死神からのプレゼント
「ショウジ様、大丈夫でしたか?」
「うん、丸呑みされたけどなんとかなったよ」
「丸呑み……ですか」
「《結界》ごとパクリ、ってね。ソフィアのおかげで助かったよ」
「ショウジ食べられちゃって情けなかった」
「あれには流石に驚いたです」
ジャイアントサーペントという隔てていたものがなくなった事で、男の治療の為に避難していたシェリーと合流していた。シェリーに戦闘の内容を伝えたが注意されてしまう。
「ショウジ様、攻撃に夢中になって防御を疎かにするとは迂闊過ぎます」
「ごもっともです。ごめんなさい」
その後もシェリーの小言は続き、終わった頃には焚き木も燃え尽きて身体も十分温まっていた。そろそろ攻略を再開しないと日が暮れてしまう。思っていたより22層で時間を取られてしまい、今日はもうホワイトゲートから外に出て帰る事にした。
「そろそろ俺達は帰りますね」
「おう、助かったわ。また会ったらその時はよろしくな!俺達はもう少しミノタウロスを倒していくわ。ジャイアントサーペントも暫くは出てこないだろうからな」
「分かりました。ではまた」
別れを告げて俺達はその場を離れた。ジャイアントサーペントを倒したおかげで暫くは安心してミノタウロスと戦えるとの事で、男達は出来る限りミノタウロスと戦ってから帰るらしい。
俺達は帰る為にホワイトゲートを目指し、ホールから伸びている通路を進んだ。道中で遭遇したミノタウロスも処理速度優先で倒すが、ホールから離れれば離れるほどその数が増えていった。ホールで倒したのが新しく補充されたのか、もしくはジャイアントサーペントや急激に冷やされた中央部から逃げてきたのかもしれない。そういった思いがけないミノタウロス達との戦いもあり、更に時間が消化されていったのだった。
「そういえば、彼らの名前とか話を聞く予定だったのに聞かずに帰ってきちゃったな」
ジャイアントサーペントを倒した後話を聞くという事になっていたが、寒過ぎてそれどころではなかったし、それに合わせてすっかり忘れてしまっていた。それに向こうの両手剣使いも俺達が帰る話をしても、あっさりと別れを告げるだけで何も聞いてこなかった。
「リーダーの名前までは聞いてませんが、鋼鉄の旅団というのが彼らのパーティー名だそうです」
シェリーは避難している時に軽く自己紹介をしていたみたいで、相手のパーティー名を知っていた。
「鋼鉄の旅団かあ、確かにみんな重そうな鎧を装備してたね。22層に来ていたくらいだから結構強いパーティーだよね」
「ええ、パーティーに同じ中級の冒険者が居るのは間違いないでしょう」
それであればまたダンジョンで会いそうだ。その時はちゃんと自己紹介をしよう。
ようやくホワイトゲートまで辿り着き、ダンジョンの外に出た時には周囲は暗くなり始めていた。いつもの気分で3層を連続で攻略して23層に行っていたら遅くなる所だった。これからは1日2層のペースが良いかもしれない。それだけモンスターが手強くなっている証拠だろう。
街に帰る途中で拾得物を確認していたアペルが何かを見つけたようで俺達に知らせてきた。
「ジョージ、なんか色々手に入れてたみたいです」
アペルが《道具》から取り出してそれを俺達に見せる。アペルの手の上にはボロボロの布と鈍く光る刃物が乗っていた。
「死神のボロマントとデスサイズの刃だそうです」
俺も《鑑定》して確かめたが名前からしてグリムリーパーから手に入れた物みたいだ。死神のボロマントはそのまま装備品で装備をすると装備した者に《隠蔽》の能力を与えるみたいだ。《隠蔽》の能力は敵から認識され難くなるらしい。それとデスサイズの刃は見るからに装備の材料になる事だろう。デスサイズの刃を使って装備屋のおっちゃんに新しい装備を作ってもらう事になりそうだ。剣とかが出来ればいいけどやっぱり鎌になるのだろうか。
「これはしーちゃんにあげるです」
「良いんですか?」
「一番これを使った方が良いのはしーちゃんです」
死神のボロマントをシェリーに差し出す。確かにこの中で《隠蔽》が一番役立つのは後衛のシェリーだろう。《隠蔽》があればモンスターから狙われ難くなりそうだ。
「確かに武術系のスキルがないシェリーが持っていた方が良いかもね。狙われなくなればその分俺達の負担も減るんじゃないかな」
「そうですね。それではありがたく使わせて頂きます」
シェリーが死神のボロマントを受け取るとそれを収納した。流石に見た目がボロボロだし、装備するのはダンジョンだけだろう。
「さてと、今日はどのお店に行く?」
街に辿り着き、どこの店で食事をしようか考えていたので聞いてみた。
「今日は屋敷に帰りましょう」
少し気になったがシェリーがそう言うからには何かあるのだろう。外食は諦めて大人しく屋敷に帰って食事をしよう。代わりに海の食材を沢山使ってくれるそうだから許す事にしたのだった。




