空振り
翌日、俺達は20層にやってきていた。シェリーの教えてくれた通り20層は山のフィールドで、出現するのはマーダーグリズリーという熊のモンスターだった。
マーダーグリズリーはスキルの所持はなく、手前で出てきたコボルド達に比べたらステータスが高めなだけだ。一番レベルの低いシェリーなら危ないかもしれないが、俺達がフォローすれば問題ない。
20層は守護者と戦わなくてはいけないから、あまり人が居ないかと思っていたのだがそんな事はなく、山のフィールドのあちこちに冒険者達の姿が伺えた。
悪いとは思ったが、マーダーグリズリーと戦っている冒険者達を《鑑定》してどのくらい強いのか確認させてもらった。レベル自体は俺たちより低く、ステータスも比例して低かった。スキルはもちろん圧倒的に俺達より少ない。それでも上位スキルまでは取れているみたいで、人数もそのパーティーは7人も居て、マーダーグリズリー4体相手にに遅れを取る事はなかった。向こうは7人でこちらは4人だが、それでも戦ったらなんとか互角くらいには戦えそうだ。他のパーティーも観察するが、総合力では同じくらいの力量だった。となると最終目標の守護者も問題なく倒せると考えて良さそうだ。
目的の守護者のいるホワイトゲートへ向かう。他の階層よりはパーティーが少なく、道中にもマーダーグリズリーと遭遇する事が度々あった。それらのマーダーグリズリーはソフィアとアペルが処理していき、俺は念の為にシェリーの護衛をしていた。それでも4体のマーダーグリズリーを2人だけで処理出来るのだから、これから先もう少し敵の数が多くなってもなんとかなりそうだ。だが階層がある程度増えていく度に、敵の数も増えていっている。より深い階層に行く為には更なるパーティーメンバーが必要になるかもしれないが、それは必要になった時に考えよう。
シェリーの案内によって最短のルートで目的地を目指す。ホワイトゲートも視界に入り、間近に迫ってきていた。見渡しても周囲に人は居なく、守護者と戦う事になるのを避けているのだろう。
いつもであればホワイトゲートにある程度近付いたら、ホワイトゲートに《結界》が張られ、魔法陣が現れてそこから守護者が出てくるはずなのだが、全く何も起こらずにホワイトゲートの目の前まで辿り着いてしまった。
「あれ、いつもなら守護者が出てくるはずなんだけどな。ここ20層であってるよね?」
「20層のはずだけど、何で守護者出てこないの?」
「何がなんだか分からないです」
「恐らくは守護者が他の冒険者によって討伐されたのでしょう。再度出現するまではある程度の時間が必要なはずです」
何だって。そういえば10層の守護者に挑戦する前に、プリメラさんから説明を受けたような。確か1日経たないと再出現しないとか、そんな事を聞いたような覚えがある。それはどの守護者でも同じなのだろうか。
「そういえば1日経たないと戦えないみたいな事をプリメラさんに聞いた覚えがあるよ」
「え、それ本当?」
「多分。シェリー、正確にはどのくらいか分かる?」
「少々お待ちください。今調べます」
シェリーが冒険者の心得(下級編)を取り出して、ページをパラパラと捲っていき目的の記述を探す。俺も空いた時間を見つけて読まないとな。あ、でもアペルにあげちゃったんだ。今度冒険者ギルドに行った時にでも新しいの買わないと。
「ありました。20層の守護者は1日ではなく18時間らしいですね。名称はジャイアントポイズンスネークと言うらしいです。これはまた厄介なモンスターみたいで、血液自体にも毒があるらしく、返り血を浴びるとそれから毒を摂取してしまうらしいですね。近接で戦う冒険者は解毒が出来る魔法かアイテムが必須になるそうです」
「それはまた厄介なモンスターだね。でも再出現まで18時間とは10層の守護者に比べたら短いけど、それでも結構長いね。残念ながら今日は難しそうかな」
「えー、楽しみにしていたのに」
出ないものは仕方がない。ホワイトゲートから離れて守護者が現れないくらいの距離を取り、早めの休憩をとる事にした。いつ倒されたか分からないけど、休憩が終わって守護者が出現すればラッキーだ。しかし休憩が終わった後、ホワイトゲートに近付いても守護者が出現する事はなかった。
「解毒のアイテムを沢山持って、明日もまた20層に来よう」
守護者と戦えずに不貞腐れ気味のソフィアに声を掛けた。戦えるまで機嫌が直らないかもしれないと思いつつ、ホワイトゲートに入り転送先に21層を選ぶ。
21層に転送され視界にまず映ったのは真っ暗なフィールドだった。《暗視》ですぐに視界がはっきりするが、初めて見るフィールドだった。街並みのようだけど崩壊している家がほとんどで、所謂廃墟というやつだ。皆にも見えるように《光明》で辺りを照らす。
今までは視界が確保された明るいフィールドしか出てこなかったが、20層を超えたからだろうか初めて夜のフィールドというものに遭遇したのだった。




