3. 解決:未来図面による時間復旧
――静寂の中、悠真は腰のツールホルダーから銀色の筒を取り出した。
細工の施された筒の表面には、淡い光の回路が刻まれている。
「出番だな、魔導CAD(構築式未来投影図面)。」
筒が展開されると、半透明の設計図面が宙に浮かび上がる。
幾何学的な線が交錯し、そこに“まだ存在しない路線”が描かれていく。
リリアナが息をのむ。
「それは……未来投影用の設計機器。まさか、それで――」
「そうだ。」悠真は真っ直ぐに答えた。
「レールは時間を束ねる道。だから、設計図は“未来の証明書”なんだ。」
彼の指が図面を走るたびに、光が地面に落ちていく。
床のタイルが反応し、淡い線が学園全体に広がっていった。
まるで未来の路線が、現実の上に重なっていくように。
リリアナはすぐに補助魔法を展開し、悠真の描く線を安定化させる。
二人の力が重なり、光の路線が校舎全体を包み込んだ。
――眩い閃光。
レールが再び繋がる音が響く。
時計塔の針が、静かに“前”へと回り始める。
壁に浮かぶ教員名簿には、消えていた二人の名が戻っていた。
過去と現在の重なりが、ゆっくりと解けていく。
世界が、“今”を取り戻していく――。
リリアナは呆然と立ち尽くしたまま、息を飲む。
「あなた……図面で時間を修正したんですか!?」
悠真はツールを閉じ、微笑んだ。
「仕様書は、未来への約束だからな。」
床にへたり込んだアルノが、涙目で土下座した。
「せ、先生っ……ご、ごめんなさいっ! 僕、もう二度と過去には行きません!!」
悠真は肩をすくめ、苦笑しながら彼の頭に手を置く。
「行くなとは言わねぇ。ただ――切符は“乗るため”のものだ。逃げるためじゃない。」
そして、柔らかく言葉を結んだ。
「時間もまた、ちゃんと“進む”ためにあるんだ。」
窓の外、朝日が昇る。
新しい一日の光が、再びアカデミー・オブ・レールを照らしていた。




