第10話 1.学園祭:手動列車コンテスト
――朝の鐘が、鉄と風の音を混ぜて鳴り響いた。
学園最大の祭典、**「鉄道祭」**が幕を開ける。
アカデミー・オブ・レールの構内は、すでに熱気の渦。
線路を模した通りには屋台が立ち並び、焼きトウモロコシの香ばしい匂いが漂う。
芝生の上では蒸気模型が煙を吐き、鉄道模型部の展示ブースには人だかりができていた。
そして中央広場には――巨大な特設レーン。
「手動列車運転コンテスト」用の直線コースが、朝日を受けてきらめいている。
リリアナ「……これ、教育的にはどんな意義が?」
悠真「“鉄道の心”を思い出すための儀式らしい。最初の鉄道は、人が押してたんだとさ。」
リリアナは手帳を開いたまま、やや呆れたように眉をひそめた。
「つまり、“原始的実践演習”ってことですか?」
「まあ、そうとも言うな。魔導機関も、最初は誰かの汗で動いたんだ。」
悠真の視線の先、学生たちが自作の車両を押しながらウォーミングアップしている。
魔導補助は禁止――純粋な人力でレールを駆け抜ける。
そのシンプルさこそが、この学園伝統の競技を熱狂的にしていた。
掲示板には審査項目が大書されている。
〔審査基準〕
・速度
・安定性
・運送目的の美しさ(=どんな“想い”を運ぶか)
リリアナはペン先で項目を指した。
「……最後の一行、曖昧すぎません?」
悠真は笑って肩をすくめる。
「だからいいんだよ。想いを測るメーターなんて、どこにもないだろ?」
風が吹き抜ける。
学園旗がたなびき、スタートベルの音が遠くで鳴った。
――鉄道祭、開幕。
レールの上に、人の夢と笑い声が走り始めた。




