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ジャイアントサーペント

 ミノタウロスを倒しつつ進んでいくと巨大な空間が広がる空洞に辿り着いた。その空洞には普段は1体か2体で行動しているはずのミノタウロスが集まってしまっているみたいで、見える範囲で10体を軽く超えていた。


「ここはこの層の中心部のホールですね。ジャイアントサーペントに遭遇したらここに逃げ込むらしいのですが、今はミノタウロスが集まり過ぎて危険ですね。念の為、掃除しておきましょう」


 先にジャイアントサーペントに出会い、このホールまで逃げ込んでいたら地獄を見る所だった。殲滅優先の指示を出し、ソフィアには魔力循環を使用してもらいミノタウロスを一撃で仕留められるようにしてもらう。増幅している間に俺とアペルがホールに居るミノタウロスを遠距離から攻撃して、ミノタウロスを通路まで連れ込んで集団から切り離し、少しずつ倒していった。


 ようやくホールのミノタウロスを一掃して綺麗になった。一息つきたい所だが、ホールに繋がるどれかの通路から微かに叫び声が聞こえてきた。それは次第に大きくなり、やがてはっきりと聞こえるまでになった。しかし、反響してどの通路からその悲鳴が聞こえてくるのかが分からない。俺達は臨戦態勢でホールの中央で円形に陣取り、各方向から何が来てもすぐに動けるようにした。


 ようやく俺の《探知》に反応が出現した。俺の右方向、シェリーの正面からかなりのスピードで5人が近付いてきていた。そしてそれを追うようにして近付いてくるモンスターの反応が1体あった。たぶん5人のパーティーがまっすぐこちらに逃げてきている事から察するに、ジャイアントサーペントと出会してしまったのだろう。


「シェリーの正面の方向から5人のパーティーが逃げてくるよ。多分ジャイアントサーペントに追いかけられているんだと思う」


 説明が終わると同時に、通路からホールに飛び込んでくる5人のパーティーが姿を現した。


「ジャイアントサーペントが来るぞおおお!!」


「すまないがそこのパーティー、手を貸してくれないか!?」


 他にも様々な言葉が飛び交っていたが、俺が聞き取れたのは2つくらいで、やはり追いかけてきているモンスターがジャイアントサーペントである事と、手を貸して欲しいという事だった。5人のうちの1人はぐったりとしていて、パーティーの中でも一番大柄な男に抱えられながら運ばれてきた。


 大柄の男は俺達の傍を通り過ぎ、自分達が出てきた通路とは反対側のホールの端まで避難していった。そして他の男達3人が俺達の居るホールの中央に残り、リーダーらしき両手剣使いが俺達に事情を説明してくる。


「回復系の魔法を使える人が居たら、仲間の手当てをお願いしたいんだが大丈夫か?」


「分かりました。シェリー、あの抱えられてた人の手当てをお願い」


「お任せください」


 そう言ってシェリーが治療をする為に怪我人の所へ向かっていった。


「すまん、恩にきる。とりあえず話はジャイアントサーペントがもう来ちまうからその後だ。お前達も下がってな」


「分かりました」


「ショウジ、私もジャイアントサーペントと戦いたい。駄目?」


 それはどうだろう。交渉次第だが、相手パーティーの頼みを聞いて、こちらは協力をしたのだから、俺達の希望も通しやすいとは思う。


「すいません、出来ればジャイアントサーペントと戦うのも手伝わせてもらっても良いですか?」


「手伝ってくれるならこっちも願ってもない事だが、良いのか?」


「うちのパーティーメンバーが戦いたいらしいので、是非協力させてください」


「それなら頼む」


 思っていたよりあっさり許可が出た。逆にお願いされるような始末だ。俺達から言い出さなければ治療の手伝いだけで、外野からジャイアントサーペントとの戦闘を見守る事も出来たのだろうが、せっかくこのホールを綺麗にしたのだから戦えるなら戦いたい。ボスとはなかなか出会う機会も少ないし、何よりソフィアが戦いたいらしいから仕方がない。これで完全にグリムリーパーの事は忘れてくれるだろう。


 ジャイアントサーペントと戦うのは俺とソフィアとアペルの他に、向こうのパーティーの構成はリーダーっぽい両手剣使いの男、杖を持っている魔法使いだと思われる痩せ細った男、小柄で短剣と盾を所持している男の3人だった。


 シェリーや大柄の男達は倒れていた人が復活したら戦線に復帰してくるだろう。


 そしてとうとう俺達の前にジャイアントサーペントがその姿を現した。通路全体を覆い尽くすくらいの巨大な頭部が見え、頭が通路から出てからもまだ通路から身体が絶えず出てくる。それはホールの中央の俺達をを囲むようにしてとぐろを巻いていき、ホールを次第に埋め尽くしていった。


 ジャイアントサーペントの身体によって完全にシェリー達と寸断されてしまい、囲まれた俺達は逃げ場を失ったのだった。

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