模擬戦の結末
「それじゃ今度はこっちから行かせてもらおうかな」
「うん、分かった」
ソフィアが俺の挙動を見逃さないように集中している。俺は全速力で間合いを詰めて右のツインエッジで左下から逆袈裟斬りに《スラッシュ》を放つ。それをソフィアはギリギリで回避してカウンターを狙ってくるが、それを左のツインエッジで弾いた後にバックステップしてダークネスダガーを4本《投擲》する。もちろん切断目的ではなく、拘束用に太めの《スチールワイヤー》を張り巡らせてだ。この太さでこの近距離なら切断すると事も避ける事も出来まい。
「ウォーターボール!!」
ソフィアは俺の《投擲》したダークネスダガーに《ウォーターボール》を当て、ダークネスダガーの1つの勢いを殺した。さらに水の抵抗によりそこを支点に《スチールワイヤー》で連結された他のダークネスダガーごと強引に軌道を曲げ、それらをサイドステップで回避した。
サイドステップから一気に間合いを詰められ斬り結ぶが、ソフィアはまだ《双剣術》を取得していない為か、左右の攻撃の連携がどこかぎこちなく、俺は次々と繰り出される2本のスティレットをツインエッジで対処していく。そして次第に攻防が入れ替わり俺が攻撃を繰り出すのをソフィアが懸命に防御する形になっていた。
「グラビティフィールド!!」
今の俺優勢の状態から追い打ちを掛けるようで申し訳ないが、先程のお返しだ。ソフィアは重力の影響を受けて動きが鈍くなり、更に俺の攻めを受けきる事が出来ずに一旦距離を取ろうとする。だがそうはさせない。ソフィアのバックステップに合わせて俺も前に出て距離を取らせない。
「ウォータースプラッシュ!!」
ソフィアが俺が距離を取らせないために前に出たのを見るや、《ウォータースプラッシュ》を放ってきた。水の散弾が目の前の広範囲に現れ、これらを避ける事は出来ないだろう。俺は《結界》を円錐状に展開してそれらを受け流した。
今まで俺が使った《結界》は無意識に使っていたせいか、カーブを描いた球面だった。だがこの模擬戦場の《結界》は四角く平面に囲まれていて、そこから《結界》は大きさ以外にも形状を変えられるのではないかと思ったのだ。今回はそれを試して形状変化させてみたが上手くいった。
水の散弾を潜り抜け、ソフィアに立て直す時間を与えず追撃する。超重力の影響下では俺の動きについてこれずに、徐々にソフィアの身体には傷が増えていった。このまま攻めても決め手に欠け、ソフィアの傷が増えていくだけだ。ソフィアが負けを認められるように致命傷にならず、かつ決定打になりそうな攻撃をしなければならない。
「アクアウェイブ!!」
水の散弾の次は巨大な波が襲ってきた。これは正直どうしようもない。手持ちの魔法でこれを完全に防げるものが思い浮かばない。せめてもの悪足搔きだが《結界》とその外側に追加で、《アースシールド》で俺を囲い込むように複数展開してやり過ごすしかなかった。複数展開した《アースシールド》も《アクアウェイブ》に飲み込まれ崩壊してく。
「ウォータープリズン!!」
ソフィアの魔法が続けざまに放たれる。これは不味い。今は《結界》に守られているが、その外側は水の檻があり身動きが取れなくなっている。《アクアウェイブ》の大量の水も消え去り、空中に浮かぶ水の檻に捉えられた俺を、ソフィアがニヤリと笑いを浮かべて見つめる。
やられっぱなしだった所を形勢逆転出来たのがうれしいみたいだ。だが残念だけどそれ偽物なんだよね。《アクアウェイブ》から《アースシールド》で周りを囲んだ時に《採掘》で穴を掘りそこに隠れたのだ。もちろん《アースシールド》で蓋をしておいた。では今現在空中で捕まっている俺は何なんだというと、滅多に使っていなかった《闇魔術》の《イリュージョン》の幻影だ。攻撃を喰らうと消えてしまうが《結界》を張っている為それは起きない。囮役には完璧でソフィアもそれに気付いていない。
ソフィアが完全に俺を閉じ込めたと思って近付いていく。確かに今の俺の魔法じゃ水の檻を打ち破る方法もないと思う。火系統の魔法は水系統に弱く、強引な火力で打ち破るとしても、中に閉じ込められている俺が消し炭になっているだろう。でも試した事はないが土系統だったらなんとか出来るかもしれない。例えば《アースシールド》を複数地面から伸ばして足場を作って逃げるとか。今は捕まらないようにした結果、地面に隠れているので、思い付いた脱出法は後で試させてもらおう。そして俺の隠れている地面の近くまでソフィアがやってきた。
「ショウジ、負けを認める?」
ソフィアが水の檻に閉じ込められた俺に負けを認めろと促すが、幻影だから動かすのは出来るんだけど喋れないんだよね。喋らない俺を見て不思議そうに眉根を寄せるソフィア。その瞬間を狙って飛び出し、ツインエッジをソフィアの喉元へ突き出す。ソフィアは反応してバックステップをしようとするが、身動きが取れなかった。空中を見上げていた隙に足を《スチールワイヤー》で動けないように固定しておいたのだ。防御も間に合わずにツインエッジがソフィアの喉を捉え、致命傷にならないようにその直前で静止する。
「これで俺の勝ちだね」
ソフィアは負けを認め、初めての模擬戦は俺の白星で終わったのだった。




