10.【新たな試練】
度重なる野次と、喧騒に紛れて飛ぶ罵声。嫌になる。この、腐った村で、私は生きていく。レリィという少女は生きていく。はずだった。あの少年によって、私の人生はいい意味で、道を踏み外していく事になる。
「俺たちは、さっきの爆発の正体を知っている。」
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アキトは手を挙げ大衆に宣言した。自分は謎を知っていると。
時は、落石の後にさかのぼる。
「それじゃあリデア行こうぜ、カーミフス村に」
「え、ええ」
困惑を孕んだリデアに疑問を感じたが、押し込めてアキトは歩き出す。巨大な岩塊が地面に突き刺さり、そこに穴が開いていたのが先ほどの洞窟だった。歩き出し、程なくして民衆の喧騒が聞こえ始めた。罵声、奇声、様々な声が聞こえる。その状況に入り、アキトが民衆に説明した。ただの落石だと。事態をおさめたアキト達は、その水色の髪の少女に連れられて、ある建物に案内された。
ひときわ大きな建物の扉を開き、中にはいる。
「今回はありがとうございました」
アキト達を出迎えたのは、小太りの男だった。燻んだ暗い青い髪と値踏みするような眼差し。
「どうぞ座ってください。」
「どうも」
アキトが座るとその横にリデアが座った。
「私は、この村の現村長ガルド・カーミフスと申します。」
「竜伐第1聖リデアです。」
「アキトだ。」
簡単に自己紹介してガルドを見た。
「今回はこの役立たずに代わり事態をおさめてくださり、ありがとうございました。」
媚びを売るように作り笑いを貼り付けて、そしてその水色の少女には鋭い視線でガルドは応じた。これだけで、大体の人間関係をアキトは理解した。痛ましげに顔を俯かせるリデアも、それを察した。
「いえ、それで要件は?」
「いえ、お礼といってはなんですが、宿の手配をしておきました。ぜひお使いください。」
「っ。ありがとうございます。」
「レリィ。案内しろ。」
「はい。こちらです。」
ガルドの下についているレリィ。この村には、なかなか手強い事情がありそうだ、と内心アキトはため息をついた。
今回は前回と次回のつなぎなので少し短くなってます。レリィ達の運命とは?