マッシュルーム
しばらく《剣術》を持っているホブゴブリン相手に戦闘訓練を行った。ソフィアが2体同時に相手取る練習をしたいと言い出したのだ。基本ソフィアが同時に2体と戦い、2体だけならそれを見守るが、3か4体居た場合は残りのホブゴブリンを俺が受け持った。最初に比べれば慣れてきたのか、ホブゴブリンを倒すのが早くなってきている。1体目を倒したら残りは魔法の詠唱しながら戦い、新しい魔法のスキルを手に入れようとがんばっていた。
「浄化の光よ、敵を撃ち抜けホーリービーム!!」
光球が生まれて一筋の光がホブゴブリンを撃ち抜き、光球が消えるのと同時にホブゴブリンが灰に変わる。魔法を使えばある程度簡単に倒せるのだが、2体同時に相手をしている時は、技術を磨くために使用を抑えている。そのせいで戦闘時間が長引いているってのはあるけれど、戦闘中の状況判断の訓練になるからこれでいいのだ。
ホブゴブリン2体との戦闘も大分楽になってきた頃、魔法解禁でホブゴブリンと戦ってみる事にした。遭遇したのはホブゴブリン3体。全てソフィアが1人で戦い、俺はそれを見守る。はい、魔法も使って本気で戦ったら余裕でした。あっという間にホブゴブリン3体が灰になって消えていった。これなら4体同時でも余裕じゃないかな。
結果に満足し先に進むことにした。すると《探知》にモンスター単体の反応があり、不思議に思ってそっちへ向かってみると、俺のトラウマになりかけた茸のモンスター、名称マッシュルームがそこに居た。そういえばソフィアはマッシュルームを見るのは初めてだろう。ここは《解毒》も持ってるしソフィアに戦わせてみよう。
「ソフィア、あの茸のマッシュルームっていうモンスターだけど、1人で戦ってみる?」
「うん、やってみる」
以前1人の時に苦戦した話をして、ソフィアがマッシュルームの前に立つ。慎重に相手の動きを見て行動すれば、胞子攻撃はちゃんと避けられるだろう。俺は遠くからソフィアが戦うのを見守る。って最近なんか見守ってばかりな気がする。まぁソフィアが強くなってくれれば良いか。
ソフィアがマッシュルームに対して様子を伺っている。俺と違って突っ込まないみたいだと思っていたら、ソフィアが間合いを詰める為に突っ込んだ。するとやはりマッシュルームが体を震えさせて胞子をばら撒いた。これをソフィアが避けれれば良し、避けれなければフォローに入らないとと思って見ていたが、ソフィアは《ウィンドスフィア》を使ってこれを防御した。そういえばロックモスの燐粉でも使ったし、予想はしてたのかね。何か負けた気分。まぁ、あの時まだレベル低かったし、《剣術》レベルもソフィアより下だし、喰らっても仕方がなかったんだ。うん、そういう事にしておこう。マッシュルームを倒したソフィアが戻ってきた。
「ウィンドスフィアは良い選択だったね」
「えっへん、あまり苦戦しなかった」
ぐぬぬ、その通りだから何も言えない。今度冒険者ギルドで場所を借りて、先輩の威厳というものを見せてやれねばならぬようだ。というかお互いに手合わせをしたほうが、スキル持ち相手の練習になる事に気付いてしまった。だが人目に付くのはまずいな、ダンジョンでするのも危険がありそうだし、良い場所はないかなぁ。
もう森には用はないとばかりに、出口を探してどんどん進んでいく。敵を見つけては魔法で先手を取って、斬り伏せていったおかげか、出口はそう時間がかからず見つける事ができた。いつも通り休憩を取ろうかと思ったが、道中で取ったからいらないと言われてしまった。
8層に着くとそこは草原が広がっていた。草原という事は敵はサーベルウルフだろう。7層と同じならばグリーンウルフはもう出て来なくて、サーベルウルフが2〜4体なのだろうか。遠目に見えるモンスターに向かって歩き出す。
やはり予想通りサーベルウルフが3体居て、こちらに気付き駆けてきていた。もう何も言わずともソフィアが2体、俺が1体を受け持つ形になり、サーベルウルフに対峙する。大きな牙以外はグリーンウルフと変わらないので、難なく斬り伏せて終わってしまった。これならホブゴブリンの方が厄介だったのは間違いないだろう。
この層はあまり練習にもならなく、収益もなさそうなので、さくっと終わらせる事にする。見晴らしが良く、出口の方向も丸わかりなので、そちらへ向かって進んだ。途中で遭遇するサーベルウルフ達は、遠距離のうちから《ウィンドストーム》と《エクスプロージョン》で早々に退場していった。以前は瀕死の状態だったのだが、今では確実に倒しきっているので、レベルが上がった事によって、魔法の威力も上がっているのだろう。
出口に辿り着き、疲労もなく休憩はいらないと言われるかと思ったが、時間的にはお昼に差し掛かっていそうで、お腹が空いたのかご飯を食べる事にした。ご飯は朝シェリーが用意してくれたパンだ。日本の物と比べると硬くて味気ない感じだが、これもまた昔の味というか、異世界の味という事にしておこう。異世界ならではの美味い物があったら良いな。
ご飯を食べてソフィアも満足気だ。8層はかなり短時間で終わらせたけど次は9層だ。それが終わればとうとう守護者の待ち受ける10層になる。守護者がどのくらい強いか分からないから戦う前に情報を手に入れておかないとな。
9層は順番からして洞窟だろうかと思いつつ出口へ入る。転送されるとやはり洞窟が広がっていて、そこそこ近場にロックモス3体が飛び交っていた。ロックモスは対空戦の練習になるから良い。この層は結構時間が掛かりそうだ。まぁ、ゆっくり行こう。
今回は地上のロックキャタピラーの糸を警戒する必要がなく、空中に居るロックモスだけに注意しておけば大丈夫だ。燐粉攻撃があるから《ウィンドスフィア》は常時展開しておいたほうが良さそうだ。ソフィアに指示を出してロックモスと戦う事にする。そこで2体受け持つのはどちらかというと、やはりソフィアが自分がやると言い出した。ソフィアががんばっているおかげで俺が楽できているわけだが、そろそろ俺にも練習をさせてもらおう。ソフィアは不満気だが仕方がない。出来る限り《探知》で4体居る方へ向かうから許しておくれ。
ロックモス1体はソフィアに任せ、2体を相手する。ロックモス空中の射程外から燐粉攻撃をしてくるが、ソフィアの《ウィンドスフィア》によってこれを無効化、燐粉が効かないことを理解したのか高度を落として物理攻撃を仕掛けてくる。ロックモスの体が岩みたいな身体を持っている分、前回は魔法メインで倒したが、近付いてきてくれるならツインエッジで斬ってみよう。
結果は明らかに硬そうなロックモスの身体をツインエッジが真っ二つにした。流石は《特別級》の武器だ。1体目のロックモスを斬ったのとは別のほうで2体目を斬り伏せる。うん、素晴らしい切れ味。
「その武器ずるい」
ソフィアは自分もロックモスを斬ってみたが、岩みたいな身体に弾かれてしまったみたいだ。そんな事言われてもどうしようもなく、ソフィアには魔法で戦ってもらうしかない。ソフィアは《剣術》で戦うのを諦め、《ライトニングボルト》でロックモスを狙い撃ち、《ホーリービーム》で止めを刺したのであった。




