【C.:図面誤解事件】
場面:鉄道ギルド支部・応接室。
石造りの部屋に差し込む光が、まるで審問の場のような厳粛さを漂わせている。
リリアナと数名のギルド員が、悠真を取り囲むように座っていた。
中央のテーブルには分厚い「信仰路線図」が鎮座し、まるで裁判の証拠品のよう。
リリアナ「――それで。あなたは“鉄路再建”の具体的な構造を理解していると?」
悠真「もちろん。口で説明するより、見せた方が早いですね。」
そう言って悠真は、腰のポーチから銀色の装置を取り出した。
手のひらサイズの端末。
表面には魔法刻印のような細い光の線が走っている。
リリアナ(心の声)
「……っ! 未知の魔導器!? まさか、異端の儀式道具……!」
悠真はスイッチを軽く押した。
すると、端末から淡い青の光が広がり、宙に線が描かれ始める。
キュイイイイイ……ッ。
緻密な“路線図”が、まるで生き物のように空中に展開されていく。
悠真「まず、このルートを基幹にして――勾配を0.5%以内に調整します。
トンネルはここに……」
リリアナ「ま、魔法陣が拡がっている!? 封印呪術か!?」
その叫びと同時に――
ドガァァン!!
周囲のギルド員たちが一斉に飛びのいた。
誰かが「避難だぁぁぁ!」と叫び、書類が宙を舞う。
奥の修道員が祝詞を唱え、受付嬢がロウソクを逆に持って祈る。
悠真「ちょっ、ちょっと待って!? これ呪術じゃない! 設計CADですよ! CAD!!」
リリアナ「“キャド”……!? 何語ですか!? 呪文ですか!? “カドゥ”に似ています、“破滅”を意味する古語に!」
悠真「違う! “Computer Aided Design”の略です! って言っても伝わらないですよねぇぇぇぇ!!」
混乱の渦の中、リリアナは杖を構え、緊張の面持ちで悠真を指さした。
リリアナ「停止命令! 光の魔法陣を収束しなさい!」
悠真「だからこれ設計図ですって!!」
10分後――。
煙のような魔力の残滓が消え、宙に浮かぶ光の図形がただの線路図だと判明。
沈黙。
リリアナの頬が、ほんのり赤い。
ギルド員たちはこっそり戻ってきて、書類を拾い直している。
リリアナ「……つまり。これは“封印”でも“召喚”でもなく、“構造説明”だったと?」
悠真「はい。ただの設計データです。」
リリアナ「……紛らわしすぎます。」
悠真「そっちの理解が物騒すぎるんですよ。」
リリアナ「……異端者の道具は、神秘に似すぎています。」
悠真「いや、技術が神秘なんですよ。」
リリアナ「…………っ」
また、沈黙。
そしてリリアナの瞳に、ほんの少しの興味の色が宿る。
リリアナ「……あなた、ただの“鉄の虜”ではなさそうですね。」
悠真「いや、虜で合ってます。」
リリアナ「訂正を求めます。」
悠真「はい、鉄の愛人でもいいです。」
リリアナ「表現が悪化してます!!!」




