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小学生男子だった僕、悪役令嬢の取り巻きに転生したのに、舞踏会で料理を食べてただけで王子様に選ばれました  作者: 奈香乃屋載叶(東都新宮)


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第34話 試験が終わって

 でも殿下が笑ったためか、徐々に空気が落ち着いていく。

 さっきまでとは違っていた。

 審査席の教師達が小声で何かを交わす。堅物のハンナ教師でさえ、口元をゆるめていた。

 その様子に、ボクはようやく『怒られなかったんだ』と実感した。


「……ふむ、確かに”想定外への反応”としては誠実そのものですね。減点にはできません」


 ライプツィヒ教授のコメント共に、周囲からは笑いと安堵の息が漏れる。

 笑いの波が広がっていく。

 その中で、ボクは肩の力が抜けるのを感じた。

 あれほど怖かった試験会場の視線が、今は不思議と温かく思える。

 ロランスは扇子で口元を隠しながら、震えていた。


「まあ、咲きたての花にはまだ棘がないものですわ。無垢もまた一つの礼法ですのよ」


 ペタル講師がボクの反応に対して、フォローを入れていた。

 厳しいコメントかなって思ったんだけれどね。


「ポラリス嬢、戻って良いですよ」


「は、はい……」


 ボクは席へと戻っていく。

 大失敗かなって思ったけれども、何とかなったのかな。

 どっちにしても高い点数は難しいかもしれないけれど。


「……次からは”お子様”は禁句よ」


 ゼナイド様が扇子で顔を隠しながら、小声で耳打ちをしていた。

 でもその表情は微笑んでいた。


「は、はい……」


 どっちなんだろうね。

 分からない。けれども、それ以上恥ずかしいという気持ちにはならなかった。


「でも、あなたが”子供らしさ”を捨てない限り、貴婦人の優しさは失われないわ」


(失敗したと思ったのに……笑われてるのに、怖くない)


 ボク自身が微笑みたくなってくる。

 間違っていたかもしれないけれど、今はこれでいいかも。


(笑われても、ちゃんと立っていられる……これが、”芯”を持つってことなのかな)

 その後もまだ終わっていない模範組の令嬢達も受けていったけれども、少し緊張が解けたのか上手く返事をしていた。

 これって良かったのかな。


「では今回の礼法実技試験は、これにて終了いたします。殿下、本日はありがとうございました」


「こちらこそ、私も楽しめたよ」


 殿下は嬉しそうにしながら、試験会場を後にしていた。

 ああ、何とか実技試験は終えることが出来た。

 疲労感と共に安心感が出てくる。


「ふぅ……」


「もー、最高だったよ! ポラリスさん、あたしね、笑いをこらえるのに必死だったよ!」


 一息ついたところに、ロランスが駆け寄ってきた。

 嬉しそうにしながらボクの事を褒めていた。


「わ、笑うところじゃないってば!」


「でもね、殿下が笑ったの、初めて見たよ」


「そうだったんだ」


 ロランスからそう言われて、ちょっと面白く感じた。

 殿下が笑うのって、珍しいことなんだね。

 よくにっこりしているイメージなんだけれども。違ったかな。


「さて、これで学院中の噂は、貴女が総取りね」


 ゼナイド様もやってきた。

 噂を総取りって……大変な事になりそう。婚約候補だけじゃなくて、今回の事まで……

 こんなので注目を集めるの!?


「えええ!?」


「覚悟した方が良いわね」


「そ、そうします……」


 どんな噂になるんだろうね。

 心配になってきた……


「でもね……今日、貴女は二度咲いたわ。ひとつは舞で、もうひとつは、その素直さで。次に咲く時も、その芯を忘れないことね」


「は、はい……」


 シャンデリアの光が、ふたたびドレスの裾を揺らした。

 胸の奥で、あの言葉がもう一度響いた。

 ーー”芯を持ちなさい”。

 羞恥も、光も、笑いも、その芯の中にある。

 笑い声の中で、ボクは自分でも驚くほど静かに息を吐いた。

 ーー恥ずかしくても、ちゃんと笑えている。

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