3話 運命の出会い─剣豪編─
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電車に揺られること2時間あまり。
インゴットは最近出現したという海辺のグルメダンジョンを目指し、のんびり電車旅を楽しんでいた。
トンネルを抜けると、車窓から海が見えてくる。光が反射してキラキラと輝いていた。
インゴットは手元のスマホに視線を落とし、数日前に届いたダイレクトメッセージの内容を再び確認する。
メッセージの送り主は常連の視聴者である"剣豪"だった。
『いつも配信楽しく見せてもらっています。さっそく相談なのですが、某県某市に出現したグルメダンジョン、[回遊の砂浜]の攻略を保護責任者として手伝っていただけないでしょうか』
ガーディアンとは、未成年者がダンジョンに挑む際に適用される制度の1つである。
・20歳未満の学生がダンジョンに入る際、5人につき教師1名以上が同行する
・15歳以上19歳以下の者がダンジョンに入る際、1人につき保護責任者1名以上が同行する
・20歳以上の成人は1人でも問題はなくダンジョンに挑める
この3点がダンジョンに関する基礎的な法律だ。
つまり、未成年は学校の教師あるいは保護者と一緒じゃなきゃダンジョンに入れないよ、というものである。
保護責任者は両親や親戚が主に担うが、他人であっても双方の合意があれば可能だ。
両親がいない複雑な家庭、という線も無くは無いので、インゴットはその辺りについては深く触れないでいた。
そうでなくても親にはバレないようにダンジョンに行きたい、という若者は一定数いるので、ダンジョン配信をしている人に保護責任者を依頼するのは、そう珍しいことではなかった。
『分かりました。私で良ければ』
インゴットは快い返事を送る。
それに対し、剣豪も喜びの返答をした。
『ありがとうございます!』
その後は集合時間や場所などをすり合わせ、そして約束の日。
降りた駅のホームから海が一望できる。写真を撮っている若者が多い。インゴットも何となくスマホで海を撮影した。
改札を出て、待ち合わせ場所に到着する。
インゴットは顔出し配信をしていて、剣豪は顔も知らない視聴者なので、必然的に剣豪から声をかけられるのを待つ形となった。
集合時間より10分ほど早く着いた。
辺りを見渡すと、グルメダンジョンに挑戦するのだろうか、冒険者風の服装に身を包んだ若者たちが楽しそうに歓談している。
ふと。剣豪とリアルで会うのは初めてなので、どんな人なのかを脳内で軽く予想する。
どうしても剣豪という名前に引っ張られてしまい、ついつい白髪の剣道師範代さもありなんといった老人を想像してしまうが、しかし未成年だから今回の話が持ちかけられていることを思い出し、そのイメージを振り払う。
無難な所で行くと、剣道部に入っているスポーティーな少年だろうか。
インゴットは少年が来るだろうと予想し、少年用の話題を何個か用意しておく。
そんなこんなで10分ほど経ち、集合時間ちょうど。
インゴットは正面から声をかけられた。
「あ、インゴットさんだ。やほやほー」
「……?」
JKだ。そして、ギャルだ。
見た目で人を判断するのはあまり宜しくは無いが、しかし、インゴットに声をかけてきた少女を表すにはこれ以上無い言葉だった。
おそらく剣道部の少年が来るのだろうと思っていたインゴットは面を食らう。
「どもー。剣豪でーす。ぴーすぴーす」
「………………おっ、あ、え……剣豪さん!? すみません、てっきり男性かと」
驚くインゴットに対し、まるでいたずらが成功したかのような、にゅふふとした笑みを浮かべる剣豪。
これにドッキリ大成功というプラカードがあれば撮れ高は上々だろう。
白いワイシャツに、学校の制服らしきスカート。腰には上着をぐるりと巻き付けている。足元は白いスニーカーとルーズソックス。
陽に照らされてきらきらと輝くブロンドヘアを肩より先まで伸ばしており、ややウェーブのかかったロングヘアだ。
メイクやアクセサリーもばっちり決めており、美少女と言っていい程に可愛らしい容姿をしていた。
ただ、顔つきはどことなく眠そうだ。顔文字で表すならば(=ω=)こんな感じ。
インゴットが子供の頃は肌を真っ黒にするガングロギャルなるものが巷で流行ったものだが、剣豪は色白な肌で、言うなれば白ギャルといった雰囲気だ。
「にゃは。まー、名前が名前なんで、男の子に思われるのもしょーがないって言うかー。むしろあーしもその反応期待してたんで、おっけおっけ」
剣豪は少し間延びした話し方をする少女だ。
のほほんとした喋り方で、こちらの警戒心を解いていく。
「はは。一本取られました。では、改めて。本日はよろしくお願いします、剣豪さん」
「ういー。こちらこそ」
剣豪が右手を差し出したので、インゴットも握手に応じた。
──これが、後にチャンネル登録者数100万人を擁する「ウェポンチャンネル!」の古参メンバー、剣豪との出会いである。




