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偽装

「すごーい!本当にソフィアさん1人で倒しちゃった!」


 未だに興奮が冷めずにクレアがソフィアに抱き付いている。カトリーナも今回はそれを引き剥がそうとはしないで、自分もソフィアに抱き付いていた。セインは抱き付く事はなかったがソフィアの近くですげえ、マジすげえ!と連呼していた。あまり喋らないハワードやラウリーは外野でそれを見守っていたが、彼等にも冒険者として感じる物があったのだろう。ハワードはフルフェイスの兜で表情までは分からないが拍手をし、ラウリーも頬が紅潮しているのがわかる。


 一通り落ち着きを取り戻した所でセインがソフィアにレベルはいくつなのかと聞いていた。スキルに差はあるもののレベルはそこまでの違いはないと思うが、ちらりと俺に目を配ったソフィアに向けて、人差し指を口に当て秘密にするよう念を送る。このジェスチャーがこの世界で伝わるかどうか分からなかったが、ソフィアはそれを受け取って少しだけ頷いた。


「んー、内緒」


「そうですよね、冒険者たる者そう簡単に自分の能力とか口にしないですよね」


 セインが良い具合に勘違いしてくれたが、確かにその通りでレベルやステータスをおおやけにする必要性はどこにもない。レベルとか聞かれても秘密で通せば上位魔術とかを使っても、逆に高レベルだと思われるだけで問題ないのではないだろうか。


 それでもステータスとスキルのアンバランスさはあるだろうが、ステータス側で狩場を合わせるのだから、他からしたら、かなりの安全マージンを取っていると思われるだけだろう。うん、縛りプレイも必要なさそう。


 俺達は新世代の風のメンバー達と一緒にホワイトゲートまでやってきた。


「それじゃ私達は5層に戻ります」


「うん、そっちも頑張って」


 カトリーナが俺達に挨拶して、それにソフィアが言葉を返す。そしてカトリーナはホワイトゲートに入っていく。それに続いて他の4人もホワイトゲートに入っていった。6層はボスが出た時にアリゲーターと同じ事になるかもしれないので、更に戻って5層に行くとの事だ。確かに5層はフライングフィッシュで楽しくレベル上げが出来るから良いと思う。ボスが出ても鈍間なグレートトータスだし問題ないだろう。


 そしてこちらは次の8層の攻略だ。ソフィアがアリゲーターと戦っている間にセインから聞いた話だと、3層は草原で角の生えた兎、ホーンラビットが出現する。そして4層が森で装甲の硬いカブト虫、ハードビートルが出現するらしい。この情報のおかげで6層からが2週目なのがはっきりしたのと、このダンジョンでまだ遭遇してない森のフィールドがこれから出てくるという事だが、モンスターの内容はがらりと変わるので参考にはならないだろう。


 ホワイトゲートに入り8層へと転送される。丁度考えてた所にダンジョンが呼応したのか目の前には森が広がっていた。長い時間浜辺にいたせいか潮風でベタベタするので《清浄》で身なりを綺麗にしてから進んでいく。暫くして《探知》に反応があったのでそこへ行ってみると、地上には何もいないし空を見上げても何もいなかった。


「本当にここ?」


「うん、この辺りにモンスターの反応があるから居ない事はないと思うんだけど、地上も空も居ないとなると地中かな?」


 《探知》はおおよその距離と方向は分かるが高低差まではわからないのが残念な所だ。それでも今ではなくてはならないスキルなので、これからも活用させて頂きます。


 しかし本当に敵が見当たらない。試しに《採掘》で地中も掘ってみたが出てこない。こうなると見えないくらい小さいのだろうかと考えていると、突然枝のしなるような音と一緒に風切り音がしてアペルが吹っ飛ばされた。振り返るとアペルの飛んだ先にはソフィアがいたが、ぶつかりつつも上手く衝撃を逃し受け止めていた。


 アペルを吹き飛ばしたのは木のモンスターだった。再び木のモンスターの腕みたいな枝が振りかざされ、今度はシェリーを目標に振り落とされる。俺はすぐさまシェリーの前に移動して枝を斬り払い、《ファイヤジャベリン》を木のモンスター目掛けて放つ。《フレイムブレス》でなく《ファイヤジャベリン》を使った理由は、《フレイムブレス》だと拡散し回りに燃え移るのを危惧しての事だ。


 木のモンスターは《ファイヤジャベリン》を受け炎上していくが、それを見たソフィアが《ホワイトブリザード》で鎮火するのと同時に木のモンスターにとどめを刺した。そして《ホワイトブリザード》が他の木のモンスターをも炙り出し、それに気付いた俺は木のモンスターとの間合いを詰め、素早く《クロスインパクト》を叩き込む。木のモンスターは灰になって消えていくが、その前に《鑑定》を使っておく事を忘れてはいなかった。木のモンスターの名称はエルダートレントと言い、スキルに《偽装》を所持していた。そのせいで周りの木々と一体化していて気付かなかったみたいだ。


「アペル大丈夫?」


「ごめんなさいです。まったく匂いもなくて気付かなかったです」


 アペルを受け止めていたソフィアが心配をしていた。サンドワームの時の奇襲は獣人のアペルの聴覚や嗅覚で反応出来ていたのだろうが、流石に相手が木だと周りも木なので、匂いで気付かないのは仕方ないと思う。アペルを見ると、頭の上にある耳がいつもはピンと張っているのに今は垂れ下がっていた。そして尻尾も同じようになっているのが伺えた。


「今のエルダートレントの攻撃は俺やソフィアやシェリーでも避けれなかったと思うよ」


 完全な不意打ちに気を落としているアペルを励まして再び森の中を進んでいくのだった。

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