表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/183

便利な本

 ソフィアが《水魔術》を取得して祝福したすぐ後の事だ。


「《氷魔術》でてきた」


 はい?俺は一瞬耳を疑った。今先程《水魔術》を取得したばかりのソフィアに、《氷魔術》が出てきただって?ソフィアは一気に《水魔術》をレベル10にしたというのか。確かにレベルも結構上がっていたし、スキルポイントは余っていただろう。俺とは違って取得スキル数もそんな多くないし、新しいスキルの取得まで、修練もあり時間がかかるから、スキルポイントを余らせておく必要がないのも分かる。だからといって、そんな即行で《水魔術》レベル10にしちゃうか普通。そして更に俺の目の前で《氷魔術》の魔法、《アイスランス》を試し打ちしている。氷柱のような細長い氷の槍が打ち出される。


 羨ましい。俺もレベルが上がって、スキルポイントも余っている事だし、スキル取っちゃうか。《双剣術》を取得したし次は《火魔術》のレベルを上げるか。俺も上位魔法欲しい。


 《火魔術》をレベル10にすると《炎魔術》が現れ、さっそく《炎魔術》をレベル1にして《フレイムブレス》が使えるようになった。試しに使ってみると、勢い良く燃え盛る炎が、幅はそこまで広くはないが、扇状に拡散しながら対象に向かっていく。


 うんうん、やっぱり新しいスキルって、使ってて気持ち良いね。ソフィアが羨ましそうにこっちを見ていた。あなたは《雷魔術》と《氷魔術》持っているでしょうが。


 お互いに新スキルの発表会を終えて、再び洞窟内を進んでいく。新たに遭遇した、ロックモスとロックキャタピラーと戦う前に、ソフィアに今回だけ担当チェンジをお願いした。何故かというと、新たに取得した《フレイムブレス》を試したかったからだ。先程試した使用感からすると、射程内ならロックモスに当てられる。試してみると、やはり扇状に拡散された炎が、ロックモスの回避を上回った。燃え盛る炎がロックモスを包み込み灰に変える。


 ソフィアの方はというと、ロックキャタピラーが2体同時に、《アイスランス》によって串刺しにされていた。ロックキャタピラーでは、もう遅れをとる事はなさそうだ。


 《フレイムブレス》が通用するのを確認してからは、ロックモスの相手をソフィアに返して、俺はロックキャタピラー達の相手をする。ソフィアとモンスターをどんどん倒しては進んで行く。あっという間に出口の白い膜を見つけてしまった。


 安全第一でゆっくりと攻略していたが、大分強くなってもっと先の階層へ行かないと、敵の強さ的にソフィアが満足しなさそうだ。人数も1人から2人になったんだし、もうちょっと攻略スピードを上げて、ガンガン進んでもいいのかもしれない。レベルも上がり辛くなったようにも感じる。


 7層へ行く前に休憩を挟むかソフィアに確認するが、必要ないと断られてしまった。なんかどんどんバトルジャンキーになっている気がしないでもない。白い膜に入り、7層を選択して転送される。


 転送された7層は、森の環境が広がっていた。やはりこのダンジョンは洞窟と森と草原3種のローテーションで構成されていそうだ。森ということはモンスターはゴブリン系か。前回はグリーンゴブリンとホブゴブリンの編成だったが、次は何が出てくるのだろう。


 草原とは違い見通しが悪く、進んでいるうちにさっそく《探知》に反応があり、反応の出たほうへ向かう。そこにいたのはホブゴブリンが2体。俺とソフィアで1体ずつ相手取れば大丈夫だろう。ソフィアと一緒にさくっとホブゴブリンを斬り伏せて先へ進む。


 歩き回ってわかった事は、この層はホブゴブリンが2体から4体の編成で出現するみたいだ。グリーンゴブリンは完全に見当たらない。ホブゴブリンが3体の時は俺が2体抱えている内に、ソフィアに1体処理してもらって無事だったが、4体いた時は戦うのを避けようかと思った。しかしソフィアがやる気を出していて、お互いに2体ずつ相手取る事になった。


 ホブゴブリン2体は意外と手強く、片付けるのに時間が掛かった。《剣術》のスキルを持っているからかもしれない。ソフィアの方はまだ戦っていて、やはり苦戦していた。ソフィアが1体を攻めようとすると、もう1体がそれのタイミングを取らせないように動くのだ。結局出鼻を挫かれて、なかなか思うように事が進まない。スキル持ちが相手だと、こうも厄介になるとは思ってもみなかった。


 俺の場合は《双剣術》のおかげでゴリ押し出来たが、ソフィアの場合は俺よりもレベルが低く、《剣術》もレベル8なので厳しそうだ。それでも何とか自分で2体共倒すと言われてしまったので、見守る事にした。やっぱり敵の数が多くなると、安全にためにもパーティメンバーが欲しくなる。フォーメーションから考えると前衛、中衛、後衛で3人は必要だ。現状は俺とソフィアはどこでも行けるスタンスだが、一番に欲しいとしたら回復専門の人。次点で盾持ちのしっかりした壁役がいれば、俺とソフィアが自由に遊撃出来そうだ。完全な魔法特化の魔術師も良いかもしれない。とりあえず今はスキルレベルで何とかなっているが、レベルの上がりにくくなった今、そのうち壁にぶち当たるのも遠くなさそうだ。


 本来ダンジョンは少人数で来る所ではない。それをスキルレベルのゴリ押しで、2人でも何とかしているのが現状なのだ。帰ったら仲間を増やすにはどうしたら良いか、プリメラさんに相談しよう。そして時間は掛かったが、ソフィアがホブゴブリンを倒して戻ってきた。


「おつかれさま、回復いる?」


「ちょっと欲しいかも」


 《治癒》をソフィアに使用する。ここで一度休憩をとる事にして、今に至るという訳だ。ソフィアは次はどうやってホブゴブリン2体を倒すか考えているらしい。その間に俺は冒険者の心得(下級編)を読む。冒険者の心得(下級偏)には新しく《光魔術》と《闇魔術》に《回復魔術》の練習法が載っていて、《回復魔術》は持っているので、光と闇を試しに詠唱して使ってみると、予想通り両方取得可能になったので、レベル1ずつ取得した。


 《光魔術》は《光明》と《ホーリービーム》が使えるようになり、《闇魔術》は《暗闇》と《イリュージョン》が使えるようになった。《光明》は周辺を明るく照らす魔法だ。《暗視》を持っている俺にはあまり役に立たないかもしれない。《ホーリービーム》は作り出した光球から、一筋の光が対象に向かって飛んでいき、着弾地点の土を熱で溶かしていた。レベル1でこの威力はやばい。《闇魔術》の方はというと、《暗闇》は対象の視界を奪う魔法で、《イリュージョン》は幻影で分身を作り出す魔法だ。


 新しい魔法を試していると、ソフィアが羨ましそうにこちらを見ていた。どの魔法が使いたいか聞いてみると全部と言われてしまい、ソフィアがまだ覚えていない《火魔術》《土魔術》《光魔術》《闇魔術》《回復魔術》それぞれの詠唱を教えてあげた。詠唱があっても使えるようになっておけば、いざという時に役に立つだろう。それにソフィアは恩恵のおかげでスキルもたくさん取れるわけだし、別に構わないよね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ