奇襲
《レッグホールドトラップ》に捕らえられた俺は身動きが取れず、ゴブリンハンターの放った《ドライシューティング》と、ゴブリンウィザードの放った《ファイヤジャベリン》を回避する事が出来ずにいた。足に持たされる激痛によって魔法を使うことも出来ず、ツインエッジも激痛が走った時に落としてしまっている。それらが俺に着弾する間際、爆煙の中から現れたアペルが俺の前に立ちはだかった。
「ジョージさん大丈夫です!?」
アペルがそれぞれの攻撃を盾で受け止め、俺の足に食い付いていた罠を剣で破壊した。俺が自由になると剣を持っている右手で俺を抱え込み、その場を離脱してシェリーの所へ向かった。
ゴブリンハンターとゴブリンウィザードは逃さないと追撃をしてくるが、それらはことごとくアペルの盾によって防がれた。
「ショウジ様!すぐに治療致します!」
シェリーの居る場所まで下がった所で、ようやく《治癒》を掛けてもらって復活する。しかしツインエッジは回収出来ずにいた。代わりにダークネスダガーを両手に構える。
「ありがとう2人とも、あの罠スキルに嵌ったらヤバい。痛みで集中出来なくて魔法が使えなかった」
罠があった所はゴブリンハンターからおよそ10メートルくらい離れた位置だった。それより内側はまず罠があると思っていい。問題は射程がそれより外側にも設置可能だった場合どこまでいけるかだ。
ゴブリンキングの咆哮が響き渡り、数を減らしたゴブリン達が再び補充される。やはりゴブリンキングをなんとかするしかないのだが、ゴブリンハンターの罠が邪魔で近づけない。遠距離から狙撃するにしても、前回の《投擲》みたいに撃ち落とされるのが目に見える。
現状から攻略法は地上の罠をどうにかして近付くか、いかに撃ち落とされないように遠距離攻撃を叩き込むかのどちらか。だがソフィアの魔力循環で撃ち出す強力な魔法の一撃も、ここからでは相手の本陣までは届かないだろう。
いっそ空でも飛べたら楽に近付けるのに……と思った所で閃いてしまった。前にも飛んだというより跳んだ事があった。これなら罠地帯を抜けて相手の懐まで潜り込めるだろう。更にはゴブリンハンター達に撃ち落とそうと狙われても、楽に迎撃が出来るじゃないか。
「ソフィア!一旦集合!」
ソフィアがゴブリンライダーとの戦闘を止め、撤退して帰ってくる。そして今思い付いた作戦を皆に伝えた。
「分かった。それじゃ準備するけど、着地は大丈夫?」
「任せろ!今度は大丈夫だ」
ソフィアが魔力を循環させて増幅させていく。集中できるように《結界》で守りつつ、俺達はある程度魔力が増幅されるまでの時間稼ぎをしなくてはならない。突撃してくるゴブリンナイトや、ゴブリンアーチャーとゴブリンソーサラーから放たれる矢や魔法を防ぎつつも、ゴブリン達を範囲魔法で蹴散らしていく。それらの中をようやくソフィアから開放されたゴブリンライダーが持ち味の機動性を生かして攻撃してきた。
ゴブリンライダーの狙いはシェリーだ。後衛が狙えるならばそれを狙うのがセオリーだろう。だがシェリーは左右に一回り大きめの《アースシールド》を出現させ、その間を太めの《スチールワイヤー》で自分を包み込むように張り巡らせた。ゴブリンライダーの振り下ろした剣は鋼鉄の糸に阻まれシェリーまで届かない。そしてシェリーの放つ《ウィンドカッター》が糸の隙間を縫うように放たれてゴブリンライダーを襲う。ゴブリンライダーがバックステップをしてそれを回避しようとするが、全てを避ける事は出来ずにいくつかの傷を負わせた。これで機動力も多少落ちるだろう。
倒すと《召喚》されるだろうし、深手でも撤退されて《回復魔術》で復活してくる。軽い傷をいくつも負わせて体力を落として戦闘力を奪っていくほうが利口だ。《回復魔術》も万能じゃなく離れれば離れるほど効力が落ちる為、他の魔法と同じでこの距離ならまず届かない。それにゴブリンライダーにはこの後の突撃で邪魔されない為にもなるべくこちら側に引き止めておきたい。
遠くにいるゴブリンキングはたまに《召喚》をしてゴブリン達を補充するがそれだけだ。傍にいるゴブリンクイーン、ゴブリンハンター、ゴブリンウィザードは今の所こちらに何もしてこない。ゴブリンハンターめ、今に見ていろ。必ず罠のお礼はたっぷりしてやるからな。
「そろそろいける」
「よし!アペルは作戦通り《エクスプロージョン》で一掃しながら煙幕を!」
アペルが指示通り《エクスプロージョン》を辺り一帯に放ちゴブリン達を蹴散らしていく。そしてソフィアが魔法の詠唱をし、今まで増幅させてきた魔力を使用した《アースシールド》を発動させた。周囲の地面が勢い良く斜めに隆起し、俺達を乗せたままゴブリンキングの方へと伸びていく。煙幕の上を通り越し上からゴブリンキング達が一望できた。ゴブリンハンターやゴブリンウィザードが煙幕の方を狙って構えていた。準備をしている所申し訳ないが同じ手を使うわけがないだろう。俺達は上空からゴブリン達を奇襲する為、そこから飛び降りた。
降下してゴブリンキング達にどんどん近付いていく。意識が煙幕にいっているせいか全く俺達に気付かない。上からの奇襲は難なく成功してソフィアがゴブリンキングを、アペルがゴブリンクイーンを屠る。俺とシェリーは《スチールワイヤー》の調整に集中していた。地面に墜落しないようバンジージャンプのように弾力を持たせ、伸びきった所で切り離し上手い具合に地上に着地した。




