尊敬の眼差し
俺達は昼御飯を食べ終えて新世代の風のメンバー達と一緒にホワイトゲートまで向かっていた。
どうやら彼女達はもう少し手前の層に戻って力を付けてから再び挑戦しに来るとの事だ。アクアハーミットクラブは何とか倒せるが、稀に出現するボスモンスター相手だと厳しいのが現状で、6層のオークに関してはボスモンスターと遭遇しなかったらしい。まあ、6層も2周目だったら強さ的には変わらないだろうから、俺達のいる今ここで戦えたのが幸いだろう。
だが休憩をホワイトゲート近くで取らなかったのがいけなかった。稀なはずのボスモンスターが再び俺達の前に現れたのだ。
「ま、またあのモンスターが!」
「どうしよう、私達だけじゃ勝てない」
新世代の風のセインとカトリーナが声を上げた。さて、どうしよう。俺達が戦っても良いのだが、スキルの種類を抑えないといけないだろう。所謂縛りプレイだ。魔法を考えるとソフィアに後衛になってほしいが、さっきの戦いの時に戦いたそうにしていたので多分後衛は嫌だろうなと考えていると。
「私が倒す」
はい、バトルジャンキーさんが出て参りました。話をお伺いする限りでは1人で倒されるそうです。
人前だからスキルは抑えて戦う事を説明する。ソフィアなら《剣術》と《風魔術》さえあれば倒せるだろう。その他の《雷魔術》、《水魔術》、《氷魔術》、《火魔術》は使用禁止で戦う事を許可した。ただし危なくなったら他の魔法も使用して良いと伝えておいた。
新世代の風のメンバー全員がソフィア1人で戦う事に驚いていた。それはそうだろう。自分達が5人掛かりで厳しい相手に、同じ階層にいる人が1人で戦うと言うのだから。
手伝わなくて良いんですかとも聞かれたが、本人が1人で戦うと言っているのだから任せるしかない。危なくなったらもちろん助けるさ。
ソフィアが駆け出してアリゲーターに《ウィンドカッター》を複数放ち、アリゲーターの注意を引き付ける。アリゲーターは足が短いせいか移動速度が遅く、複数飛んでくる《ウィンドカッター》を避ける事ができず、巨大な尻尾を振り回す事によって《ウィンドカッター》に対抗する。いくつかはそれで《ウィンドカッター》を相殺するに至ったが、全てを相殺する事は出来ずに《ウィンドカッター》がアリゲーターの表面を切り裂いていく。
見た所ソフィアの《ウィンドカッター》はカトリーナの放つ《ウィンドカッター》と比べると、アリゲーターの切り傷から察するに威力が高い。それもそのはずで魔法に関わるステータスが無い為、使用者のレベルによって威力が上がるようになっていた。その他にもスキルのレベル、魔力の消費量でも威力は上げることができる。そこで魔力の消費量を抑えつつも威力が上げられる宝石の需要が出てくる訳だ。宝石は魔法を使う時に魔力を込めると増幅されて出力される。増幅量は宝石によって変わってくるのだが、それがそのまま価格の違いになる。増幅量が高ければ高いほど価格も跳ね上がる。つまり宝石は一攫千金を狙えるからジェムスライムが人気なのだ。俺達も運良く1回倒してサファイアをゲットしているが、果たしてどの位の価値になるのか楽しみだ。
ソフィアがアリゲーターの懐へ入り込もうとすると、アリゲーターは身体を捻り巨大な尻尾を振ってソフィアの侵入を防ごうとする。ソフィアはすかさずバックステップをして尻尾を回避し、アリゲーターが尻尾を振った隙を狙って《ウィンドカッター》を放つが、《ウィンドカッター》はアリゲーターの返す尻尾に打ち消される。
アリゲーターは基本的に尻尾を振って攻撃してくるのが多いみたいだ。ただアリゲーターの攻撃はそれだけではない。尻尾より射程は短いが、巨大な口と牙からくる噛み付き攻撃が一番危ない。アリゲーターは足が遅いので、距離を取りながら魔法を放てば無傷で倒せそうだが、ソフィアはそれをしないだろう。
再びソフィアが間合いを詰めにいった。アリゲーターもやはり尻尾を振って近付けさせまいとするが、ソフィアは跳躍してそれを避ける。跳躍に対抗してアリゲーターが口を開きソフィアに噛み付こうとするが、ソフィアはその口の届く範囲より更に上を通り過ぎ、アリゲーターの口に《スラッシュ》を叩き込む。グラディウスがアリゲーターの口を斬り裂き、アリゲーターが怒りをあらわにしていた。そしてアリゲーターが今度はソフィアの着地を狙い、そこに回転の力を加えた強烈な尻尾の一撃を叩き込んだ。ソフィアはそれを避けられないと悟るや、防御しつつ尻尾が来る反対側へ跳び威力を少しでも逃そうとした。吹き飛ばされたソフィアの足元を砂が巻き上がっていき、砂煙はやがて勢いがなくなり止まったが、そこから《ウィンドカッター》が複数放たれアリゲーターを切り刻んでいった。
「もう怒った。ウィンドトルネード!!」
強烈な一撃を喰らったのが相当頭にきたみたいだ。ソフィアが《ウィンドトルネード》をアリゲーターに放つ。《ウィンドトルネード》は《風魔術》レベル10での魔法だが、《雷魔術》を使わなかっただけマシであると言えた。《剣術》レベル10の《風魔術》レベル10くらいだったら、何とかレベルが高いで誤魔化せる可能性は高い。ソフィアから放たれた《ウィンドトルネード》はアリゲーターが尻尾で防ごうとするものの、尻尾ごとアリゲーターの胴体に風穴を開け倒してしまった。やはり《ウィンドカッター》に比べると格段に殺傷能力が高くなるのは流石《風魔術》レベル10の魔法と言えよう。
「ソフィアさんすげえ!」
セインの叫ぶ声が聞こえ、新世代の風の他のメンバーもソフィアを褒め立てる。ソフィアが帰ってきた所にシェリーが《治癒》を掛けて傷を癒していた。そしてソフィアは新世代の風の皆から尊敬の眼差しで見られるのだった。




