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大好きな妻が亡くなった  作者: ゆき


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0日目 妻の様子がおかしい

正直に言うと何も手をつけたくない自分がいる。

でも後悔をしたくはないので無理にでも始めようと思う。

この日記の目的は他界した妻 睦(むつみ)享年63歳に対して夫である幸(ゆき)62歳が(つまり私自身が)妻の死をどの様に受け止めどう向き合っていくのかを記録したものである。


四十九日を過ぎほんの気持ち程度だが自分を客観視出来る様になった。

当時の記憶を辿って妻に対する気持ちの向き合い方とその日の心情を日記と言う形で綴っていく。

ここ数10年、妻の写真や遺言も無い私にとって妻を忘れたく無いその一心から日記にならない殴り書きのメモを書いていた。

それを見直すととても苦痛で思い出す度に当時の辛さを運んで来る。

涙もろい私はまたそこでグズリだす。

でも妻を忘れたくはない。

日記としてきちんと残してあげたい。

そう思うのは今の私にとって自然の流れだと思う。


令和8年7月1日(水)

午後1時頃

寝たきりの義母光子の見舞いに行く。

妻の運転する車に乗り込み私も同乗する。

この10年以上彼女が運転する車に私は便乗し常に妻の用事、私の用事、家族の用事と彼女の運転する車で出掛けるのが日課であった。

週3日、時に4日の義父の面倒と週1日の義母がいる老人ホームにお見舞いが週の流れである。

しかし3週間前頃だったか義母の調子が悪くなり入院を余儀なくされた。

その頃から妻の無理が始まる。

そう毎日義母光子の見舞いに行くのだ。

見舞いだけの用事ならどうと言うことはないのだが義父の面倒後に顔中大汗をかきゼェゼェ言いながら車に乗り込み義母光子の元へ向かう。


この義父(98歳)の面倒と言うのが大変で頑固な性格な上に外部の協力、ヘルパーの要請やそれら施設の利用に老人ホームへの入居をことごとく断ってきた人物で結果娘である妻が世話をしないと生きてはいけない状況なのだ。

普段は人当たりも良く温厚な性格で家族思いの良い義父なのだが、自身の事となると話しは別な様である。

まず目が殆ど見えないので相当の不自由がある。

妻が父の居る実家に行くとトイレに上手く座れない事から排泄物が便器にこびりついておりその掃除から始まる。

当然通路も常に汚くなり掃除機と拭き掃除をしそのあとでお昼の用意、晩の食事を冷蔵庫に保持、また来れない時の為に日割りの分の食事も分かる様に冷蔵庫に並べる。

当然義父の家に行く際は食材、日用品の買い出しはそれなりに多くなり結構大荷物となる。

食事の支度のあとは汚くなった衣類の洗濯に干し作業をする。

汚さが半端無い物やシーツ類はコインランドリーに持って行く。

これが結構な大荷物になる。

お風呂に入りたがらない頑固な父と毎回の様に言い争い精神面も結構削られると言うスパイラル行事が続く。


私はと言うと庭の片付けが担当で長年育てたらしい菊の鉢が何千個と散らばっており加えて雑草と半端なく生い茂る木々や壊れ物の回収などが仕事となる。

最近では空いたスペースを生かし家庭菜園もできる様になって来た。

まぁ片付けるのに1年は掛かってやっとだ。

それでもまだまだ何かしらの散らかり物はある。

まだまだ家の事でやる事があるが書ききれないので止めておく。


夏の暑さが増した頃からか妻はよく顔だけ汗をかく様になった。

あまりに見てられなくなった私は毎日母の見舞いに行く必要があるのか聞いた事がある。

妻を心配して言ったのだが彼女は少しムッとした顔で「私が好きでやりたい事なのなので好きにやらせて!」と声を張った。

まぁ彼女にも思うところがあるのだろう。

義母はボケが進行して寝たきりになりその後食べられなくなった事で胃ろうの処置に踏み切った。

そのまま胃ろうをしなければ衰弱死は免れない。

医者に言われるがままその場で判断したのは妻である。

それを判断出来る人間はずっと世話をしていた義母の娘であり私の妻であるむつみしかいないのだ。

当然生きるであろう胃ろうの処置は義母の身体にも大きな負担が掛かる。

今回義母が入院したのは吐血によって胃ろうのあり方に問題が生じたからであった。

多分責任を感じていたのではないだろうか

私としては妻に休んでもらいたいと思っているのだが彼女は母親に夢中の様だ。

但し今日は義父の面倒が無いのでお見舞いのみだ。


お見舞い後、夕飯の買い物を終え家路に着く。


午後6時頃

妻が珍しく牛丼を作ってくれた。

牛丼の他に色々なおかずが並びウチの夕飯はいつも賑やかだ。

妻の大好きなアニメ映画が始まる。

画面を前にいつもの様に「いただきまーす」をしてむつみ特性の牛丼を頬張る。

とても美味しい!

コレ牛丼屋より凄い美味しいと彼女に言うととても喜んでくれた。

時折微笑みながら映画を鑑賞し食事をする。


30分経った頃だろうかそれは始まった。

妻がいきなり胸が痛いと言い出し「ブラのホックを外して」と言ったので私は慌ててホックを外してあげる。

手を口にあて妻はトイレに走りだし嘔吐した。

なんだ!どうした!私は焦った。

妻の背中を摩り状況が読み込めない私はあたふたしつつもむつみにどうしたのか聞いてみた。

彼女は分からないとだけ言う。

何度か嘔吐すると「ちょっと横になる」と寝室のある2階に上がって行く。

パニックっている私はタオルと何故か患部を冷やすジェルパックを2階の寝室に持って行った。

すると彼女は寝室にあるゴミ箱にまた嘔吐していた。

不安になり介抱するも物凄く調子が悪いのが分かった。

私は「救急車を呼ぶ?救急病院へ行こうか?」と彼女に言う。

車を運転する自信はないが今はそんな状況ではい。

彼女は少し間をおいて「たぶん牛丼に入れたニンニクに当たったんだと思う。もし明日も調子悪い様なら連れて行って」そう言うと布団に横になった。

顔中汗びっしょりだったのでタオルで拭いてあげる。

その間1階に戻り麦茶を水筒に入れてむつみの元へ持って行った。

何度か吹き出した汗を拭いていると彼女は目をつぶって寝の体制になったので私は寝かせてあげようと思い電気を消し1階のリビングに降りることにした。

途中だった食事を片付けむつみが毎日入るお風呂の釜を洗いお風呂の用意をしてあげた。

お風呂にお湯を張った頃に妻が1階に降りてきた。

私は彼女にお風呂に入るか聞いてみた。

うつむき加減で彼女は「入らない」と一言だけ発すると寝まきに着替え出した。

「調子悪いので寝るね」と言うとまた2階の寝室に上がってく

私としては今の状態で安心は出来なかったが寝ることで元気を取り戻せるならとそのまま寝かせる事にした。

水分補給とトイレをしに2度程降りてきたが彼女からのその場での声掛けはなかった。

私は大丈夫なのか聞いてみたが返事はしたが聞き取れず2階に戻ってく。

心配だったが自分で歩けているし吐き気もだいぶ治った様なので少しホッとした。


時間も時間だし私も寝に入る事にする。

寝室に行くと右手を下に丸まる様に横になっている妻がいる。

静かに寝ている様だ。

心配だった私は寝ていたむつみに触ってみた。

すると彼女が起きてしまい私の手に触れる。

毎日のスキンシップだが今日は様子見だ。

無事のようだ。

無事なのを確かめ私は寝に入った。

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