最終話
それから数日後。
晴れ渡った空に、教会の鐘の音が鳴り響く。ジョージとリリィの結婚式は華やかに盛大に執り行われた。純白のウェディングドレスを着たリリィは美しく、誰よりも幸せに輝いてみえた。
式の後、エリーとダリルとサムは幸せそうな二人を出迎えた。既に旅の支度は整っていて、カラスと子猫も一緒だった。
「おめでとうリリィ、すごく綺麗よ」
エリーは、ドレス姿のリリィを抱きしめた。
「ありがとう。…でも、しばらく会えなくなるのは寂しいわ。必ず戻ってきてね」
「ええ、その時は本物の魔法使いになっているから」
エリーはリリィから体を離して微笑んだ。
「そうね、エリーならきっとなれるわ」
「リリィはどこかの姫君のように美しい。僕は今リリィにプロポーズしたい気分だな」
横からダリルが口を挟む。
「ちょっと、何言ってるのよ…」エリーはダリルを一瞥する。
「だが、リリィには素晴らしいナイトがついているから、諦めるしかないな」
「そうだね。リリィがダリルと会う前に僕と会っていて良かったよ」
ジョージは笑って答えた。
「ジョージ、おめでとう」
エリーはジョージに視線を移し、軽く抱擁した。
「ありがとう。気をつけて行っておいで」
「ええ」
エリーは微笑んだ。もうジョージと普通に話が出きる。エリーはジョージとリリィの幸せを心から祝福することが出来た。
「さて、そろそろ出発しようか。日暮れまでには次の国に着いていたいんでね」
ダリルはジョージとエリーのやりとりを見ながら口を開いた。
「一つの恋が終わった時、人は一つ成長出来る」
教会を離れ、国境近くの道を歩きながら、ダリルは呟く。
「こいってどんなもの?」
ダリルの横を歩きながら、サムは質問する。
「説明するのは難しいな。サムもいずれ経験するだろう」
「ダリルはけいけんしたことあるの?」
「あぁ、星の数ほどね」
ダリルはフフッと笑う。
「サムに変なこと教えないでね」
「エリーはこいをけいけんしたことある?」
「……」
無邪気な顔で見上げるサムに、エリーは口ごもる。
「一つの恋が終わった後、新しい恋が始まる、こともあるな」
「……」
ダリルはエリーを見つめると、いきなり頬に軽くキスした。
「!何よ?…」
「魔法より大切なものがあることに気がついた」
戸惑うエリーに、ダリルはウィンクして笑った。
「え?…」
「あ、ネコ、まって」
と、サムが抱いていた子猫が、腕から飛び降りて急に走り出した。追いかけるサムの後から、カラスもダリルの肩を離れてついていく。
「ネコって…あの子猫の名前なの?」
気を取り直して、エリーは聞く。
「あぁ、まだ名前がなかったからね。僕がつけたんだ」
「ネコだなんて、そのまんまじゃない。カラスにネコなんて…もう少し考えてあげてよ」
「なら、…ミシェル・マリー・エリザベート二世にしようか。第二候補だ、それとも」
「ネ、コ、でいいわ…」
ピシャリとダリルの言葉を遮る。これからずっとダリルと一緒に旅を続けることに、少々不安を抱くエリーだった。少し先でサムがネコを捕まえ、エリー達に向かって手を振った。カラスはその上空を円を描いて舞ってる。様々な不安はたくさんあるが、エリーの心は期待で膨らんでいる。エリーは笑顔で手を振ると、サムの元まで駆けていった。
「フッ、鈍感なお嬢さんだな…」
ダリルはゆっくりと二人の方に歩いて行った。
国境の立て札が見えてきた。今、木の立て札には何も書かれていない。
ダリルはそれを見て、人差し指を軽く振る。と、そこには見る見る文字が浮かび上がってきた。
「ここよりノースウィンドウ国
どなたでも侵入を許可する
特に、魔法使いは大歓迎」
ダリルは微笑むと、エリーとサムと共に国境を越えて行った。三人の旅は今始まったばかり… 完
最後まで読んで下さった皆さん、ありがとうございました!どうにか完結することが出来ました。途中、話の展開を変更したり行き詰まったこともありましたが、最後まで書き上げることが出来て良かったです。約三カ月間、ず〜と頭の中にはこの物語があったので、終わってしまうとなんとなく寂しいです。いずれ、旅の話など書けたらいいなと思ってます。まずは、少しお休みして新しい物語を考えたいです。次回作もどうぞ宜しく〜!(^-^)




