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丸呑み

「囲まれたな」


 両手剣使いの男が嘆く。中央で待機していたのは失敗だった。ジャイアントサーペントしか居ないのだが、その巨体故に俺達を中心にとぐろを巻かれ、完全に退路も断たれた感じだ。だが代わりにどこに向かって攻撃しても、そこにはジャイアントサーペントの胴体がある為、攻撃はしやすいのがまだありがたかった。


 しかし、このままだと中央まで少しずつ迫られ、最終的には巻き付かれる可能性がある。それをされると身動きの取れる場所も減り続けていく為、早急に倒さなければいけない。


「このままだとマズイな。お前ら行くぞ!」


 両手剣使いも同じ答えに辿り着いたのだろう。仲間と一緒に突撃していく。


「俺達も行こう!」


 纏めて狙われないように、俺達は別方向の胴体目掛けて突撃した。背後からジャイアントサーペントの頭部が襲ってこないか気にしつつ、全力で攻撃を加えていった。それでも俺やアペルは獲物が長いので、それなりに深いダメージを与えられていたが、ソフィアは短剣の為かジャイアントサーペントの巨大さもあって、浅い傷しか与えられなかった。


 攻撃を受けたジャイアントサーペントが頭を持ち上げ、どちらを襲うか選んでいるかのように俺達を眺めながら舌をチロチロと出していた。


「アイスランス!!」


 そこへソフィアの短剣での攻撃があまり通らなく、魔力を増幅させた《アイスランス》がジャイアントサーペントの胴体を貫いた。ジャイアントサーペントがその痛みに大きく身体をしならせるが、突き刺さった部分を持ち上げて氷の槍から身体を取り除くと、ジャイアントサーペントのその視線は完全に俺達に向いていた。


 ジャイアントサーペントがバネのように頭を弾き出し、俺達に喰らい付こうとその巨大な口を開く。俺達はその場を飛び退き回避するが、ジャイアントサーペントは《アイスランス》を放ったのがソフィアだと分かっているみたいで、ソフィアを追いかけて距離を詰めていった。


「よし、向こうのパーティーが引き付けているうちに俺達は全力で攻撃だ!」


「了解っす!」


「よしきた!」


 共闘しているパーティーの男達がジャイアントサーペントの胴体へ連続で技を繰り出していく。結構ダメージが入ったように見えたが、それでもジャイアントサーペントは執拗にソフィアを追いかけていた。


 ソフィアが引き付けてくれている中、俺とアペルもジャイアントサーペントに連続で攻撃を仕掛ける。《クロスインパクト》に《メテオラスラッシュ》を喰らわせ、《フレイムブレス》に《フェイタルブロウ》と出来る限りの技と魔法を撃ち込んでいった。


「ショウジ!そっちいった!」


 ソフィアの声に振り向くと目の前までジャイアントサーペントの口が迫ってきていた。マズイ、ちょっと調子に乗って攻撃をし過ぎて、ジャイアントサーペントの怒りの矛先がこちらに移ったらしい。とっさに《結界》を展開するが、ジャイアントサーペントが俺を《結界》ごと喰らい付いて丸呑みにしていった。


「ショウジ!」


「ショージ!」


 ソフィアとアペルが俺を呼ぶ声が聞こえる。胃に辿り着く前に《スチールワイヤー》を使って食道から先に進まないようにはした。これで胃液によって溶かされる事は避けれたが、ここから先をどうしよう。よくある話だと飲み込まれた内側から攻撃して倒すっていうのがあるが、《結界》を展開していると内側から攻撃出来ないんだよね。とりあえず無事な事を《念話》で伝える事にする。


『ソフィアにアペルもとりあえず俺は《結界》で無事。それで内側からなんとか出来ないか考え中』


『そう、良かった。それなら気付かれないようにこっちは時間を稼ぐ』


『大丈夫だと思ってましたが、びっくりしたです』


『そういやこいつ蛇だから、冷やしたら動きが遅くなるんじゃない?』


 蛇は変温動物だから周りの気温に左右される。気温が下がれば蛇の体温も下がって動けなくなるはずだ。


『分かった、やってみる。』


「アペル、ちょっとその蛇引き付けといて」


「任せるです。メテオラスラッシュ!!」


 アペルが《メテオラスラッシュ》を繰り出してジャイアントサーペントの意識を自分に向かせようとしているみたいだ。その間にソフィアは何をしようとしているのだろうが、どうやってジャイアントサーペントの体温を奪うのだろう。《アイスランス》で氷を増やして気温自体を下げるのか、それとも水をかけて気化させて熱を奪うのか。《ホワイトブリザード》も効果的だろう。やり方はいくつかあるだろうが見れないのが残念だ。


「アブソリュートゼロ!」


 ソフィアが魔法を唱える声が聞こえた瞬間、ジャイアントサーペントの中にまで冷気が襲ってきた。俺はジャイアントサーペントの牙にくっ付けた《スチールワイヤー》を短くしていき、食道から口の中まで戻って外へ出た。ジャイアントサーペントから脱出したは良いが、ホールの中は先ほどまで居た体内より更に冷え切っていて、ジャイアントサーペントは氷漬けとまではいかないが完全に行動を停止していたのだった。


「何だこの魔法!?一瞬でジャイアントサーペントを倒しちまった!」


 まだ灰になっていないから完全に倒した訳ではないが、ジャイアントサーペントは動けないから倒したも同然か。それにしても《アブソリュートゼロ》か。前にサンドゴーレムで使っていたけど一瞬で水を氷に変えていた。周囲の熱を奪う魔法なのだろうが、アペルがジャイアントサーペントを引き付けている間に魔力を増幅させて使ったのだろう。この巨大な相手から熱を奪い尽くすなんてとんでもない威力だった。


 寒さを我慢してジャイアントサーペントの頭部を粉々に斬り刻むと、ジャイアントサーペントは灰になって消えていった。それを確認するとすぐに俺は《道具》からいくつか枝を取り出し、《着火》を使って燃やし始めたのだった。

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