ムッチ、ありがとうございます。




