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 砂漠の中を移動し続けてホワイトゲートを見つけた。蚯蚓のモンスターはあの後2体目と遭遇する事はなく、やはり遭遇自体が稀なのかもしれない。


 アペルは初めてのダンジョンなので、念の為休憩を取る事にした。蚯蚓のモンスターが気になったので冒険者の心得に記述がないか探してみると載っていた。名称サンドワーム、砂の中に生息し砂の上を歩いたりする振動から獲物を見つけて捕食する。生息している場所は地面の砂の高低差が激しい所で、砂漠のフィールドの時は気を付けるように書いてあった。確かに襲われた場所はそんな地形で、デザートウルフと戦ってた所は比較的平らだった。


 ついでに戦術指南も載っていた。とりあえず攻撃の前兆は地面の砂が盛り上がる事で分かるからそれを避け、後は長い胴体が地面に沈み込む前に攻撃を叩き込むだけだ。確かに奇襲された時驚いて見送っていたが、避けた後胴体が砂の中に潜りきるまで時間があった。普通の冒険者にはもうそれしかないだろう。まずは出会わないように地形を見て迂回するしかない。


 マッシュルームも載っていたが、毒の異常状態を回復するアイテムを所持していないなら逃げろと書いてあった。後は見るつもりはなかったが、ジェムスライムというモンスターが洞窟では出るらしい。稀に出現するモンスターだが、倒すと宝石類や装備に使える鉱物を手に入れる事が出来て、普通のスライムと同じくらい弱く、発見次第即殺される人気者らしい。


 そしてアペルは順調に強くなっている。元々の獣人という性能に加え、《剣術》のスキルを手に入れたおかげで更に戦闘の安定感が増している。純粋に強くなっているのを喜んでいるようで、何かを企むような性格でもなさそうだ。もし俺達に危害を加えるつもりなら、蚯蚓のモンスターに奇襲された時、何も言わなければ良かったのだ。それを教えてくれたって事は信用して問題ないだろう。


 休憩を終えてホワイトゲートに入る。ここでも次に行く層が11層まで選べた。アペルの実力からして5層辺りでも問題ないと思い、相談した結果5層に行く事になった。転送されるとまず耳に入ってきたのは波の音、次に視界に海の景色が入ってきた。


「すごい大きな水溜まり」


「違うです。これは水溜まりじゃなくて海、というです」


「海?」


 なんていう事だ、ソフィアは海を知らないのか。アペルは近隣に住んでいるので海も近くにあるようで知っていた。アペルはソフィアに海がどういったものか説明する。それを俺も聞きつつ俺の世界の海の知識と比較する。海水は塩分が高く塩の製造に使われているのも同じで、俺の世界の海と同じと考えて良さそうだった。ただ海を進んでいった先には何があるか分からないらしい。昔の話だが、船で海の果てを目指し航海していった人達はそのほとんどが帰らず、帰ってきた人は皆巨大なモンスターに襲われたの一言が発せられるだけだった。海の果てには一体どんなモンスターが居るのだろうか。モンスターは気になるけれど海で更には船の上での戦闘とかできればやりたくないな。


 ソフィアが浅瀬まで駆け寄り海水を掬って口に含む。水が塩っ辛いのが信じられなかったのだろう。しかし口に含んでその味を身をもって知ったソフィアがすぐに海水を吐き出した。


「しょっぱい」


 それはそうだろう。だが海があるという事は水棲生物系のモンスターが出るのだろうか。でも浜辺もあるって事は陸地もいける系、良くある足の生えた魚でも出るのだろうか。浜辺を波打ち際に沿って歩いていると《探知》に反応があり、海の方から物凄い速度で何かが3体近付いてくる。


「2人とも、海からモンスターが3体。かなりの速度で近付いてくるよ!」


 海の中を泳いで近付いてきているのか視界には何も居ない。だが確実に近付いてきているのは《探知》が教えてくれている。そして反応がかなり近付いた時、海の中から矢のような速度で何かが飛び出してきた。飛び出してきたそれはそれぞれが俺とソフィアとアペルを狙うが俺は何とか回避出来た。ギリギリ見えたそれは魚のシルエットをしていて、振り返ると魚のモンスターは旋回していてまたこちらに向かってくるようだ。


「アースシールド!!」


 砂の地面から魔法で作られた土が盛り上がり盾を作る。魚のモンスターの突撃は《アースシールド》に拒まれ俺には届かない。だが相当威力があったみたいで《アースシールド》に穴を開け、そこにはまって動けずにいた。よく見るとシルエットは魚と一緒だが羽みたいなものが生えていてトビウオに近い。《鑑定》してみると名称もフライングフィッシュだった。だが普通のトビウオと違って頭の先端はカジキマグロのように鋭利に尖っていた。身動きの取れないフライングフィッシュを放置して二人の援護に回る。


 ソフィアは相手が速過ぎたのか最初の突撃を完全には避けきれず、軽く腕の所をフライングフィッシュが掠めたようで血が流れていた。アペルの方は傷はなさそうだ。2回目の突撃をアペルが盾で受けようとしていた。《アースシールド》でさえあと少しで貫通されたくらいの威力なのに、安物の盾で防げるわけがない。アペルに近付こうにもフライングフィッシュがアペルに着弾する方が早いだろう。だが走ってる最中にふと思った。初撃は無傷なのはどうしてだろう。ソフィアですら傷を負ったのにアペルは無傷だ。とりあえず疑問は置いておいて、アペルがフライングフィッシュにやられてもすぐ助けられるようにそのまま駆け寄る。


 フライングフィッシュがアペルに着弾する直前、アペルは盾を正面から斜め下に傾けた。ああ、なるほど、そういうことか。アペルは盾を上手く使って突撃を逸らしたのか、獣人の動体視力半端ないな。フライングフィッシュは地面の砂に穴を開け、その奥に埋まってしまっていた。


 ソフィアは2回目の突撃は無事に回避したようだ。だがソフィアがフライングフィッシュに当てられそうな攻撃といえばあれしかない。そう《ウィンドストーム》だ。相手はさっき《鑑定》したら水属性だったし、更に空を飛んでいるなら効果は抜群だろう。だがその考えは裏切られた。ソフィアは3回目の突撃を最小限の動きで回避すると、その突撃の軌道上にグラディウスを振るい真っ二つにしてしまった。何て正確な斬撃だ、短剣のおかげで振り回し易いってのはあるかもしれない。うん、多分俺だって出来る。きっと出来るに違いない。次飛んできたら斬ってやる。


 《アースシールド》にはまって身動きの取れないフライングフィッシュの所まで戻り、その飛び出した頭を斬り落とす。アペルは武器が届かないみたいで、穴に砂を入れ埋めてしまった。残していたモンスターも処理してソフィアに合流したのだった。

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