称号
3層の丘で休憩を終えて、4層へとやってきた。そこは2層と同じような森の環境が広がっていた。
「2層と同じ森の階層みたいだね」
「森は好き。落ち着く」
流石はエルフ。ただ草原と違って木々があるから、3層で使っていた、範囲魔法の必勝法は使えないな。ここは近接戦闘か単体魔法で戦うしかないか。まぁ《剣術》の覚えた新しい技を使ってみよう。
《探知》でモンスターを探し出し、いざ遭遇すると、4層のモンスターは2層と変わらずゴブリンで、名称はグリーンゴブリンだった。相変わらずチームを組んで行動しているようだ。ただ1体だけ人間の体型に近いゴブリンがいて、《鑑定》すると名称はホブゴブリンとなっていた。グリーンゴブリンの上位種だろう。ステータスがグリーンゴブリンより多少上がっていて、片手剣と盾を持ち、更にスキルに《剣術》をレベル ホブゴブリンの相手は俺が勤めるとして、グリーンゴブリンの1体は《アースシールド》で閉じ込めて、ソフィアが残りのグリーンゴブリンを倒して終わりだな。
ソフィアに作戦を伝え、ホブゴブリンに《ファイヤジャベリン》を放つ。ホブゴブリンは反応してきたが、回避出来ず盾で防御した。防御しているうちに《アースシールド》でグリーンゴブリン1体を閉じ込める。そして、ソフィアは《ウィンドカッター》でグリーンゴブリンとホブゴブリンを引き離していく。
ホブゴブリンは《ファイヤジャベリン》を防御をしたが、結構ダメージが入っているみたいで動きが遅かった。盾も木製のものだったので、焼け焦げて使い物にならなそうだ。
ホブゴブリンに目掛けて新しい技、《デルタスラッシュ》を放つ。袈裟懸けに斬り落として水平斬りの後、逆袈裟斬りで斬り上げて、三角を作るように剣尖が走る。ホブゴブリンが灰になるのを確認し、再びソフィアの様子を伺う。今度は1対1で魔法を使わずに、グリーンゴブリンと短剣で戦おうとしていた。グリーンゴブリンは《剣術》を持っていないが、ソフィアも持っていないから心配だ。
ただ《剣術》を取得する為には鍛錬や実践をして、ある程度上達しないとスキル欄に出てこない。俺の場合は勇者の恩恵ですぐに取得出来たが、ソフィアは別だろう。だからといって魔法ばかりじゃ接近戦が上達しないし、過保護過ぎるだろうか。まぁ、怪我をしたら《回復魔術》があるし、本人の思う通りにやらせてみよう。
一応グリーンゴブリンを《鑑定》してみる。レベルを上げてきたおかげで、ステータスはソフィアに分がある。双方相手の出方を伺っていたが、先にグリーンゴブリンが痺れを切らし動いた。グリーンゴブリンの短剣がソフィアに向かって突き出される。ソフィアはそれを避けて、相手の懐へ入り込み、顔面に短剣を突き立てた。グリーンゴブリンが灰に変わる。
ソフィアは特に危なげなく勝利した。そこで閉じ込めているグリーンゴブリンも倒すか聞くと、やる気に満ちた声が返ってきた。グリーンゴブリンを解放し、ソフィアが向かい合う。2連戦でもソフィアは難なくグリーンゴブリンに勝ち越した。
森の中を暫く歩き回り、ホブゴブリンは俺が倒して、グリーンゴブリンはソフィアが倒すという形が出来上がっていた。ホブゴブリンに《シャープスラッシュ》も試してみた。これは斬り落としから始まり、斬り上げて水平斬り、一回転して再び水平斬りを繰り出す技だった。何体も倒して慣れてきた頃、ソフィアにグリーンゴブリン2体と同時に戦う事を提案してみた。これは俺も辿ってきた道だ。今はまだモンスターの数が少ないから良いが、いつかはモンスターに囲まれたりする日が来るかもしれない。
ソフィアは意気込んでグリーンゴブリン2体を相手取ったが、やはりまだ同時は厳しいらしく少しずつ傷を負っていく。ソフィアの攻撃も当たってはいるのだが、それも致命傷となるようなものは無く、意識を分散されて集中しきれていない。アドバイスっていうほど俺も上手いわけではないが、何か言った方がいいだろうか。
悶々としていると、ソフィアが何か思いついたようで、苦悶の表情から一変して真剣な表情になった。静観を貫いていると、ソフィアが動いた。2体を視界内に入れる立ち位置はそのままに、片方のグリーンゴブリンに突っ込んで行く。グリーンゴブリンからの攻撃を避けるのと同時に、グリーンゴブリン2体を自分の正面の直線上にいるように回り込む。これで奥にいるグリーンゴブリンは手前のグリーンゴブリンが邪魔で攻撃出来ない。少しの間だけだが事実上の1対1だ。奥のゴブリンが回り込んでくるまでには終わらせられれば、今までやっていた2連戦と同じ事だ。問題無く倒せるだろう。グリーンゴブリンはその後、見事に順番に倒されて灰になっていった。
「ソフィアおつかれさま。今回復するね」
《治癒》をソフィアに使用して、回復させた。しかし、立ち回りも大事だよなぁ。俺の場合、武器の強さで1体ずつゴリ押しで処理しているような感じだし、これからもソフィアから学ぶ事は沢山ありそうだ。
ソフィアが2体同時に相手取っても傷を負わなくなってきた。レベルも俺が24になり、ソフィアが15になった時だった。ソフィアのスキルリストに《剣術》が出現した。後はスキルポイントが余っていたらしいので、一気にに《剣術》のレベルを8まで上げていた。
4層は終わりにして5層へ行こうと、白い膜の出口を探す。森の中なので見通しも悪く、なかなか見つからない。暫くして見つかった頃には更にレベルが上がってしまっていた。
3層の時と同じように、5層へ行く前に休憩を取る事にした。結構レベルが上がったのでスキルポイントは問題なくなった。俺は《剣術》の上達スキル《双剣術》を取得して《クロスインパクト》が使えるようになった。ソフィアの方は《風魔術》をレベル10にしていた。
ソフィアは《風魔術》がレベル10に《剣術》がレベル8。そしてスキルポイントはまだ余ってあると言う。ソフィアに断りを入れて《鑑定》させてもらう。
確かにそこには《風魔術》レベル10と《剣術》が8とあった。そしてエルフだと思ってた種族はハーフエルフと記載されていた。ソフィアにハーフエルフの事を尋ねると、ソフィアは人族の父親とエルフ族の母親の間に生まれたらしい。父親は幼い頃から既に亡くなっていて、母親と二人でエルフの領地内の限りなく人族領に近い集落で過ごしていたらしい。ハーフエルフの娘を持つ事から、集落の中でも隔離されたような離れた場所で生活をしていて、当時はハーフエルフである事から、エルフの子供達に虐められていた。母親が疲労で亡くなってからは、更に虐めが増長したという事だ。だが、隔離されたような離れた場所で生活してたおかげか、モンスターに集落が襲われた時に運良く巻き込まれず、その後、エルフが嫌で人族領に入り、生活のために窃盗をしていたという。その生活は長く続かず捕まってしまい、奴隷として売られる事になったとの事だ。
結構大変な環境で育ってきたみたいだ。良くある話だが、この世界でもハーフというのは忌み嫌われるらしい。俺はハーフとか気にしないと伝えるとソフィアは少しはにかみ俯いてしまった。更にもっと細かくステータスを見て行くと、称号の所に勇者の仲間とあった。
「ソフィア、自分のステータスの称号の所見た?」
「うん、ショウジは勇者様でしょ?」
バレてるー。思いっきりバレてるじゃん。よく考えたら称号に勇者ってあったら《鑑定》されると1発でバレるじゃないか。今は過疎化しているダンジョンに篭っているから、何とかなっているけど、これは早急に何とかせねば。
《鑑定》を妨害するか、称号の所を隠蔽するか、そんな便利なスキルはないだろうか。また、あったとしたら、それを覚えるにはどうしたら良いかだ。
「ソフィア、俺が勇者って事は他の人には内緒でお願い」
「うん、分かった」
ソフィアにお願いして、5層へ進むのだった。




