18.【マナの鉄槌と鋼の強さ】
「何をしにきたグレン。」
目の前で殺意を滲ませる男、グレンにアワリティアは魔力の波動を叩きつけた。
投げかけられた言葉に、グレンは笑う。
「お前はツキだから殺せないが、282に半殺しにしろって言われたからな。やるしかない。」
「お前はあいつの言いなりか。」
強い軽蔑の視線を向けて、アワリティアが手中に魔力を纏わせた。
刹那、空間がひしゃげ、漆黒の稲妻と共に顕現した。
ーーーアワリティア、マモンVSグレン
「シールドに閉じ込められた鬱憤が溜まってるんだ、精々楽しませろよっ!」
グレンの豪脚が大地を割り、消える肢体を目で追った。
しかし、アワリティアにさえ捉えられない速度で移動するグレンを、アワリティアは視界におさめられない。
「マモン。私を死守しろ。」
アワリティアが黒いローブを脱ぎ捨て、瘴気の合間から艶かしい肢体が現れる。
肩の少し下あたりまで伸びた黒髪に、白い服を纏った女。
「解析・・・!」
アワリティアの唱えた詠唱に反応して、漆黒のゲートが無数に口を開けた。
底の見えないそのゲートを見て、アワリティアが笑う。
それは、勝てるという自信ではない。勝てるかもしれないという強者の眼力が導き出した希望的観測にだ。
「すっ」
白い衣服を翻し、アワリティアの足元で翡翠の輝きがおこる。
美しい輝きを増した閃光が、アワリティアを上空へ弾きだした。
爆音が鳴り響き、耳鳴りに顔をしかめる。
しかし、
「捉えた。」
アワリティアの瞳が、グレンの疾風の如き高速移動を捉えた。
片足を枝にのせ、またグレンが虚空へ消える。樹木の枝は木っ端微塵にたたき割れ、その膂力を伝えていた。
そして、アワリティアが導き出したグレンの移動起動は、
「はぁっ!」
マモンの硬い刃がグレンの剣を受け止めた。
殺しきれなかった威力が爪を走り、亀裂が小さく音をならす。
マモンの作った隙を見て、アワリティアの展開した漆黒のゲートがグレンを囲む。
「顕現魔法『その強欲は刃を求める』か。」
ほくそ笑んだグレンに向かい、アワリティアが最大火力、最大威力、最大発射数の全力攻撃を叩き込む。
土属性を始めとし、様々な魔力が行き交い、輝きあい、共鳴しあう。
2属性を扱うのも難しいという魔法を、アワリティアのゲートは数えきれない属性魔力を放つ。
ほくそ笑んだグレンの表情はそう、
「効かないよ・・・」
と、未来を暗示していた。
「っ。ジークフリート」
忌々しく呟くアワリティアが、自由落下を始める。
それを見て、グレンが樹木を力強く抉った。否、ただ、蹴っただけだ。それだけで、あの巨大な木に穴が開く。
高速で刃を振り上げ、迫る白銀の剣士グレン。
このまま見過ごせば、刃で負う傷は深い。
無論、アワリティアは反撃を止める。圧倒的な、大魔力によって。
「それは、悪魔の能力か・・・」
アワリティアの手中に、漆黒のフォルムを光らせる長剣。日本刀が現れた。
その長剣を構え、アワリティアが宣言する。
「私の悪魔、マモンの変化形態。魔刀『クルファリカ』。」
「愛刀『剣』」
クルファリカが蠢き、瘴気が溢れ出した。
そして、その瘴気に吸い寄せられるように輝くマナが集まりだす。
黒き刀剣に呑まれたマナが、クルファリカの刀身を覆った。
「滅べっ!」
世界を破る一太刀が、強欲に集められ放たれた。
大地に巨大な爪痕を残し、轟音と衝撃が吹き荒れる。
輝く黒きマナが地面を這い、黒煙が森に立ち込めた。
それでも、アワリティアは攻撃の刃を緩めない。緩められない。
クルファリカの強欲が、大気に満ちたマナをかき集め、収束して刃へと取り込まれる。
「解放っ!」
取り込まれた爆炎のマナが、煮えたぎる熱風を解放した。
アワリティアが振るうクリファリカが、巨大な爆撃を大地に叩きつける。
「全く、勿体無い。」
黒煙を全身に絡ませ、黒い煤に頰を汚すグレンが、またしても無傷で跳躍する。
白銀に刃を光らせる刀剣を振り上げ、グレンの剣撃がアワリティアに迫る。
「マモン、奴を抑えろ!」
腕を軽々と抉り取ったグレン、そして自身の腕だった物に見向きもせず、マモンはグレンに咆哮をあげた。
それを聞くグレンが剣を構えなおし、
一閃。
きらめく残像すらも、マモンは捉えられなかった。
「戻れ!」
主人であるアワリティアに従い、クリファリカとしてマモンが彼女の手中にはいる。
クリファリカを手放してアワリティアが作ったのは、アワリティアが授かった力、顕現魔法『その強欲は刃を求める』と、マモンの変化形態『クリファリカ』を組み合わせた切り札。
「強欲一刀。」
ゴゥッと、漆黒のゲートから輝かしいマナが溢れ出す。そして、強欲に引き寄せられた魔法力が、クリファリカへと収束する。
幾多の力が混ざり合う、最大威力の一太刀が、此処に。放出される。
「残念。」
意識が切り離される直前、耳元で滅ぼしたはずの声が響いた。
そして、頭部に確かな衝撃。
虹色のマナが吹き荒れるカーミフス大樹林に、死闘の余波が強く響いた。
そして、この余波による大地へのダメージにより、大陥没の時期が早まった。
ーーー決着は、もうすぐそこに・・・。
そろそろ決着です。アワリティアと戦わない展開はありません。ちゃんとアキトに戦ってもらいます。(頭脳で)




