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上位魔術

 5層に来ると、今度は3層と同じ壮大な草原の景色が広がっていた。ここのダンジョン環境は、洞窟と森と草原だけかもしれないなと考えつつ、周りを見渡して状況を確認する。4層とパターンが同じだとするなら、グリーンウルフの上位種が出てくる可能性がある。だが、必勝コンボが使えるから問題なさそうだ。《ウィンドストーム》で一箇所に纏めて、《エクスプロージョン》で即死まではいかなくとも重症を負わせる事ができるだろう。


 5層の草原を進んでいき、モンスターと出会う度に必勝コンボを叩き込む。ちなみにグリーンウルフの上位種はサーベルウルフだった。大きな牙が上から生えていて、噛まれたらヤバそうだったが、近づけなければ意味はない。


 サーベルウルフに慣れてきた頃、次は接近戦で相手をする事にした。何事も練習して経験を積まなければ上達しない。そして接近戦で気を付けるのはあの大きな牙だ。あれだけは絶対に避けないと、骨ごと噛み千切られるだろう。まぁ、致命傷でも《回復魔術》で傷は何とかなるが、千切れたら治るかどうかまでは分からないし、試したくもない。


 遠めにモンスターを見つけてそちらへ向かい、サーベルウルフと対峙する。サーベルウルフの噛み付きに気を付けつつ、攻撃を対処していく。実際に戦ってみたところ、あの大きな牙さえ注意しておけばグリーンウルフと大差なかった。確認を終わらせると、俺は攻めに転じることにした。


 覚えたての《双剣術》の《クロスインパクト》を使ってみる。両手のツインエッジを使い交互に繰り出される8連撃がサーベルウルフを襲い、細切れにされて灰になっていった。


 ソフィアのほうにグリーンウルフ2体を任せてみたが、今回は1体を魔法で牽制しつつ、もう1体を相手取っていた。うん、ソフィアは順調に強くなっている。1体目のグリーンウルフを灰にすると2体目に《ウィンドトルネード》を使用した。初めて見る魔法だった。《風魔術》のレベルを上げた事で使えるようになったのだろう。ソフィアから竜巻がまっすぐにグリーンウルフまで伸びていき、それはグリーンウルフの身体に風穴を開けた。


「すごい威力だね、それって《風魔術》レベル10の魔法?」

 

「うん、ただ《風魔術》はレベル10が最高みたい。代わりに新しく《雷魔術》がでてきた」


 なんだって!?やはりあったか《雷魔術》。俺も欲しいぞ。ソフィアは他にも《風魔術》で《ウィンドスフィア》も使えるようになったと教えてくれた。《ウィンドスフィア》は身の回りに空気を纏って水中でも息ができるようにする魔法らしい。一応地上で使っても、この前の茸のモンスターの毒胞子攻撃からも身を守れそうな魔法だった。


 《雷魔術》はほしいが、そうするとソフィアと属性が被るのがなぁ。ソフィアが他の属性を使えないからには先に土か水の系統魔術を伸ばすべきだろう。ソフィアが他の属性を取れれば良いのだが。普通の人はどうやったら新たにスキルを取得できるんだろうか。ソフィアのためにもその辺りも調べる必要がありそうだ。


 ダンジョンに来て結構時間も経ったし、5層を終わらせて一度町に戻るか。ソフィアにそう告げると、物足りなさそうな顔をするが、また明日も来るからと納得してもらい、出口を探すことにした。出口を見つけるまでの間に、ソフィアは《雷魔術》を取得したみたいで、道中のグリーンウルフに《ライトニングボルト》を使用していた。羨ましい。


 無事に出口を見つけてダンジョンを出る。外は日が暮れ始めていて、オレンジ色の風景が目の前に広がっていた。ダンジョンに入っていた時間はちょうど良かったみたいだ。


「さ、宿でシェリーが待っているだろうし、帰ろうか」


 ソフィアを連れて森を抜け、街道に出て街へ向かう。街の入口でギルドカードを見せる時に、ソフィアがギルドカードを持っていないことに気付き、入場料が取られるかと思ったが、奴隷は所有物との事なので入場料は支払わずに済んだ。


 宿に着くとシェリーが夕飯の準備をし始めた。ダンジョンの中で適当に拾った茸や草を軽く食べたが、食べた量が少なくお腹が減っていたのか、美味しい香りがしてくるとソフィアの方からくーという可愛らしい音がした。


「もう間もなく出来ますので、少々お待ち下さい」


シェリーにも聞こえてしまったのか、そう言いつつ料理の仕上げに入っていった。そしてテーブルに次々と夕飯が運ばれてきた。だが料理の量は一人分だ。これはあれか、主人が先に食事して奴隷は後で別に食べるってやつか。


「シェリー今すぐ二人の分も作って。皆で一緒に食べよう」


「ショウジ様と一緒に食事なんて、滅相も御座いません。私達は後で頂きますので先にお召し上がり下さい」


「そこは主人の命令ってことでなんとか一緒に食べてもらえないかな。一人での食事は寂しいし、ソフィアもお腹を空かせてるしさ。ね?お願い」


 シェリーは本当に不思議なご主人様ですねと呟いて、二人分の料理の追加に取り掛かった。ついでにちゃんと同じ物を食べようと付け加えておいた。


 二人分の料理も追加も終わり、一緒のテーブルにつく。そういえばこの世界に来てからちゃんとした食事は初めてだった。俺は別に良かったのだが、シェリーは最初に出した少し冷めた料理は私が食べますと譲らなかった。この世界にも鳥や豚や牛肉は普通にあるらしく、今回は鶏肉のスープにパン、野菜のおひたしとシェリーから説明を受けた。日本の食事と比べるとやはり質素だが、それで茸の丸焼きとかよりはマシだ。


 食事を終えてシェリーから今日の報告を聞く。勇者とはこの世界にいる魔王に対抗するべく、人族のうちのラグゼニア国が召喚をしているらしい。ラグゼニア国は魔族の領地と隣接していて、すぐ西の山々を越えると魔族の領地になる。今現在は大規模な戦争にはなっていないが、勇者を召喚した後、国総出で勇者を鍛え上げ、勇者を筆頭に魔族の領地へと攻め込み、戦争が始まるんだとか。


 前回の勇者は数ヶ月前に破れ、再び召喚するには、前回の召喚から1年の歳月が経った、特別な日じゃないと出来ないとかで、今は再び勇者を召喚する準備中なのだとか。これらが本当のことだとすると、ひとつの真実が明らかになる。それは俺を召喚したのはこの国ではない事だ。となるとやはり勇者のことは隠しておいた方が良いな。


 そして勇者はやはり特別らしく、他の人に比べてスキルの伸びが異様に速いとの事だ。新しいスキルの取得もすぐに出来るし、スキルポイントが多くもらえていたらしい。そして勇者とパーティーを組むと、その恩恵は仲間にまで及び、仲間もスキルポイントを多くもらえるとの事。


 そこで俺は気付いた。確かにソフィアも既に《風魔法》がレベル10、《剣術》がレベル8、《雷魔術》がレベル1と、上位魔術のスキルまで手に入れてしまっている。俺もスキルポイント5倍の感覚のせいか気付かなかった。よくよく考えればスキルポイント5分の1だったら上位魔術まで取れなかっただろう。


 食事の後、ソフィアにスキルポイントのことを相談すると、人目がある所ではなるべく上位魔術を使わないという方針になった。何故かというとレベルからばれる可能性を考慮しての事だ。ただし、状況に応じて使わないといけない時は、使用を許可するというルールを決めて、初めてのダンジョンで疲労もありそうだし、明日のダンジョンの為に早めに寝る事にした。

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