模擬戦
俺はダークネスダガー計4本を大金貨2枚で購入して装備屋を出た。まだ日が暮れるには時間がある。そこで前から考えていた事をやってみようと思い、ソフィアを連れて目的地へ向かった。
「ショウジ、次はどこ行くの?」
「んー、ソフィアが喜びそうな事が出来る所」
そう言ってソフィアを連れて行った先は冒険者ギルドだ。冒険者ギルドの敷地は広大で冒険者になる為の試験場以外にも色々な設備があると前にプリメラさんに聞いていた。今回はそこを使わせてもらおうと思って来たのだ。
「冒険者ギルドで何するの?」
「前にダンジョンに行ってて思ったんだけど、スキル持ちのモンスターと練習するくらいなら、俺達で模擬戦をすれば良いんじゃないかなって思ったんだけどどう?」
「模擬戦!やりたい!」
ホブゴブリンやオークは武術系のスキルがレベル1なので、今では余り練習にならない。本格的な練習なら模擬戦をやった方が効率が良さそうだったのだ。その方が今後高レベルなスキル持ちのモンスターが現れても、そこで時間を使わずにさくさく進めるだろう。
冒険者ギルドの中に入ってプリメラさんを探す。もう少し時間が経ったら混み合う所だろうが、早めに切り上げて帰ってきたらしい少数の冒険者達が居るだけで、建物の中は比較的空いていた。
「プリメラさん、こんにちは」
「ショウジさん、こんにちは。今日はどうなされたのですか?」
「模擬戦用の場所を借りてもいいですか?」
「ショウジさん模擬戦するんですか?今は使ってないから大丈夫だと思いますが、相手はソフィアさん?」
「うん、ソフィアとやろうかなと。モンスターだとスキルが低レベルだから、ソフィアと練習する方が効果的だと思うんですよね」
「ちょっとお待ちください」
そう言って奥へ消えていった。暫くすると戻ってきたのだけど、そこにはプリメラさんだけでなくブラームスさんが一緒だった。
「がはは、坊主とエルフの娘っ子が模擬戦するんだって?こんな面白そうなもの見なきゃ損だわい。それにどれだけ強くなったか興味もあるしな」
「模擬戦には冒険者ギルドの職員と試験官が1人ずつ立ち会わなければならない規則がありますので、私とブラームスさんがご一緒します。それでは広場へご案内しますね」
プリメラさんに案内された場所は建物の外にあり、周囲には結界が張ってあった。中で使用した魔法が外へ被害を与えないようにと考慮されての事らしい。
「ここなら思いっきり暴れて頂いても、結界があるから大丈夫ですよ」
「思いっきり暴れ放題……」
ソフィアが目を輝かせているが、ブラームスさん達がいるなら魔法を極力抑えた方が良いのだろうか。でもブラームスさんは前回ので、ソフィアが《雷魔術》が使えるのを知っているし、《氷魔術》を使わなければ大丈夫かな。俺はブラームスさんに火か土の魔法しか見せてないからどちらでもいける。《炎魔術》と《鋼魔術》どっちを使うか迷うな。
ソフィアに上位魔術は《雷魔術》だけ、俺は練習中の《鋼魔術》だけという事にして模擬戦を始める。
「ソフィアから仕掛けてきて良いよ」
一応実力は同じくらいだろうが、先輩冒険者という事で先手は譲ろう。
「それじゃ遠慮なく」
あれ、遠慮なくと言っているが動かないぞ。どうしたんだろうかと思いつつ、ソフィアの挙動を見逃さないように待ち構えた。しかし、ソフィアはその場から動く事なく両手にスティレットを持ち、構えていただけだった。動かないソフィアが何をしてくるのか考えると、ふと頭をよぎる今日のダンジョンの外に出た時の出来事。もしかして魔力増幅の循環をして魔力を溜めている最中なのではないかと。そうなるとやばい、かなりの威力の魔法が飛んでくることになる。
「ライトニングボルト!!」
ソフィアが魔法を唱えると、今まで見た事のない巨大な雷が煌めきと同時に一瞬で襲いかかってきた。後手の俺はとっさに《結界》を張り、《スチールワイヤー》を《結界》の表面に張り巡らせ地面に繋げた。電流が《結界》の表面の《スチールワイヤー》を通り地面へ流れるようにしたのだ。そのおかげか過剰な威力の《ライトニングボルト》が《結界》の表面の《スチールワイヤー》を通り、《結界》に守られていた俺はなんとか無事だった。
「ちょっとストップ!今のは喰らってたら俺即死してたんじゃないかな!」
「思っていたより威力が上がった」
「おいおい、今のがライトニングボルトだと?どれだけ魔力を込めたら今の威力になると言うんだ。今のは儂でも死ぬぞい」
それにしてもソフィアはやり過ぎだ。最初動かなかったのは魔力を循環させて高めていたのだろうが、いきなり最大火力をぶっ飛ばしてくるとは俺を殺す気か。これは注意というかお仕置きが必要ではないだろうか。
「で、でも、それを受けても平気な所は流石ショウジさんですね!」
「正直死ぬかと思ったよ。ソフィア、即死級の攻撃はなしで!」
「分かった。気を付ける」
それでは仕切り直しで模擬戦再開だ。




