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第九話 次のルートは?

 イベント開始から五日目の夜。


 あの後、特に順位に拘ってないトモエと共に山の上層部まで登ってきた。


 道中のトレジャーは俺の異能で誰も通ってない道を選べるおかげでうはうはだ。その代わりに俺らの進む道は他のプレイヤーが避けたルートを意味する。


「『エクスプロージョン』」


 挨拶代わりに飛び起きたストーンゴーレムにトモエが爆炎をお見舞いする。これはトモエが一緒で助かった、魔法ビルド向けな敵だわ。


「ここは無機物モンスター縛りみたいね」

「ガーゴイルはいいとして、地中に埋まってるゴーレムはやっかいだ」


 こういうアンデッドじゃない非生命体は起動する直前まで索敵に引っかかりにくい。俺の異能も直接触れていれば読めるが、こいつらは感情が希薄過ぎて事前に察知しにくい。


「メインアタッカーは頼む。俺は盾するわ」


 アウラのハンマーは俺が使うには重く、防御を抜けそうな武器はない。属性を付与すれば戦えるっちゃ戦えるが、費用対効果が薄い。それなら素直にトモエの魔法に頼った方が早いだろう。


 というわけで、火力は捨てて大盾をメインに攻撃を察知する『直感』と防御系のスキルでビルドを構築する。俺が珍しく装備するのはドラゴン素材の皮鎧である。


 皮鎧だからうるさい金属音はしない。しかしどうにもこの窮屈感は慣れない。そう思って歩いていると、真横からマナの反応がした。


 その直後、


 壁の中から鉄色の腕が伸びてくる。


「金属に抱きしめられる趣味はないっつーの。『シールドバッシュ』」


 この盾はキュクロプスのビームを受けて破損した、あの盾だ。


 修理材を大量にぶっこんで修復したこいつでアイアンであろうゴーレムの腕を横からぶんなぐる。


「そのまま地面の中で眠っておれ!」


 腕を弾かれて動きを止めたゴーレムにアウラがハンマーで追撃する。


 元々地面に半分以上埋まっていたゴーレムは顔面に質量の塊を打ち込まれて、壁の中へ強引に戻された。


「埋めたら剥ぎ取りが面倒になるだろ。頭を出したタイミングで上からたたき落とした方がよかったんじゃないか?」

「あ……。やってしまったものは仕方ない。がんばって掘り出してくれ」


 自分の失敗にアウラがしかめっ面をしていると、トモエが首を振る。


「その必要は無さそうよ」


 もぞもぞと壁から二メートルほどのゴーレムが落ちてきた。形状としては実にシンプルなものだ。全身金属のごつい手足に胴体の上には頭部らしきものが乗っている。


 アウラのハンマーを食らって凹みすらしないな。


「あんまり威力のある魔法は危ないわね。雷でコアを直接破壊するわ」


 これだから洞窟の中で戦うのは神経を使うのよ。


 トモエはぽろっとこぼした愚痴と一緒に魔法の準備に取り掛かる。アーツや魔法が充実すればするほど回りに与える影響は大きくなる。特に火力が高く攻撃範囲の広い攻撃手段である魔法は狭い場所で戦うのは注意が必要だ。


「アルコバレーノにストックは?」

「あるけどそこまで追い詰められてないでしょ」

「出し惜しみすんなよ」

「先に進んでから死んだら戻ってくるの面倒じゃない」


 こちとらクラフトマンなんだぞ。前衛クラスほどSTRやVITの補正値はそこまで高くねえんだよ。


 一発一発がアウラのハンマー並みに重い衝突を受け流しながら、俺は必死な声を上げる。


「ちょっとトモエさん!? 俺の即席タンクじゃそこまで重量級の攻撃は防げませんからね」

「気合で防ぎなさいよ」

「理不尽アンド無茶振り! ――ナイスカットだ、アウラ!」


 アウラが死角からゴーレムを殴って攻撃をキャンセルする。たった一発防いだだけだが、滅茶苦茶助かる。


「こいつで足止めに――粘着トラップなんてこの重量に効くわけないですよね」


 俺の投げた粘着性の液体を辺りにぶちまける投擲アイテムを放り投げるが、ゴーレムのSTRには道路に落ちるガム程度の効果しかない。


「『アイアンシェル』――これで打ち切りだ。防御アーツはクールタイムが間に合わねえぞ」

「はいはい。威力が足りなかったら知らないわよ――『ライトニングバースト』」


 青い稲妻が四発。


 俺とアウラには高い位置、ゴーレムの胴体上部にあるコアを誤差無く着弾させた。


「やったか!」

「ちょっと、カオル……。無駄なフラグ詠唱しないでよ」

「どうやら本当にやったようじゃのう」


 赤い歪な形をしたコアにヒビが入る。ゴーレムが無理やり体を動かそうとコアを動かしたのがトドメとなり、ヒビは取り返しのつかない深さまで広がり砕け散った。


「さっさと戦利品を回収して先に進みますか」

「これでまだ入口付近なのよね。きつくない?」


 うわ、こいつ中身がミスリルじゃねえか。どおりで硬いわけだ。


 俺が逆見た目詐欺のゴーレムに嫌な顔をしていると、トモエも先のことを考えて億劫になる。


「普通の構成でメインタンクと魔法アタッカーが揃ってたら楽なルートなんだろうな」

「うちはなんちゃってタンクだからきついのね」

「守ってやらねえぞ、紙装甲」

「そうなるとご主人は仕事がなくなるぞ?」

「俺もアルコバレーノを持ってたら、もっと本格的な魔法装備を揃えてたわ」


 時間的に物理ビルドがメインになるしかなかったんだよ。


 ここから先に待ってるのが重量級モンスターばかりなことを察して、俺は大きなため息を吐いた。

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