第7話生徒たちのカオスな日常 1. 鉄道学園の日常、始まる
朝。
アカデミー・オブ・レールの鐘楼から、汽笛のような高音が鳴り響いた。
――ピィーーッ! シュボォォォッ……!
その音が合図。
寮の窓が一斉に開き、生徒たちが跳ね起きる。
「遅延は恥!」と叫びながら制服に袖を通し、次々と廊下へ飛び出していった。
悠真は、まだ寝ぼけ眼のリリアナと一緒に校舎へ向かう途中だった。
空気は澄み、朝の蒸気の匂いが鼻をくすぐる。
だが、すぐに彼は悟る――ここは普通の学園じゃない。
「……おい、リリアナ。あれ、見ろ。」
廊下を走り抜けていくのは、生徒ではなく――自走式トロッコ。
誰も乗っていないのに、勝手にレールの上をカタカタ進み、曲がり角で勢いよくブレーキを鳴らす。
ガガッ! キィィィーーーッ!!
すぐそばでは、空中に浮かぶ“列車模型”がぐるぐる回っていた。
操縦桿を握った少年が、必死に叫んでいる。
「こ、ここでカーブ進入角度五度修正っ……! あっ、脱線したぁぁぁぁ!」
模型が爆発的にスパークし、教師らしき人が魔法消火器を構える。
そして食堂の前では、なぜかエプロン姿の女子たちが集会を開いていた。
横断幕には《新・駅弁献立総会》の文字。
彼女たちは弁当箱を掲げ、真剣な顔で言い合っている。
「次は“夜行列車カレー弁当”を再現するべきです!」
「いや、“雪国味噌かつ弁当”こそ伝統の味ですわ!」
「駅ごとに特色を出さないと文化が廃れますのよ!」
……どこから突っ込めばいいのか分からない。
悠真は肩をすくめ、ため息をついた。
悠真「うん、線路の上じゃなくても暴走するんだな、ここ。」
リリアナ「……平和というより、制御不能ですね。」
朝陽が昇る。
汽笛が鳴る。
こうして、“鉄道の心”を学ぶ一日が――また始まった。




