第228話 第二聖女41
翌日。
ボク達は再び南区へ来ていた。
配給を受けるための列。
ざわめきが聞こえている。
まだ長い。
でも。
(回ってる)
止まってはいない。
「……増えていますわね」
アデリナ様が小さく呟く。
「うん」
前より、人が。
(集まってる)
視線も多い。
でも今日は少し違った。
「……あれ」
ロランスが小さく指を差す。
「神殿の人?」
白衣。
薄い青の記録紐。
セレスさんが静かに立っていた。
「記録官セレスです」
一礼。
「本日分記録を開始します」
細い筆。
記録板。
封印紐。
周囲の空気が少し変わる。
(見てる)
商人。
列の住民。
役人。
全員が。
「……本当に神殿が来た」
小さな声。
「記録されるのか?」
「正式に?」
ざわめきが広がる。
セレスさんは感情を動かさない。
「証言を行う方は順番に」
「日時、場所、内容を確認します」
静かに。
淡々と。
でも。
(残る)
「第二聖女様」
グレッグが近づいてきた。
「……昨日の件」
「追加で出す」
紙。
今度は複数。
ロランスが目を見開く。
「まだあったの?」
「店の奥に隠してた」
一拍。
「消されると思ってたからな」
セレスが受け取る。
「神殿監査室保管対象として登録します」
封印印。
記録番号。
その場で付けられていく。
「……早いですわね」
アデリナ様が少し驚いたように呟く。
「改竄防止印も使用しています」
セレスは即答した。
「監査前保全手順です」
周囲が静かになる。
(変わった)
今までと。
商人の一人が、小さく口を開いた。
「……なら」
一拍。
「俺も話す」
また。
「うちにも来た」
「配給減らせって」
「断ったら登録外すって言われた」
声が増えていく。
セレスが全てを書き留めていた。
名前、時間、場所、内容。
逃がさないように。
「これで」
アデリナ様が小さく息を吐く。
「管理局側は、“第二聖女の独断”と言いづらくなりましたわね」
「うん」
「神殿名義だから」
その時だった。
「……何をしている」
低い声。
振り返る。
管理局側の役人。
でも。
(止まった)
役人の視線。
セレスを見る。
「……記録官?」
小さく。
驚いたみたいに。
列の空気が少し変わる。
「神殿まで来てるのか……」
「そこまで大きくなっているの?」
小さな声。
でも。
(見えた)
管理局側が、”隠していた側”だって。
「神殿正式記録です」
セレスは静かに返した。
「監査前保全措置として同行しています」
役人が黙る。
セレスさんは表情を変えない。
役人を見ても、周囲を見ても。
ただ、記録版へ視線を落とした。
「続けてください、証言を記録します」
(想定外)
「……本当に、変わってきてる
ロランスが小さく呟いた。
「うん」
「もう止まらないね」
一拍。
「たぶん」
ボクは見ていた。
空気の止まり方を。




