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奇襲対策

「お兄ちゃん達、行ってらっしゃい」


「行ってきます」


 屋敷に留守番のヨシノを残し、今日もダンジョンに向かった。


 23層は夜の森らしく出てくるモンスターはスニークシャドウパンサーという主に奇襲の攻撃を仕掛けてきて、通常戦闘においても俊敏さが厄介なモンスターらしい。


 それとは別にフレイムレオファントムというボスが出るらしい。これも《霊体》所持のモンスターで、レオファントムという多少弱体化した分身体を召喚するとの事だ。


 23層の予習を済ませてからダンジョンの中に入った。転送されると目の前には暗闇に包まれた森が広がっていた。木々の隙間から光が差し込むが、それだけでは明るさが足りず真っ暗なので《光明》で周囲を照らす。


「夜の森とはまた面倒ですね。明かりを灯しても障害物が多くて見通しが悪いですし、相手は奇襲の得意なスニークシャドウパンサーですから、警戒を怠らないようにしましょう」


「そうだね。《探知》があるとはいえ、相手のスキルから考えると《探知》に反応しないかもしれないから気をつけて行こう」


 スニークシャドウパンサーは《隠密》というスキルを所持している。名前からして隠れたりするスキルだろう。そこから考えると《探知》に反応しない可能性があった。その場合を踏まえて俺達は注意しながら進んでいく。


 周辺にモンスターが居ないだけなのか、それとも《隠密》が《探知》に反応しないのか、《探知》には未だにモンスターの反応はなかった。


「そろそろ遭遇しても良さそうだけどね」


 シェリーの誘導でホワイトゲートに向かってまっすぐ進んでいる。それなりの距離を歩いたはずなのだが、《探知》にも反応がないしモンスターに遭遇する事もない。《光明》を使っているから辺りからは俺達がここに居るのがバレバレなはずなのだ。皆が《暗視》を持っていれば《光明》を使わなくても良くなり、モンスターに俺達の居場所を教える事にもならずに済むのだけれど、そこは持っていないのだから仕方がない。でも位置がバレていたとすると、もしかしたらスニークシャドウパンサーはもう俺達の周囲に居て、様子を伺いつつ奇襲のタイミングを計っているのだろうか。


『ちょっと試してみたい事があるんだけど良いかな?』


『なに?』


『なんでしょう?』


『どうしたのです?』


 もし相手が様子を伺っているとしたら良い事を思い付いた。聞かれたとしても俺達の会話の内容を理解できるか分からないが、念の為にそれを俺は《念話》を使って皆に伝える。


『《光明》を使ってる時点でスニークシャドウパンサーには位置がバレていると思うんだ。《探知》に反応はないけど相手の《隠密》で反応に現れないなら、既に周囲で様子を伺っているんじゃないかな。ならワザと隙を見せれば……』


『相手が攻撃を仕掛けてくるという事ですね』


『そういう事』


 シェリーが俺のいいたい事を代弁してくれた。とりあえずそんな提案をしてみるが、皆俺の提案に賛成してくれた。このままいつまでも警戒しながら進んでいくのも疲れるし、ワザと隙を見せて襲ってもらおう。


 そしてワザと隙を作ってみると、そこを待っていたとばかりに左右から飛び出してくる影が幾つもあった。それは闇に紛れる黒色の毛並みをしたヒョウだった。こいつらがスニークシャドウパンサーだろう。相手を確認した瞬間《探知》にも反応が現れた。やはり《隠密》のせいで《探知》は役に立たないらしい。


 俺達はスニークシャドウパンサーを待ってましたとばかりに返り討ちにする。相手は完全に隙を突いたと思っていたみたいで、奇襲が失敗した事に混乱し狼狽えている間に次々と斬り伏せていった。


「ショウジの作戦上手くいったね」


「流石ショウジ様ですね。見事にスニークシャドウパンサーが罠に掛かりました」


「来ると分かっていれば対処は簡単です」


 無事にスニークシャドウパンサーを倒して、再び警戒しながら進んでいく。一定距離歩く度に再びワザと隙を見せて襲わせ、まんまと姿を現すスニークシャドウパンサーを斬り伏せていった。


 それを何度か繰り返していると《探知》に1体のモンスターと5人の冒険者と思われる反応があった。スニークシャドウパンサーなら《探知》には反応しない。だが冒険者との戦闘中なら《隠密》の効果が発揮されていない可能性があった。それは先程の戦闘でもスニークシャドウパンサーが飛び出してきた後は《探知》に反応がある事からも判断出来る。


 気にはなったが冒険者同士の暗黙のルールもある。俺はそのままシェリーの案内通りにホワイトゲートのある方向へと向かった。しかし、再び見た《探知》の反応にはモンスターが1体から3体に増えていた。俺の直感がこのモンスターの反応がフレイムレオファントムのものだと告げていた。戦うかどうかは分からないがその戦闘を見ておいても損はないだろう。


「ちょっと向こうの方でボスっぽい相手と戦っている反応があるんだけど、見に行っても良い?」


「私も見たい」


「見学するです」


 ソフィアもアペルも俺に賛同してくれる。


「また面倒事に巻き込まれなければ良いですけどね」


 とは言いつつもシェリーも反対ではないようだった。全員の許可も下りたので転進して《探知》の反応のする方へ向かったのだった。

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