体術
翌朝お茶を飲んで一息つきながら昨日の事を思い出していた。
昨日仲良くなったパーティー新世代の風、そのメンバーと一緒に食事をしていた所、思いがけない事があった。妖精の宴はなんとドワーフの人達が経営していたのだ。クレアがドワーフと会った事があると言っていたが、それは妖精の宴のご主人の事らしい。奥さんは人族で、フロアで働いている女の子2人は娘らしくハーフなのだとか。
ドワーフもエルフと同じで耳が尖っているが、エルフと違う点はエルフは肌が白くドワーフは褐色なのだとかで、子供の頃は肌の色でしか見分けがつかないらしい。成人になるにつれエルフは長身で細身の身体に、ドワーフは小柄だが逞しい身体付きになるそうだ。
フロアの女の子2人は双子で、姉がミミルで妹がユミル。2日連続で同じ子だと思っていたのだが違ったのかもしれない。双子は髪で耳が隠れていた為普通の人族だと思っていた。まさかこんな所でドワーフにお目にかかれるとは思っていなかった。
ドワーフは北のヴァナガルド王国では良く見かけるとの話は聞いていたので、いつかはそこに行こうと思っていたのだが、これで目的が1つ減ってしまった。だがヴァナガルド王国はドワーフとの友好で技術革新があり先進国なのだとか。マヨネーズや塩胡椒等もヴァナガルド王国が生産しているらしい。やはり一度は行ってみたほうが良いかもしれなかった。
後はまだ妖精族にはフェアリーがいる。手のひらサイズの小人で羽根が生えていて空を飛べるという。そしてエルフとドワーフの領地の間にフェアリーの領地があるらしい。ヴァナガルド王国でもドワーフ程ではないが、フェアリーはたまに見かけるとの事なのでそっちを楽しみにしておこう。
「ショウジ、おはよう」
ようやくソフィアが起きてきたので、準備を済ませてダンジョンへ向かう。今日は10層で守護者と戦う事になる。イジェクトストーンも前回使ってないし、2個もあればとりあえずは大丈夫だろう。回復剤もスコーピオンの時に沢山買い込んだのがまだあるので、それも問題なしだ。
ダンジョンの入口に着いてブラックゲートへ入る。視界に表示されたウィンドウの中から10層を選んで転送されると、目の前には砂の大地が広がっていた。よくよく考えたら6層から砂漠が出ていなかったので、それに気付いていれば消去法で10層が砂漠のフィールドになのは分かったはずだ。だからと言ってこのダンジョンだと出てくるモンスターが全く分からないからフィールドが分かっても余り意味がない。ある程度の予測が出来るくらいだろう。
砂漠を進んでいき現れたのは茶色い蛇のモンスターで、名称はサイドワインダー。そこまで大きくはなかったが今までで一番数が多く、4匹で纏まって行動していた。
サイドワインダーは身体をバネのようにして地を蹴り飛んでくる事があったが、避けるのはそう難しいことではなく、噛みつこうとしたその首を斬られて4匹とも灰になっていった。ステータスはそこそこ高いのにスキルがない分、トリスティアの森のダンジョンに出てきた四属性ウルフの方が強いだろう。それだけスキルを所持している敵は厄介なのだ。
サイドワインダーを倒しながら砂漠を進み続けて、遠くにホワイトゲートを発見した。しかしホワイトゲートに近付くと前回と同じように周りに結界が張られ、その近くに巨大な魔法陣が出現した。
「守護者が出てくるよ。気を引き締めて行こう」
俺はツインエッジを構えて皆に注意を促す。魔法陣が上昇していき、守護者の姿が足下から露わになっていく。その姿は砂の山のようなものだったが、余分な砂が流れ落ちていき人の形をした砂のモンスターが現れた。《鑑定》の結果はサンドマンという名称で《体術》のレベル1を所持していた。ステータスは一般のモンスターに比べれば高めだが、ジャイアントウルフと比べるとそこまでではなかった。だが武術系のスキルを所持していると、ステータスの数字では表せない動きの違いがあるので、そこは気を付けなければならない。そしてその情報をすぐに皆に伝えて共有した。
「《体術》を持ってても関係ない。リベンジするだけ、アイスランス!!」
ソフィアの放った《アイスランス》が地面から飛び出し、サンドマンを串刺しにする。しかしサンドマンは何事もなかったかのように移動し始め、ゆっくりとした足取りでこちらに向かってきた。《アイスランス》によって身体に開けられた穴は、周囲の砂が穴に向かって流れていき塞がっていく。
穴の塞がったサンドマンを見る限りほぼ無傷だ。もしかしたら物理攻撃の耐性が高いのかもしれない。俺のツインエッジで斬ったとしても同じように再生されるだけだろう。そうなると再生が追い付かないくらいに細切れにするか、それとも《エクスプロージョン》辺りで粉々にするかかな。
「これでも喰らえです。エクスプロージョン!!」
俺と同じことを考えたのかアペルが《エクスプロージョン》を使用して爆発を起こした。サンドマンが粉々になって散らばっていき砂の山が出来上がった。倒したかと思ったが流石は守護者、そんな簡単に倒せる訳がなく飛び散った砂が再び集まって人の形を作っていったのだった。




