お返し
さて、残る敵はゴブリン三銃士のゴブリンライダー、ゴブリンハンター、ゴブリンウィザードと雑魚だけだ。もちろんゴブリンハンターは俺の獲物だ。この後きっちりと罠のお礼をさせてもらうつもりだ。
ゴブリンハンターは空から降ってきた俺達に気付くと、構えていた弓を俺に向けて矢を放ってきた。それを回避して斬り落とし、ゴブリンハンターと対峙する。周辺には予想通り罠はなさそうだった。味方に罠が作動しないように身近な所には設置しなかったのだろう。一緒にその場に居たゴブリンウィザードも魔法を放とうとするが、着地と同時に間合いを詰めていったアペルの《シールドチャージ》によって吹き飛ばされていった。アペルが吹き飛んでいったゴブリンウィザードを追撃するべく追いかけていく。
ソフィアはゴブリンライダーと戦う為に、煙幕に《ウィンドストーム》を放ち視界を晴らすと、再び軽く魔力増幅をして《アースシールド》を地面すれすれに伸ばしていった。罠地帯を越えると《アースシールド》から飛び降りてゴブリンライダーの所へ向かっていく。ゴブリンライダーも本陣が奇襲された事に気付いて戻ってきている所だったが、ソフィアがそれを阻止する。
シェリーにはあらかじめ雑魚どもをの殲滅をお願いしておいたので、ソフィアと一緒に戻っていった。そして罠地帯を越えた先で切断用の《スチールワイヤー》を間に張り巡らせた《ロックバレット》をいくつも放った。《ロックバレット》が直撃したゴブリンソーサラーは灰になって消えていく。運良く《ロックバレット》を回避出来たゴブリン達も、それらの間に張り巡らされた《スチールワイヤー》によって切断されていった。
俺はそれらの光景を視界の端で捕らえながらゴブリンハンターを見据えていた。ゴブリンハンターも弓を構えつつ俺の挙動を見逃さないよう注視している。俺は全力をもってゴブリンハンターとの間合いを詰めに行くが、次の瞬間ゴブリンハンターから《ドライシューティング》が放たれた。矢が真っ直ぐに俺の脳天目掛けて向かってくるが、俺は更に姿勢を深く沈めて踏み込み加速した。3本の矢が立て続けに俺の頭の上を通り過ぎていく。飛び込むようにしてゴブリンハンターの懐に潜り込み、旋回しながら左右のダークネスダガーをゴブリンハンターの腕目掛けて振るった。ボトリとゴブリンハンターの腕が弓を握ったまま地面に落ち、続けてゴブリンハンターの絶叫が聞こえてくる。
ゴブリンクイーンは既に倒したので、誰もゴブリンハンターに治療を行えず、ゴブリンハンターも既に戦意を失っていた。これでお礼はした。同じような苦痛を与えられたので、後は楽にしてあげた。ゴブリンハンターが灰になり消えていく。
その後はソフィアの作った道を使い、罠地帯の外側へ行った。落としていたツインエッジを回収する為だ。もしかしたらゴブリンハンターを倒したから罠も効力を失っている可能性があったが、罠地帯に足を踏み入れるのは気が引けた。流石にあんな痛い思いをもう一度は体験したくない。落ちていたツインエッジを無事見付けて、ダークネスダガーを収納しツインエッジに持ち替える。
周りの様子を見るとアペルもゴブリンウィザードを倒し終わったみたいで《アースシールド》を渡ってこちらに向かってきていた。ソフィア達の方もゴブリンライダーを倒し、他のゴブリン達も居なくなっていた。
隠れていたりしなければこれでゴブリン達は全滅したはずだ。暫くすると視界にウィンドウが現れ、そのウィンドウにはダンジョンがクリアされましたと表示されていた。そしてそこには選択肢があり、ダンジョンコアを残して戻るか、ダンジョンコアを破壊し入手して戻るかの二択だった。前者を選ぶとダンジョンは消えずに再び入れるようになる。後者は高価なダンジョンコアを手に入れる代わりにダンジョンが消滅してしまう。このあたりの事はプリメラさんに説明は受けていたが、俺は後者を選んで外に出た。
ダンジョンの外に出た後まずブラックゲートを確認するが、今まで洞窟だと思っていた所はただの岩壁になっていた。完全にダンジョンは消滅したという事で間違いなさそうだ。なくなったからには次からはティーリアの南にあるダンジョンに通うことになるだろう。
「ダンジョンの入り口なくなっちゃったね」
「どうやらゴブリンキングがここの迷宮主だったみたいだね。街の南にもダンジョンがあるからダンジョンコアは破壊して入手したよ」
「ダンジョン攻略完了です」
「南のダンジョンは50層くらいまでは確認されているはずです。それより先は攻略が停滞しているそうですが、そこまで辿り着くまでまだまだ先は長そうですね」
長いようで短かったが、これで1つのダンジョンの攻略が済んだのだ。一応冒険者ギルドにも報告しておかなくてはいけないだろう。街に着いたら装備屋でシェリーとアペルの装備を買い換えて、その後で冒険者ギルドまで向かおう。そう思いつつティーリアへの帰路につくのであった。




