合流
アペルは無傷でダークサイズクラブを倒してしまった。アイテムを手に入れていないか確認するが、残念ながら今回は何も手に入れられなかったようだ。その後は何事も無く近くのホワイトゲートに入りダンジョンの外に出る。
外は日が暮れ始めていて帰るには丁度いい時間だった。前回は遅くなってしまったが今回はちゃんと暗くなる前に出てこれて良かった。
帰り道の最中、シェリーが《風魔術》と《土魔術》も取得出来るようになっていて、シェリーはどの系統を伸ばしていくか迷っていると伝えてきた。今の所は水や土系統のモンスターが多かったので《火魔術》と《風魔術》が有効だった。だがこれからはどうなるか分からないし、アペルが《火魔術》を取得していてそこだけ重なっている。なので《火魔術》は後回しで良いと思うと伝えた。
「それでは《土魔術》を伸ばしていこうと思います」
《土魔術》なら何かあった時の防衛手段に《アースシールド》や、《鋼魔術》の《スチールワイヤー》でトラップも用意しておける為、土系統のレベルを上げる事に決めたようだ。
そしてアペルは《闇魔術》を取得しレベルを上げ、上位魔術の《深淵魔術》をも取得したそうだ。ソフィアは前回《雷魔術》のレベルを上げてしまっているので今回は見送るみたいだ。俺もこの前《鋼魔術》を取得したばかりなので、暫くスキルアップは先になりそうだなと思いつつ《スキル》のウィンドウを眺めていると、《念話》なるものが表示されていた。
一体いつの間に条件を満たしたのだろう。あ、あれか。7層の時ソフィアにジェスチャーで内緒にしてと念を送ったからか。《念話》はまだ必要性はなさそうだし、取得するのはまた今度にしよう。
ヘルグミルの街に着き宿屋へは向かわず、今日も外食する為に街中を歩いて今日も妖精の宴へと向かった。
妖精の宴は昨日に比べると混雑していて忙しそうだった。ダンジョンから帰ってきた冒険者達で今がピークの時間なのだろう。
「あ、ソフィアさーん!こっちこっち!」
奥のテーブル席には昼間に出会った新世代の風のメンバー達がいて、そのうちの1人クレアが手を振って俺たちを呼んでいた。
実は昼間の仲良くなった時に、今夜一緒に御飯を食べようと話を持ち掛けられていたのだ。ソフィアは昼間の戦いぶりから新世代の風のメンバー全員から好かれているようだし、冒険者同士の交友関係を広げておいた方が何かと便利だろうと思いその誘いを快く承諾したのだ。
「丁度俺達も帰ってきた所なんですよ。ささ、早く座ってください」
テーブルを二つ並べて人数分座れるようになっていた。俺達が空いている席に着きどれを注文するか悩んでいると、隣に座っているセインがこの店のおすすめを教えてくれた。俺はそれを注文することにしてソフィア達は何を頼むのか確認をする。すると3人も俺と同じセインのおすすめを頼むらしい。飲み物も確認するが昨日と同じ蜂蜜酒でいいとの事だ。クレア達も注文は決まったようなのでフロアの女の子を呼んで注文をする。
「ソフィアさん達はあの後何層まで行ったんですか?」
注文を済ませた後、カトリーナが質問をしてきた。
「9層まで行った。10層は明日?」
「そうだね、明日は10層に挑戦しようと思っているよ」
ソフィアが疑問を浮かべながら答えていたので補足する。10層ということは守護者がいる。ジャイアントウルフと同じくらいの強さなら、レベルも上がり人数も増えた今ならそんなに苦戦はしないはずだ。
「7層に居たのにもう10層で守護者と戦うなんてすごいですね!」
「ああ、俺達は前のダンジョンで一度守護者を倒してたんだよ。こっちに来てからアペルとシェリーが仲間に加わったから1層から順番に攻略してレベルを上げていたんだ」
セインが攻略の速度に驚いていた。まあ途中いくつかの層は飛ばしたけどね。俺達はスキルのレベルを上げ易い分、戦闘も楽になって進軍速度が速いのは新世代の風の戦闘を見ていた時から感じていた。もっと冒険して深層の強い敵と戦った方がレベルの上がりも早いのだろうが、命には代えられないので安全マージンはしっかり取らないといけない。
話に夢中になっていると料理が運ばれてきた。セインおすすめの蒸し鶏がテーブルに並べられた。専用のタレがあるらしくそれにつけて食べる物らしい。セイン達は出てきた料理をすぐに食べ始めてしまったが、俺達は頂きますと言ってから食べ始めた。セイン達が不思議そうにこちらを見ていたが俺の故郷の風習で、ソフィア達も俺に合わせてくれている事を説明した。
蒸し鶏をタレにつけて口に運ぶ。蒸し鶏の油の落ちたさっぱりした柔らかいお肉に、タレに含まれるレモン果汁のような酸味が旨味を引き出していた。おすすめなだけあって凄く美味しい。
「セイン、この料理凄く美味しいね」
「でしょ?俺もこの店に来たら毎回これしか頼まないくらいお気に入りなんですよ」
俺もこの料理をとても気に入ってしまった。美味しいものを教えてもらったお返しと、先輩冒険者として俺達の奢りだと言うと、セイン達は大いに喜んで追加注文をしていったのだった。




