奴隷解放
ホルグレン邸にてスコーピオンの大群は殲滅して村は守れたという報告をタランドーさんとホルグレンさんにした。
「スコーピオンの大群に、多少デスニードルスコーピオンが混じっていたか。よく守り切れたな」
流石に夕方から夜を通り越して朝まで戦い続けた事、そしてそれだけのスコーピオンの大群に驚いていた。
「とりあえず冒険者ギルドに問題は解決したと連絡しておかないとな」
ホルグレンさんが使用人を呼んで、冒険者ギルドに伝えるように指示を出していた。タランドーさんに商談の方はどうなったのか気になったので尋ねると、イレギュラーの所為でそちらに時間を取られてまだ終わってないらしい。もう暫くはこの街に滞在するから時間を潰していてくれと言われた。それならシェリーのレベル上げとこちらのダンジョンの10層の守護者攻略ができそうだ。ソフィアも守護者と戦えて喜ぶだろう。
後は折角取得した《結界》を《能力付与》する為の装備だ。タランドーさんとホルグレンさんに良さそうな装備がないか聞いてみる事にした。特にホルグレンさんならば何か知っているかもしれない。淡い期待を抱いて質問してみる。
「《結界》の能力を持った装備か。実際に見た事はないが基本的にそういった物はミスリル製の装備品が《能力付与》し易いというのは聞いたことがある。ミスリルは魔力との相性がかなり良い素材だから信憑性は高いな」
ここでまたミスリルの名を聞くとは俺に手に入れろと言っているのだろうか。ついでだからミスリルの入手方法等も聞いてみると、30層を超えたダンジョン内で《採掘》を使い取得するか一部のモンスターを倒したときに手に入れられるらしい。ミスリルは欲しいけれど30層はまだちょっと早い。そこでタランドーさんが何かを思い出したのか声を上げてこちらを見た。
「ああ!思い出した。《結界》だけで言えばブラッドストーンを使ったアクセサリーでも代用は効くぞ。ただミスリルに比べて耐久性はかなり低いから壊れやすいが、手軽に手に入れるならそっちもありだ」
ブラッドストーンとは宝石の1つらしい。宝石だけれどもそこまで価値は高くなく、ソフィアの杖にもエメラルドが使われているが、エメラルドより価値は低かった。ブラッドストーンならば幾つか持っているというホルグレンさんの話に人数分譲ってもらえた。
宝石も物によるけれど魔力との相性は良いので、魔法系の能力を付与し易いのだと教えてもらった。《能力付与》は装備の相性もあるが素材の相性でも決まるみたいだ。ブラッドストーンは手に入れたが耐久力はそんなにないと言っていたので、予備とかも考えると沢山欲しい。どうやらブラッドストーンは普通に岩場とかで《採掘》していればそこそこ出るらしいので、これはもう岩場の近くでは《採掘》を使いまくって鉱石や宝石類を手に入れまくるしかない。
「タランドーさんもホルグレンさんもありがとう御座います。とても参考になりました」
2人はまだ商談の続きをするとの事なので、俺達は邪魔をしないように挨拶をして部屋を退出して装備屋に行く事にした。シェリーの装備を新調し、アペルの装備も整えなければいけない。ティーリアの街に居る装備屋のおっちゃんの所で買えないのが残念だが、ダンジョンに行って守護者と戦う予定ならばちゃんとした装備を用意しないと命に関わるので仕方がない。
この前アペルの装備を軽く揃えた店に入り、良い物がないか装備品を物色していた。スコーピオン達を倒した時に手に入ったお金がそこそこあり、そのお金を使って装備品を購入する予定だ。アペルは新しい装備品を即決購入していた。そして俺達の方に来るとシェリーにその装備品を渡した。
「これ、しーちゃんに凄く似合うと思うです」
どうやらシェリーへのプレゼントらしく、その装備品を見た瞬間身体に電撃が走ったような感覚を覚え、シェリーにすごく似合うだろうと思ったらしい。能力的にも問題なさそうでシェリーはそれを受け取り嬉しそうにしていた。さっそく装備してみようという事になり装着する。アペルがプレゼントした装備品は白と青系の色で彩られたものだった。よく似合っていると思うが彼女の居なかった俺には粋な言葉は出てこない。とりあえず思ったことを伝えるだけだ。
「シェリー、よく似合っていると思うよ。アペルも良くこんな装備品見つけたね」
「ショウジ様、ありがとう御座います。今度は私があーちゃんに選んであげますね」
シェリーがアペルと一緒に装備を捜しにいき、俺とソフィアは置いていかれてしまった。それならばと俺とソフィアは武器の方を物色し始めた。ソフィアの杖と短剣の持ち替えが大変そうなので短剣で切味が良く、魔法の能力を底上げするようなそんな素晴らしいものがないか探してみた。残念ながらそんな願ったり叶ったりな短剣はなかったが、武器屋のおじさんが言うには高価なものらしいが、宝剣というものがあり宝石が武器に装着されている。それが魔法の威力を底上げしてくれるのと同時に剣としても使えるというのだ。それを聞いてソフィアが物凄く欲しがった。確かにそれを持てば片手が完全に空くので盾が持てる。そうしたらソフィアも《剣聖術》を取得しても無駄がなくなる。これは良い事を聞いた。
アペルの防具も新しいのが決まったらしく購入する。装備屋のおじさんに情報のお礼を言って店を出た。これで後は明日からダンジョンに行って、シェリーのレベルの底上げをしたら10層で守護者と戦う。完璧だ。
装備屋を出た後は晩御飯の食材を買ってから宿に帰った。シェリーがてきぱきと調理して晩御飯が出来上がり、それを食べた後で俺はシェリーに1つ提案した。
「シェリーももう奴隷じゃなくていいよね?」
シェリーが固まって返事が返ってこないが、俺は奴隷契約を破棄してシェリーを奴隷から解放した。これでシェリーと俺は対等の立場になった。仲間になるという事はそういう事だろうと思っている。俺がシェリーを奴隷のままでいさせるのは嫌なのだ。
「……ショウジ様、ありがとう御座います」
「奴隷とご主人様じゃなくなったんだから、様はやめない?」
「いえ。契約は無くなってもお慕いしておりますので、そこは欠かせません」
との事で俺の希望は半分叶い、半分打ち砕かれた。




