12.【終着の夢】
程よい涼しさの中、薄い毛布を羽織りアキトは眠りについた。
黒煙が、吹き荒れた。
「あれ?ここは・・・」
さっきまで眠っていた宿ではない。
辺りには死体と武器が転がり、何処からともなく嗤い声が響いていた。その笑い声から、死体が量産されていく。
「お・・・まえ・・・」
その姿をみて、目眩がした。
いや、別にその残虐さにおののいた訳ではない。それは、そいつの外見が、どうしようもなく一致したから。
信じたくない。こんな事をする奴じゃ、ないはずだ。心の奥底で、感情が溢れる。
「あれ、居たんだ。」
「っ!?」
なんの武器も持たずに襲い来る人々を殺すそいつは、アキトに嬉しそうに近付いてきた。
ゆったりとした足取り。横から、メイスを持った兵士が飛びかかる。
しかし、その兵士は見えない膂力に全身を打たれ、血飛沫を撒き散らしながら吹き飛んだ。
「会いたかったよ、アキト」
やめろ。親しそうに話しかけるな。
嘔吐感にも似た悪感情が、全身を駆け抜けた。
「あの時はありがとう。おかげで強くなれた。」
「は・・・なんの話を・・・!?」
「これの話だよ」
「・・・あ」
次の瞬間、業火が竜巻のように吹き荒れ、人々の断末魔が木霊した。
器用にアキトを避けて現れた業火の竜巻は、その勢いを止めずに、爆発をくりかえす。
「君がこの魔法をくれた。」
業火の隙間から、見知った木材が飛来した。
脆くなっていたそれは、アキトの肩に直撃し、弾け飛んだ。
「俺が、これを、お前・・・に?」
「覚えてないのかい?」
「は・・・?」
すると、楽しそうに声をあげて笑った奴が、アキトの肩を叩いた。
「見ておくといい。」
手のひらを突き出し、何かを呟いた。そして、手中から噴き出る熱波が、顕現する。
ゴゥと空気を燃やす煉獄が、直進した。トーチカのような建造物を数個巻き込み、完全武装の集団を焼き払った。
満足そうに頷くと、次は両手をしっかり握り、
「ふっはは、こういうのやって見たかったんだ。」
炎の双剣が、その手中でゆらりゆらりと揺れて居た。
その双剣を構え、両足の筋肉を引きしぼり、その細い身体が矢の如き速さで射出された。立っていた大地を崩壊させる程の力が加わり、その双剣が猛威を振るい始めた。
全身を焔の痛みに貫かれ、兵士達が断末魔を上げる。
「お前、何やって」
「あっちだったら、もう何回ファルナを倒したか覚えていない。」
「ファルナ?」
「まぁ、いいさ」
「・・・ぇ」
上空から、虹の輝きが空気中のマナを喰らいながら、突撃して来る。
地面に接触して消えたその輝きから、2人の青年が現れる。炎によりよく見えない長身が、奴の頭蓋を撃ち抜いた。否、それはただの拳。
が、奴は全く傷を感じさせずその長身に拳を放った。
「づあっ!?」
その鉄拳は、爆発の余波をアキトに感じさせるほど強く、炎まで纏っていた。
「しゃあない。」
現れたのは、白い輝き。
それは、全てを飲み込み・・・
「がぁっ!!」
じっとりと濡れた脂汗が不快感を誘い、夢だったという安堵感がアキトの胸を満たした。
窓の外を覗くと、暖かな光が小さいながらも世界を照らしていた。
もちろん、太陽が無いため、その光の出所はわからない。それでも、朝の早い時間だというのは、アキトにも理解できた。
「って、あれは・・・」
理解できたからこそ、その少女の行動が気になった。
水色の少女、レリィの。
次回レリィの秘密?が明らかに。




