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廃墟

 21層の廃墟の中を俺達は歩いていた。《光明》でもって周囲を照らすが、周囲は光のない暗闇が広がっていた。俺は《暗視》で問題なく見えるのだが、他の3人はそうはいかないだろう。もし今後も夜の時間帯のフィールドが出てくるようならば、他の皆にも《暗視》を手に入れてもらったほうが良いかもしれない。《光明》で周りを照らすのは良いが、モンスター達にも俺達が居る事がバレバレだ。


「こういったフィールドだったら、出現するモンスターは幽霊とかゾンビ系って相場が決まっているよね」


「ひぃっ!」


 この状況で出てきそうなモンスターの話をしたら、すぐ後ろで微かな悲鳴が聞こえた。周囲に警戒しつつ後ろを振り向くと、アペルがシェリーにしがみ付きながらガタガタと震えていた。最初はシェリーにくっ付きたいから、怖がっているフリをしているものかと思っていたのだが、これは本気で怖がっている。もし本当にモンスターがそっち系だったなら、この層でアペルに戦力として期待するのは無理かもしれない。


「アペルは幽霊とかゾンビとか、もしかして駄目だったりする?」


「嫌です、無理です、怖いです!」


 アペルが盛大に首を振りながら答えた。うん、本当に駄目みたいだ。


「すいません、ショウジ様。あーちゃんは昔あの馬鹿兄のせいで、幽霊とかゾンビとか苦手になってしまったみたいでして」


 シェリーが説明してくれたが、昔ガベルが悪戯でアペルを驚かして、アペルの反応を見て楽しんでいたらしいのだが、調子に乗ってそれがエスカレートしていき、お化けの変装とかまでして驚かし始め、それがアペルのトラウマになってしまったというのだ。


 何を仕出かしてくれているんだ、あの兄貴は。いくら妹が可愛くて構いたいからって、普通トラウマになるまでやらないだろう。全くシェリーがガベルを足蹴にする気持ちが良く分かるな。


「21層は主にレイスという幽霊のモンスターが出ます。廃墟の壁などをすり抜けるらしく、物理攻撃も効かないらしいです。それ以外にも数は多くないですが、何種類か出るみたいです」


 21層のフィールドマップも冒険者の心得(中級編)に載っていたらしく、シェリーがモンスターの情報も教えてくれる。アペルはそれを聞いて更に震えていたが、俺達はシェリーの指示に従って進んでいった。そろそろモンスターと遭遇しても良さそうなのだが、《探知》にも反応がなく、まだ近くには居ないみたいだなと思っていると、目の前で廃墟の壁をすり抜けるようにして、黒いフード付きのマントを羽織ったモンスターが飛び出てきた。俺はとっさに《結界》を展開して身を守る。


「ぎゃー!出たです、怖いです、しーちゃあああん!」


 目の前のモンスターが飛び出してきた事より、後ろに居たアペルの絶叫の方に驚いてしまった。《鑑定》してみるとそれがレイスみたいで、黒いフードの中では白骨の髑髏がこちらを伺っていた。マントから下は何もなく空中に浮いていて、より幽霊っぽい感じを醸し出していた。スキルではないが俺の装備セットの《漆黒狼の寵愛》と同じような特殊能力《霊体》というものを取得しているみたいで、これが物理無効の効果を与えているみたいだった。更には《探知》にも反応しなかったのもこれのせいかもしれない。


「本当に壁をすり抜けてきたね。しかも《探知》にも全く反応がなかったよ」


「物理無効の効果ですね。まさか《探知》も効かないとは、そこまで本には記載がされていなかったですね。あーちゃん、怖がらなくても今の所は《結界》でこちらに攻撃も出来ないみたいですし大丈夫ですよ」


 流石に《探知》も幽霊相手には駄目か。《霊体》なだけあって《結界》を通る事は出来ないみたいで、レイスは外側でこちらの様子を伺っていた。物理攻撃は無効にされるみたいだから魔法で応戦するしかない。


 ソフィアが《結界》から飛び出し、レイスに《アイスランス》を放つ。幽霊だからか空中にふわふわと緩慢に浮遊するレイスが、突如地面から突き上げられた氷の槍によって貫かれていく。物理無効を気にしなければ正直弱かった。


 レイスを無事に倒して灰になっていったのは良いが、流石は魔法といえば良いのだろうか、《アイスランス》の氷自体は物理っぽいのにレイスに当たっていた。当たったのは魔法で作られた物質だからだろうか、それとも普通の物質でも魔力が込められていれば当たるのか。前者だったら魔法で戦うしかないが、後者だった場合は《霊体》持ちの相手に対応策が増える。


 試しに何か物に魔力を込められないかと考えていると、そういえば俺には《能力付与》があった。これで適当なダガーに魔法を《能力付与》出来るか試してみよう。ダガーに《能力付与》を使用すると、ウィンドウの中には俺が所持している各属性の魔法も選べた。


 これは新発見だ。まさかここで魔法を《能力付与》したら属性剣みたいな事が出来るのだろうか。いや、ちゃんと良く考えていれば出来るという答えには辿り着いていたはずだ。アクセサリーの防具に《神聖魔術》の《結界》を《能力付与》したのだ。他の魔法だって出来ない訳がない。


 試しにダガーに《炎魔術》を《能力付与》してみると、ダガーはスキルを使用した瞬間に砕け散っていった。見事に俺の期待が裏切られた瞬間だった。

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