能力付与
物事はそう上手くいかないものだ。正直砕け散るとは思っていなかったのでダガーで試しておいて良かった。しかし何で壊れてしまったのだろう。《装備作成》や《精錬》に関しては成功率があるが、《能力付与》に関してはその表示はなかった。となると成功率ではないと思う。他に考えられる原因は装備自体の耐久値だろうか。装備類は耐久値がなくなると壊れてしまう。メンテナンスなどで回復したりは出来るが、それも少量しか回復しない。
今気付いたが俺が装備していた血玉髄の指輪がいつの間にかなくなっていた。タランドーさん達も言っていたが、血玉髄の指輪は元々耐久値が低いので、それがなくなり壊れてしまったのだろう。《結界》の能力の付いた装備であれば弱い攻撃は無効化出来るが、それ以上の攻撃はそのまま通ってしまう。その事から考えると最近受けたダメージはゴブリンアーチャーの罠しかない。きっと罠を喰らった時に耐久値もごっそりと減ってしまったのだろう。新しいブラットストーンで作った血玉髄の指輪を取り出して装備した。
失敗したのはやはり耐久値の問題が大きいかもしれない。もしくは相性か何かか。ソフィアの翠玉のスティレットならエメラルドも付いているし《風魔術》を付与出来るのではないだろうか。俺はソフィアに《能力付与》をしてみるか相談した。
「嫌。失敗したら壊れる」
先ほどの散っていったダガーを思い出したのか拒否されてしまった。確かにある程度は確実性がないと博打過ぎる。耐久値の問題だとしたら上位魔術は失敗だったかもしれない。俺は余っている他のダガーに、今度は《炎魔術》ではなく《火魔術》で《能力付与》を試みた。すると今度は成功したようで、ダガーが火の属性を纏い、刀身も熱を宿すように赤く染まっていた。ダガーを《鑑定》してみると名称も変わっていてファイヤダガーとなっていた。
出来たばかりのファイヤダガーで次に現れたレイスに斬り掛かってみると、無効化される事なくレイスにダメージを与える事に成功した。物理攻撃でも属性が付いた装備であれば、無効化はされないみたいだった。
それを見たソフィアが蒼玉のウォータースティレットを構えてレイスへと挑んでいき、シェリーはアペルが相変わらずくっ付いたまま離れず動けないが、遠距離から魔法を使ってレイスを葬っていった。
レイス達を倒し先へ進むと、次に現れたのは骸骨のモンスター達だった。スケルトンソルジャーが2体、スケルトンアーチャー、スケルトンメイジで合計4体の構成だった。
スケルトンソルジャーは盾と片手剣を持ち《剣術》がレベル最大の10で、スケルトンアーチャーは《弓術》が同じくレベル10、スケルトンメイジは《闇魔術》がレベル10だった。ゴブリン三銃士に比べると機動力、罠、魔法の多彩さがなくなる分まだ良いが、こちらはアペルが全くもって戦力にならない。シェリーの援護がなんとか貰えるだろうが、ほぼソフィアと2人で戦わなくてはならない状態だ。
「手前の2体は私がやる」
ソフィアは予想通りスケルトンソルジャー2体との接近戦がご所望のようだ。そうすると俺の相手は後衛のスケルトンアーチャーとスケルトンメイジだ。
「了解。奥の2体は任された」
俺がスケルトンアーチャーとスケルトンメイジに《ファイヤジャベリン》を放ち、その間にソフィアが突撃する。ソフィアがスケルトンソルジャー斬り掛かり、もう1体を《ウォータープリズン》で閉じ込めた。俺はその隙にスケルトンソルジャー達を通り抜けて後衛の2体に接近する。
スケルトンアーチャーとスケルトンメイジから《ドライストレイフィング》と《イビルファング》が放たれ襲ってくるが、後ろのソフィアに矢が流れないように《結界》の前面を下向きの斜めに展開して叩き落しながら突き進んだ。全ての攻撃を叩き落した所で《結界》を解き、ダークネスダガーを両方に目掛けて《投擲》する。スケルトンアーチャーがそれを避けるが、スケルトンメイジは回避出来ずに直撃だった。ダークネスダガーの直撃で怯んだ隙に、手前に居るスケルトンアーチャーの懐に入ってツインエッジを横薙ぎに振るった。真っ二つに切断したスケルトンアーチャーが灰になるのを確認せずにそのままスケルトンメイジに突っ込む。
スケルトンメイジが目前に迫った所でスケルトンメイジの足元から黒い刃が飛び出してきた。それをツインエッジで受け止めつつバックステップで一旦間合いを取る。スケルトンメイジが使ってきたのは《シャドウエッジ》で、影からいきなり刃が飛びだしてくる厄介な魔法だ。俺は再びダークネスダガーを取り出し《投擲》でスケルトンメイジを狙う。今度はスケルトンメイジがダークネスダガーを回避するが、こちらも複数投げたダークネスダガーの間に《スチールワイヤー》を張り巡らせ済みだ。鋼線はスケルトンメイジの骨の身体ごと寸断しバラバラにしていった。
ソフィアの方を確認するとそっちも無事に終わったようで、丁度スケルトンソルジャーが灰になっていく所だった。




