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決意

 わたくしの名前はイザリナと申しますの。本日は同じ八柱将のラゴモスに呼び出されて、魔王城に来たのですわ。


 本来であれば立派なお城が建っていたはずなのですが、魔王様が何を考えたのかわたくしには分かりませんが、勇者の召喚を試みた結果、魔王城は跡形もなくなり更地になってしまいましたの。


 お城は今再建中で、他の八柱将達も建設に駆り出されて、忙しいみたいですわ。


 わたくしはほら、身体付きからして華奢な乙女ですので、建設作業なんて似合いませんですの。同じ女でも過酷な労働は筋肉馬鹿のドルチェにでもやらせておけば良いのですわ。


 建設現場にいたラゴモスに会いますと、早々に命令されましたわ。内容は間者から人族と獣人族が手を組みそう、との報告があったみたいでして、それを邪魔してこいとの事でしたわ。


 面倒でしたので断ろうとしましたが、嫌なら建設作業を手伝えと言われましたので、仕方なくですが人族と獣人族の邪魔をする事にしましたの。


 わたくしはペットでダークネスウルフのダスルフちゃんに乗って東を目指しましたわ。東には人族の領地がありまして、更にそこから南東に向かいますと獣人族の領地ですわ。人族は面倒ですから先に獣人族から邪魔をして差し上げる事にしました。


 でも何をすれば良いのでしょう。昔、別の方は人族と獣人族の戦争を起こさせたらしいのですが、そんな回りくどい事はわたくしの性に合いませんわ。そんな事をするより獣人族が居なくなればそれで万事解決ですの。我ながら妙案を思いつきましたわね。


 獣人族の領地はほとんどが砂漠なのが嫌ですわ。日差しも強くて地面の照り返しも強いので、お肌が焼けてしまいますわ。


 そういえば面白い物がありました。これは昔ヴァナガルド王国へ行った時に手に入れた物でして、杖みたいな棒状の先端に布が広がるように張られてますの。その名も傘と言うらしいですわ。本来は雨で着ている物が濡れないようにする物らしいのですが、これを使えば日差しも防げますわね。


 ヴァナガルド王国は人族の国ですが、妖精族のドワーフと仲がよろしいみたいですの。昔、勇者がそこを訪れた時に技術革命が起きたみたいでして、わたくしの考えも及ばない物が沢山ありましたの。傘もその1つでして、他にも服や扇子もそこで頂いた物ですわ。


 相手が男の方でしたら《魅了》で思い通りに操れるので、問題なしですわ。《魅了》はわたくし達サキュバスか、インキュバスの方達しか持っていない能力なのですの。


 そうですわ。男の人より効き目は弱いですが、モンスターに《魅了》を使用して暴れて頂く事にしましょう。


 わたくしはそこら辺に居たスコーピオンに《魅了》をかけて、巣の場所まで案内させましたわ。巣には上位種のデスニードルスコーピオンがいらっしゃいましたので、それにも《魅了》をかけて差し上げましたわ。


 面倒でしたがこれを繰り返しまして、スコーピオンの大群を作り上げましたの。それを獣人族の村を次々襲うように命令をしまして、わたくしは別の場所で高みの見物をしていたのですわ。


 更に南東の方へ行けば獣人族の首都があったのですが、北上して人族の領地へ向かう事にしました。獣人族だけではなくて、人族の方もどうにかしろと言われてましたし。


 北上していく最中の獣人族の村を次々と襲い、皆殺しにしていきましたの。ですが人族の国境近くの村で思わぬ出来事があったのですわ。まさかわたくしの手懐けたスコーピオンの大群が全滅させられましたの。あれには正直驚いてしまいましたわ。


 何が起きたかと言いますと、その村をいつも通りにスコーピオンが襲い始めたのです。今までと同じように最初は抵抗されましたが、すぐに数の暴力に抗えず、村は飲み込まれていくものと思われたのですわ。ですが突然スコーピオンの居る所に爆発が起こりまして、次々とスコーピオン達が殲滅されていったのですわ。


 わたくしは何が起こっているのかを確認する為に、目を瞑って《千里眼》を使いましたわ。これで遠くからは見えないような所まで見えるようになりますの。《千里眼》の視界は俯瞰したような視界なのですが、そこに映っていたのは1人の人族の殿方が奮戦するのが見えましたの。その殿方は他の獣人族の方と比べ物にならない程強く、山ほど居るスコーピオンを殲滅していったのですわ。


 それからその殿方から目が離せなくなってしまいました。《千里眼》で眺めておりますと、どうやらその殿方にはお仲間がいらっしゃるらしくて、それが面白いことに余り人前に出てこない妖精族のエルフの娘と、獣人族の娘でしたの。その2人も周りの方々と比べると強かったですわ。


 わたくしの手懐けたスコーピオン達はかなりの数が居たはずなのですが、上位種のデスニードルスコーピオンも倒されてしまい、かなりの数を消耗してしまっていました。そんな中で彼が戦場から離れて村の中へと走っていくではありませんか。


 《千里眼》の視界で追いかけていくと、村人が避難している場所まで辿り着いてしまいましたわ。何やら獣人と話をされた後、そこに巨大な《結界》を張られましたの。その後、避難所を守っていた獣人達が戦場へ向かっていかれました。どうやら戦場に戦える人を増やす為の作戦でしょう。良く見ているとその獣人達が加わった事で、休憩を交代で取りながらスコーピオンの波に飲まれる事なく耐えていたのですわ。彼はこれを狙っていらっしゃったのですわね。


 そして夜が明ける頃まで戦いが続きましたわ。そしてとうとうわたくしの手懐けたスコーピオン達は全滅してしまいましたの。


 それからというもの、四六時中彼の事を考えてしまっているわたくしが居りましたの。ラゴモスの命令なんて、もうやる気になりませんわ。そして彼は戦いが終わって一晩だけ村で過ごされると、すぐに人族の領地へと向かってしまわれたのですわ。もちろん、わたくしは追いかけました。


 彼は人族の領地に入ってすぐの所にある街に滞在されてましたの。でも毎日のようにダンジョンに向かわれているみたいでして、いつの間にかお仲間が1人増えていらっしゃいました。そのお仲間さんも女性でしたわ。彼の下には何故か女性ばかりが集まっておりますが、やはり彼の魅力のなせる業なのでしょう。


 それからも同じようにダンジョンへ向かわれていました。ですがある日の夜いつもと違いまして、他の方達と一緒に食事を取られていたのですわ。その翌日も同じ人達と食事を取ったみたいですの。わたくしも彼と一緒に食事がしたいですわ。想像するだけで、ああ、なんて幸せな事ですの。


 ですがその翌日、また彼は街を出て別の街へ向かわれるみたいですの。彼を追いかけてわたくしも街を出ましたわ。どうやら彼は西の方の魔族の領地に近い街に向かわれているみたいですの。


 その日の夜、彼は仲間の1人と一緒に夜の見張りをされたのです。他の人達は眠りに就いているみたいですが、これはチャンスですわ。今までずっと遠方から見ているだけでしたが、ここでお名前をお伺いしたいと思うのですわ。わたくしは魔族ですので、もしかしたら怖がられてしまうかもしれませんが、彼は回りに妖精族や獣人族を侍らせている変わり者ですもの、魔族のわたくしの事も何とかなるかもしれませんわ。でもいざ彼と会えると思うと口元が緩んでしまいますわ。わたくしは扇子を取り出してそれで口元を隠す事に致しましたわ。


 ですが彼の前に姿を現してみると、思いっきり警戒されていましたの。ダスルフちゃん達が居たからかもしれませんが、とてもショックでしたわ。更には《探知》のスキルを所持されているのか、姿を現す前からわたくし達が居るのを分かっていたみたいでしたわ。本当は彼のお名前を聞くだけの予定でしたが、彼がわたくしの名前を知りたいと仰いましたので名乗らせていただきました。わたくしが名乗りますと彼もお名前を教えてくださいましたわ。カグラザカ・ショウジ、と彼は名乗られましたの。とても不思議なお名前で、わたくしは魔族ですが神聖さを感じましたわ。


 カグラザカ様が色々と質問をされましたの。どうやらカグラザカ様は襲われると思われていたみたいですわ。それがお望みならとダスルフちゃん達と戦うか聞いてみましたが、お断りされてしまいましたの。でも戦っていれば、カグラザカ様の戦うお姿を目の前で拝見できたのにと思うとちょっと勿体なかったかもしれませんわ。彼の事に集中していて気付きませんでしたが、他の方々も目を覚まされていたみたいですの。


 とりあえずお名前は聞けましたし、ここまでにしておきますわ。わたくしはカグラザカ様に挨拶をして、その場を去りますの。このまま再び後を追いかけていっても良いのですが、一度魔族の領地に帰ってラゴモスに報告をしないといけませんわね。ラゴモスの命令は誰かに引き継がせて、わたくしはカグラザカ様を追いかける事を決めたのですわ。

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